So-net無料ブログ作成
前の10件 | -

イワシクジラ調査捕鯨が国際法(ワシントン条約)違反認定か?:第69回ワシントン条約常設委員会(2017.12)報告 [クジラ]

IMG_2645.JPG
【ワシントン条約第69回常設委員会(2017.12)が開催されたジュネーブ国際会議場すぐ近くにある国連欧州本部】

 2017年12月にジュネーブで開催されたワシントン条約(CITES)常設委員会にオブザーバー出席したのですが、この会議では日本のイワシクジラの北太平洋での調査捕獲がワシントン条約に該当するのではないかとしてほとんどの国がこれを問題視、日本政府側(担当は水産庁)は欧州はもとよりアフリカ諸国からも非常に厳しい批判を浴びました。このままいくと、来年の常設委員会で日本はイワシクジラ調査捕獲に対して条約違反認定を受ける可能性が出てきました。先進国では前代未聞の事態です。
 この経緯についてIKAN発行のニューズレター『IKANet News』第69号(4~14頁 )に小文を書きましたので、以下そのまま転載します。

==================================================================

イワシクジラとワシントン条約(CITES):第69回CITES常設委員会報告
真田康弘(早稲田大学 研究院客員准教授)
 
 2017年11月末から12月初めにかけ、スイス・ジュネーブでワシントン条約の下部機関である常設委員会(Standing Committee)の第69回会合が開催され、筆者も非政府オブザーバーとして参加した。
ここでの議題の目玉の一つとされたのが、日本が北太平洋で実施している調査捕鯨によるイワシクジラの捕獲であり、日本はこの問題で各国から「これは条約違反である」との厳しい批判に晒された。そこで本小論ではなぜ北太平洋のイワシクジラの調査捕獲がワシントン条約で議論の対象とされるのか、なぜ条約違反と言われるのか、今後ワシントン条約ではどのような措置の実施が想定され得るのかについて、簡単に記すものとしたい。

1. ワシントン条約での鯨類の規制

 まずワシントン条約の簡単な紹介から始めよう。この条約の正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」、英語の正式名称の頭文字を取って「CITES(サイテス)」と略称されている。1973年にワシントンで条約が採択されたことから、日本では「ワシントン条約」と通称されている。条約は1975年に発効し、1976年にスイスのベルンで第1回締約国会議が開催された。現在約3年に1度締約国会議が開催されており、直近では2016年9~10月に南ア・ヨハネスブルグで第17回締約国会議が開催されており、次回は2019年5月23日からスリランカ・コロンボで開催が予定されている。
 この条約は条約本文の他に、付属書Ⅰ、付属書Ⅱなどにより構成される。付属書Ⅰに掲載される動植物は、絶滅のおそれがあり商業取引による影響を実際に受けている、あるいは受ける可能性があるもので、「主として商業目的(primarily commercial purposes)」の輸出入及び「海からの持ち込み(introduction from the sea)」を禁止している(条約第三条)。
 ここに言う「海からの持ち込み」とは、いずれの国の管轄の下にない海洋環境において捕獲され又は採取された種をいずれかの国へ輸送することを指す、と条約で規定されている(第一条(e))。但し、何が「いずれの国の管轄の下にない海洋環境」かが不明確であったため、この後の締約国会議で採択された決議により、国連海洋法条約の諸規定に即し「一国の主権もしくは主権的権利の下におかれる領域を越えた海域を意味する」と定義された(1)。国連海洋法条約で「一国の主権もしくは主権的権利の下におかれる領域」とは領海、排他的経済水域、及び大陸棚であるため、魚やクジラなどについては領海及び排他的経済水域を超えた公海での漁獲・捕獲が、サンゴなど海底に付着している生物については、領海、公海、排他的経済水域、及び大陸棚を超えた海底での採取が、「海からの持ち込み」に当たることになる。
 付属書Ⅰ掲載種に関して学術・研究目的等の「主として商業目的」ではない輸出入及びを行う場合には、輸出国の輸出許可と輸入国の輸入許可双方が必要になる。「海からの持ち込み」を行う場合、持ち込まれる国からの許可が必要である。
 付属書Ⅱには、現在必ずしも絶滅のおそれはないが、輸出入を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種、あるいはこれらの種の輸出入を効果的に取り締まるために規制しなければならない種が掲載される。付属書Ⅱに掲載された種については、輸出入に際しては輸出国の許可、「海からの持ち込み」に関しては持ち込まれる国の許可が必要である。
 鯨類については、ホッキョククジラ、セミクジラ、コセミクジラ、ミンククジラ(西グリーンランド個体群を除く)、ミナミミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、シロナガスクジラ、ツノシマクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、コククジラ、マッコウクジラ、トックリクジラなどが付属書Ⅰに掲載され、付属書Ⅰに掲載されていないクジラ目全種が付属書Ⅱに掲載されている。日本は附属書I掲載された鯨類のうち10種(ミンククジラ、ミナミミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ツノシマクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラ、ツチクジラ及びカワゴンドウ、オーストラリアカワゴンドウ)について留保を付しており(2)、したがってCITESにおける商業的輸出入の禁止措置に拘束されない。但しイワシクジラについては、北太平洋の個体群並びに東経0度から東経70度及び赤道から南極大陸に囲まれる範囲の個体群については留保を付しておらず、これについてはCITESにおける規制に従う国際法上の義務がある。

2. イワシクジラの調査捕獲とCITESでの「海からの持ち込み」

 現在日本は南極海でミナミミンククジラを、北太平洋ではミンククジラとニタリクジラを調査名目で捕獲している。捕鯨の国際的管理を規律する国際捕鯨取締条約第8条で科学調査を目的としたものについて締約国は条約上の規制に関わらず捕獲許可を発給することができるとの規定があることから、日本はこれを拠り所として調査捕鯨を実施している。
 CITESでは上記のクジラのいずれについても付属書Ⅰに掲載されており、上述の通り日本は北太平洋のイワシクジラについて留保を付していない。現在日本は捕獲したクジラを他国に輸出していないことから、輸出入に関するCITESの規制に抵触する可能性はないが、北太平洋の公海でイワシクジラを捕獲しているため、CITESの「海からの持ち込み」規定に服する必要がでてくる。
CITES「主として商業目的」ではない「海からの持ち込み」を行う場合、持ち込みがなされる国の「管理当局」から事前に証明書の発給を受けている必要がある。この証明書は、当該持ち込みがなされる国の「科学当局」が、当該持ち込みがその種の存続を脅かすこととならないと助言し、かつ、当該持ち込みがなされる国の「管理当局」が、捕獲されたものが「主として商業目的」のために使用されるものでないと認めた場合にのみ発給される(条約第三条五項)。日本はクジラの海からの持ち込み関して水産庁を「管理当局」及び「科学当局」に指定しているため、調査捕鯨に関して国際捕鯨取締条約の下の許可を発給し捕鯨を推進している水産庁自身がCITESの証明書も発給することができることになる。
 では締約国は自らの「これは主として商業目的ではない」との判断のみに基づいて「海からの持ち込み」を許可する証明書を発給できるかというと、必ずしもそうではない。というのも、CITESは1985年に開催された締約国会議で採択(2010年に改正)された決議5.10(3)により、条約第三条に規定する「主として商業目的」の語の解釈に縛りをかけているからである。
同決議の「一般原則」第1項から3項までは以下のように規定している。

1. 付属書Ⅰ種の取引はとりわけ厳格な規制の下に置き、例外的状況下においてのみ許可されるものでなければならない。
2. 一般的に「商業的」活動とは、その目的が(現金であるか否かにかかわらず)経済的利益を得るためのものであり、再販売、交換、役務の提供、もしくはその他の形態の他経済的利用もしくは経済的利益のために行われるものを言う。
3. 「商業目的」の語は、完全に「非商業目的」とは言えないいかなる取引も「商業的」と見做されるよう、輸入国により可能な限り広範に定義されるべきである。この原則を「主として商業目的」の語に当てはめた場合、非商業的側面が明らかに支配的である(clearly predominate)とは言えない全ての利用は主として商業的性質を有すると見做されるべきであり、付属書I掲載種の輸入は許可されるべきではない。付属書I掲載種の使用目的が明らかに非商業的であるとの挙証責任はかような種の輸入を求める個人もしくは団体に存する

 調査捕鯨で捕獲されたクジラは鯨肉として国内で販売されているが、日本政府はこれを国際捕鯨取締条約第八条二項に依拠して正当化している。すなわち、同条同項では「特別許可書に基いて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し」なければならないと規定されているところ、日本はこれを「捕獲したクジラは可能な限り鯨肉として利用しなければならない」と解釈し、この解釈に基づいて「捕鯨条約に規定されているので、調査捕鯨で捕獲したクジラは鯨肉として利用しなければならないのだ」と主張している。
 しかし、上記の主張が正当なものであると仮定したとしても、そのことがCITES上の義務を免れる論拠にはなり得ない。特定の条約の条項を遵守したことが、他の条約の他の条項における条約上の義務を免れる言い訳にはなり得ないからである。日本の調査捕獲されたイワシクジラは鯨肉として流通している事実を鑑みた場合、これは「完全に「非商業目的」」「非商業的側面が明らかに支配的」と言えるか甚だ疑問であるということになる。事実、この問題は初代CITES事務局長(任1978~1981)を務めたピーター・サンドが2008年に著した論文によって既に指摘されていた(4)。

3. CITES事務局の動き

 CITESでは、付属書Ⅰまたは付属書Ⅱに掲げる種が取引によって望ましくない影響を受けていると認められる場合、またはこの条約が効果的に実施されていないと認められる場合、条約事務局は当該情報を関係締約国の管理当局に通告しなければならないと定めている(条約第十三条一項)。事務局は2016年の締約国会議直前に開催された常設委員会の場で、日本によるイワシクジラの「海からの持ち込み」に対する証明書発給に関して、上記条項に関する事前段階的な協議として日本と文書を通じた情報交換を行い、結果を次回の常設委員会に提示すると報告し(5)、これと前後して日本と二回にわたり情報提供の要請を行った。これに基づき2017年に開催された常設委員会で事務局から報告が行われ、常設委員会で審議されることとなった。
 事務局は2016年9月12日に1度目の情報提供要請を行い、これに対して日本側は9月22日付のEメールで回答を行っている。このメールで日本側は①2016年に90頭のイワシクジラを捕獲したこと、②管理当局として水産庁が証明書発給を行ったこと、③イワシクジラの捕獲は科学調査目的であるので「主として商業的目的」には該当しないこと、④国際捕鯨取締条約では第八条二項で「捕獲したクジラは可能な限り鯨肉として利用しなければならない」から鯨肉を利用しているのであり、同条約同条一項での科学調査目的の捕獲を認める条項に基づき実施しているのだから、商業目的には当たらないこと、を主張した(6)。
 しかし先述のように、国際捕鯨取締条約の規定に仮に基づいていたとしても、それがCITESでの規定に合致することを保証するものではあり得ず、これでは事務局側が欲している情報を何も伝えていないに等しい。そこで事務局は2017年9月22日付で、今度は正式な事務局発出文書の形式で、同年の日本の134頭のイワシクジラ捕獲に関し、捕獲されたこれらのクジラの肉がどのように利用されるのか、その利用によって生じる収益金は何に充当されるのか等について、より詳細な情報を求めたいとの要請を行った(7)。

4. 常設委員会での議論(8)

 常設委員会は2017年11月27日(月)から12月1日(金)の5日間、ジュネーブ国際会議場で開催された。場所はジュネーブ国際空港から車で十数分のところにあり、周辺には徒歩数分のところに「パレ・デ・ナシオン」と呼ばれる国連ジュネーブ事務所や国連難民高等弁務官事務所、国際電気通信連合など国際機関の事務局が立ち並んでいる。国際会議場は機能的なつくりである一方、高級掛け時計が随所にあるところがスイスらしいと言えるだろうか。委員会が開催された一番大きな会議場は日本の国会のようにひな壇状になっており、一番前方に常設委メンバーが並び、その後に常設委メンバーでない各国政府、国際機関、NGOの順で席がある。
 イワシクジラの問題は、会議1日目の午後早速審議された。まず事務局からの本件に関して事務局が予め用意しウェブサイトにアップしていた文書をもとに経緯の説明等が行われる。事務局代表は先述した日本とのやり取りを紹介した後、その文書作成時には届いていなかった日本からの2度目の返答について説明した。ここで事務局は「日本からは10月20日に回答があった」としながらも、その内容は「簡素(succinct)」で「最小限な(minimally)」なものでしかなかったとし、特にどのようにして日本の当局は主として商業的目的でないと判断したのか等についてさらなる情報提供の要請を行った、と報告した。加えて、①日本に対して事務局が調査団を派遣して本件を調査すること、②その結果と勧告を次回の常設委員会で報告する、との常設委員会で決定したい、と事務局作成の決定案を紹介した。
 この後まず本件に関して最初に発言したニジェールは「日本は情報提供に関する期限を守らなかった。日本と事務局との情報交換は2016年に遡るにもかかわらず、日本からクジラの使用と収入等々に関する情報が提供提示されていない」と批判するとともに、CITESの履行手続に基づく正式な警告(official warning)を日本に対して与えるべきだ、と発言した。続いて発言したニュージーランドは「事務局が本件について調査する必要がある。我々が知りたいのは主として商業的目的か否かだ」とし、調査団派遣提案に関して支持を表明した。グアテマラも、ニジェールとニュージーランドの意見を支持する発言を行った。
 これら発言に対して次に発言した日本の水産庁の担当者は「ニジェールは日本が情報提供に関する期限を守らなかったと言っているが、それは間違いだ。日本は期限通りに情報を提供しているではないか。日本は事務局からの要望に真摯に答え、可能な限り早く情報の提供を行ってきた」と強い調子で反駁するとともに、現在実施されている北太平洋での調査捕鯨について時間を割いて説明した後、これが国際捕鯨取締条約八条の規定に基づいていること、同条により鯨肉はむしろ可能な限り利用しなければならないこと、同条約に依拠した調査捕鯨であるので「主として商業的目的」にはあたらないのは明らか(obvious)だ、と約8分にわたる発言の中で主張した。しかし縷々指摘したとおり、捕鯨条約の規定を援用したところで、それはCITESの規定に合致することを立証するものとはならない。
 日本側の感情がこもってはいるが内容の乏しい発言は、この後に続く各国代表からの更に手厳しい批判を誘発することとなった。セネガルは、「日本自身が鯨肉販売を促進させている。イワシクジラは付属書Iに掲載されており、最大限の保護が必要であるにもかかわらず、日本政府自身が鯨肉販売を即してしており、これは条約の趣旨に反するものだ」と主張するとともに、「これはCITES違反であり、直ちに停止されるべきだ。日本に対して直ちにイワシクジラの海からの持ち込みを止めるよう要請する」との一歩踏み込んだ発言を行った。オーストラリアとメキシコからも調査団派遣に関する事務局案への支持が表明された。アルゼンチンは「CITESでは義務を守らない国に対して常設委が取る措置が決議により定められており、そのなかには取引停止勧告も含まれる」と前置きした上で、「イワシクジラは2002年からずっと捕獲されており、これは取引停止勧告に値する」と批判した。ケニアも「今回の常設委で何らかのアクションを取るべきだ。日本のイワシクジラの海からの持ち込みは、条約第三条違反だ」と主張した。米国も「オーストラリアやその他の国の意見に賛成だ」とし、「得られた情報から鑑みて、日本のイワシクジラ捕獲は条約第三条違反である」と明言した。EUは「日本からの情報の提供が限定的だ」と述べた後、さらに一歩踏み込み、「常設委は事務局に対して日本が本常設委閉会後60日以内に必要な情報を求めるべきであり、このデッドラインまでに日本が情報を提供しない場合、あるいは情報が不十分である場合、郵便投票を通じてイワシクジラに対する取引停止勧告を実施すべきだ」と発言した。政府代表としては唯一日本に対して親和的な発言をしたアンティグア・バーブーダも「おそらくここで必要なのは、CITESの義務と国際捕鯨取締条約の義務との調和(reconciliation)である。CITESの義務を果たそうとすれば、日本は国際捕鯨取締条約の義務を破ることになってしまう」と述べ、日本のイワシクジラの捕獲がCITES上合法であるとの立場を取らなかった。
 各国からの辛辣な批判に対し日本は再び発言を求め、「日本は常にCITESの規定に従って行動してきた。情報が限定的となぜEUが言うのか理解し難く、この批判は完全に根拠がない(baseless)」と激しい口調で反発するとともに、事務局からの調査団派遣提案についても、「条約第十三条には調査団派遣に関する規定は存在せず、当該調査団派遣の必要はない」と反対姿勢を明確にした。
 今回の常設委は議題が極めて多数にのぼるため、会議冒頭から議長(9)が繰り返し「発言はできるだけ内容を絞って簡潔に」と各国に念を押していたにもかかわらず、日本からかなり長くかつ激しい口調の発言が繰り返されたことから、ここで議長が「発言は常設委での決定案に関するものに限定して欲しい」と各国に対し発言に対する自制を求めるとともに、「議場の多数意見では調査団が必要だと言っている」と前置きし、「『常設委が日本に対して調査団を招請するよう要請する』との決定を行うことでまとめたい」と発言した。
これ対してニジェールは再び発言を求め「ただ単に調査するだけでは十分ではない。日本に対して条約の文言を遵守するよう警告をする必要がある」と繰り返すとともに、EUやケニアのより踏み込んだ提案に同調する姿勢が示された。そこで議長が「種々の意見があるのでその中間をとり、やはり日本が調査団を招請するし、また日本からの情報を得た後に次回の常設委で判断するというかたちにしたい」との提案を再度行い、カナダとオセアニア地域代表から議長提案に対する支持が表明された。そこで議長が「常設委メンバーから発言要請がないので、上記で合意されたと判断する」とまとめ、日本がなおも発言を求めて食い下がろうとしたところ、「日本が発言を求めて手を挙げているが、時間がないのでこれで結論とする」と押し切ろうとした。
 これに対して日本はさらに反発、「議事進行異議あり(Point of order)」と大声を上げて発言を求めた。会議でpoint of orderが発議された場合、議長は発議者に発言を許さなければならない。したがって議長が直ちに日本を指名すると、日本は「日本が調査団を招請するとのことだが、これに関して我が国から財政的支出をする必要があるのか。もしそうであるなら我が国の財政当局と話をする必要がある」と抵抗し、「調査団派遣の法的根拠を提示すべきだ」と議長に要求した。これに対し議長は「調査団派遣の費用は事務局側が持つ」と述べるとともに「調査団派遣といった手続きは条約第十三条に基づく標準的な手続き(standard practice)となっている」と日本の主張を斥け、結局投票に付されることなく調査団を派遣し次回の常設委で事務局が調査結果の報告と本件に関する勧告を行うとの議長案が採択された(10)。但しこの後EUから「これでは緊急性が失われてしまう。日本から情報を受領後、郵便投票により決定を下すべきだ」との懸念が表明されている。

5. 今後予想される展開

 以上のように、日本のイワシクジラの「海からの持ち込み」については各国から厳しい批判が寄せられたことから鑑みて、次回の常設委では日本に対して何らかの措置が行われる可能性が少なくない。では、どのような展開が想定され得るのか、以下簡単に示したい。
 条約の遵守手続については決議14.3に詳細が規定されており、常設委員会は、a)条約の下での義務への全体的遵守のモニタリングと評価、b)条約の下での義務への遵守に関する締約国への助言と支援、c)情報の検証、d)遵守措置の実施、を処理するとされている(11)。
もし遵守問題が解決しなかった場合は、非遵守締約国に対し、①支援の提供、②特別報告書作成の要求、③書面による注意喚起(caution)の発出による、対応要請あるいは支援の申出、④特定の実施能力強化(capacity-building)活動の勧告、⑤当該締約国の招請による、国内支援、技術評価、検証ミッションの提供、⑥非遵守状態であるとの警告(warning)の発出、等を行うことができる(12)。今回の調査団派遣は上記⑤に該当すると言え、ニジェールの発言は上記⑥に該当する。さらに締約国が遵守達成の意志を示さない場合、最も厳しい措置として、CITES掲載種ののうちの特定種あるいは全ての種に対する商取引または全取引(商取引であるか否かを問わない)の停止(suspension)を勧告することができる(13)。従って日本は最も厳しい場合、この取引停止勧告を受ける可能性がある。
 たとえ取引停止勧告まではゆかなくとも、日本が否定的評価・反応を常設委で受ける可能性は今回の各国の発言からも明らかである。常設委は基本的にコンセンサスで行われるが、議長もしくは2地域以上の常設委メンバー(14)からの要請があれば単純過半数による表決により決定を行うことができる(15)。実際今回の常設委でもセンザンコウの取引について表決が行われ、中国の反対を押し切って勧告案が可決されている。
最も厳しい措置である取引停止勧告はCITESで履行確保の手段として頻繁に用いられており、2017年8月1日現在、30カ国がこの勧告を受けている。うちジブチ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、モーリタニア、ソマリアの6カ国が全てのCITES掲載種の商取引の停止勧告、アフガニスタンとグレナダの2カ国が、全てのCITES掲載種の取引停止勧告を受けた状態にある(16)。条約第十四条では、各締約国は付属書掲載種をCITESでの規制よりも厳重に規制したり取引を停止したりすることができると規定しており、取引停止勧告はこれに基づいている。
この措置はあくまで勧告にとどまり、締約国は取引停止を実施する法的義務はない。しかしCITES締約国が取引停止勧告をもとに実際に取引を停止することを通じ、またこうした措置の発動あるいは継続を回避したい非遵守締約国の取り組みを通じ、この勧告は履行確保のための有効な手段として機能していると指摘されている(17)。例えば1985年から2013年にかけて43カ国に対して全てのCITES掲載種商取引停止勧告がなされたが、特定の国に対して行われた取引停止勧告の事例のうちの8割以上については、非遵守国が必要な措置を行ったとして同取引停止勧告が1年以内に解除されている(18)。
イワシクジラの取引停止勧告を受けた場合、日本は捕獲したクジラを鯨肉にして海外に販売してはいないため、実害は存在しないことになる。しかし所謂先進国で現在取引停止勧告を受けている国は存在しておらず、ただでさえ留保数22と締約国中で2番目に多い日本でのCITESにおけるにおける評価を下げる結果となろう(19)。
日本が何ら不遵守に対する是正措置を取ろうとしない場合は、最悪の場合掲載種全ての商取引あるいは全ての取引に対する取引停止勧告もCITESでは可能であり、仮に全ての取引に対する停止が勧告された場合、これには付属書Ⅱ掲載種の商業的輸出入はもとより、付属書Ⅰ掲載種の動物園や水族館に対する輸出入や学術研究目的の輸出入など、主として商業的でない付属書Ⅰ掲載種の日本への輸出入をCITES締約国が禁止することもあり得ることになる。

6. おわりに

 以上のように、常設委員会は日本に対して事務局からの調査団派遣を招請するとともに、2018年10月ロシアのソチで開催される次回会合で事務局が報告と勧告を行う旨を決定した。これに対して齋藤健農水相は11月29日の閣議後記者会見で「商業目的でないことを丁寧に説明したい」として応じる意向を示しているが(20)、これまでも日本側からはCITES違反ではないとの説明ができていないことから鑑みて、調査団を納得させることは困難ではないかとも考えられる。そうであった場合、次回の常設委員会での日本に対する風当たりはさらに強くなることが予想される。
 そもそも日本がイワシクジラに対して留保をしなかったことは、捕鯨を推進する側からしても「失策」と言えよう。さらに筆者が会議を傍聴して感じたのは、感情的なトーンで自国の立場を主張し他国への反論を試みるという今回の日本側の態度は、捕鯨を維持・推進するとの立場からの外交交渉としてもまずいのではないかという点である。外交交渉とは、自国の主張や立場を通すのが目的なのであって、主張や立場を声を張り上げて一方的に述べ立てることが目的ではない。勿論時宜にかなっていれば時として強い態度に出て相手の譲歩を迫るとの外交戦略もあり得るのだが、CITESのような多国間交渉で、しかも多数の支持を得る何の勝算もなく、説得力を有する説明も行わなければ、いたずらに他国やNGOからの批判や反発を増やすことにしかならない。
付言すると、イワシクジラの問題で日本が否定的な態度を取り続けた場合、日本に対して他の問題点が常設委で提起される可能性すら存在している。先述の通り、日本はクジラに関してCITESでの指摘が義務付けられている管理当局と科学当局がともに水産庁になっている。ところがCITESは、全締約国は管理当局から独立した科学当局を指定すべきであるとの決議を採択している 。日本のイワシクジラの「海からの持ち込み」がCITESに違反すると問題提起を行ったピーター・サンドは、クジラに関して日本の科学当局と管理当局が同じである点もCITESに違反していると指摘している 。この問題は2007年に英国からCITES事務局に問題提起されたことがあるものの、常設委員会等CITESの場で公式に審議されたことはない 。しかしながら、ソチでの次回常設委員会でこの問題が蒸し返されないとは言い切れない。なお、ルワンダとアフガニスタンが科学当局を指定しなかったことを理由として1999年から2002年の間に取引停止勧告を受けたことがある 。
現在の北太平洋のイワシクジラの捕獲が「主として商業目的」に該当せず、条約違反ではないと主張することは非常に困難である。であるならば、最も簡単な解決策は、少なくともイワシクジラの捕獲を中止することであろう。現在の北太平洋でのイワシクジラ調査捕獲の主要目的として日本側が挙げているのは、このクジラに対する商業捕鯨が再開された場合の捕獲頭数の計算をより精緻化することであり 、同時に捕獲されているミンククジラとはこの点で直接の関係を有していない。したがってイワシクジラの捕獲を中止したとしても、日本側が主張する調査捕鯨のミンククジラに関する調査目的を大きく阻害することにはならない 。以上から鑑み、イワシクジラの北太平洋での捕獲は、少なくとも公海部分については中止するほかないと考えられよう。


(1) CITES, Conf. 14.6 (Rev. CoP16), “Introduction from the sea,” para. 1.
(2) 経済産業省、「ワシントン条約について(条約全文、付属書、締約国など)」、http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_about.html(2017年12月26日アクセス)。
(3) Resolution Conf. 5.10 (Rev. CoP15)
(4) Peter Sand, “Japan’s ‘Research Whaling’ in the Antarctic Southern Ocean and the North Pacific Ocean in the Face of the Endangered Species Convention (CITES),” Review of European, Comparative & International Environmental Law, Vol 17, No. 1 (2008), pp. 56 – 71.
(5) Sixty-seventh meeting of the Standing Committee Johannesburg (South Africa), 23 September 2016, Summary Record, SC67 SR, p.7.
(6) Sixty-ninth meeting of the Standing Committee, Geneva (Switzerland), 24 November - 1 December 2017, “Compliance Report,” SC69 Doc. 29.1 (Rev. 2), pp. 3 – 4.
(7) Ibid., p. 4.
(8) 本項での各国の発言は、筆者のボイスレコーダーによる録音記録に基づく。この他、会議での各国の発言を簡単に記録しているものとしては以下を参照。Earth Negotiations Bulletin (ENB), “Summary of the Sixty-Ninth Meeting of the CITES Standing Committee,” December 4, 2017, http://enb.iisd.org/vol21/enb2199e.html (accessed on December 26, 2017).
(9) 今回の常設委ではカナダ環境・気候変動省でCITES・国際生物多様性担当マネジャーを務めるCarolina Caceresが議長を務めた。
(10) CITES, SC69 Sum. 2 (Rev. 1) (27/11/17) – pp. 1 – 2.
(11) CITES Resolution Conf. 14.3, Annex, para. 12.
(12) Ibid., Annex, para. 29.
(13) Ibid., Annex, para. 30.
(14) 常設委員会は各地域代表、条約寄託国(スイス)、前回及び次回締約国会議ホスト国により構成される。地域代表は現在アフリカ5カ国、アジア3カ国、中南米カリブ諸国3カ国、欧州4カ国、北米1カ国、オセアニア1カ国の構成となっている。常設委員会で投票権を有するのは原則として地域代表のみであり、寄託国のスイスは可否同数の場合のみ投票権を有する。
(15) Rules of Procedure of the Standing Committee, Rule 24 and Rule 25.
(16) CITES, “Countries currently subject to a recommendation to suspend trade,” https://www.cites.org/eng/resources/ref/suspend.php (accessed on December 26, 2017).
(17) 例えば、以下を参照。Rosalind Reeve, Policing International Trade in Endangered Species: The CITES Treaty and Compliance (London: Earthcan, 2002).
(18) Peter H. Sand, “Enforcing CITES: The Rise and Fall of Trade Sanctions,” Review of European Community & International Environmental Law, Vol. 22, No. 3 (2013), pp. 255 – 256.
(19) 留保数が32と最も多いのがパラオであり、鯨類に対する留保が多いこともありアイスランドが22種と留保数で日本に並んでいる。
(20) みなと新聞2017年12月1日付。
CITES, Conf. 10.3, “Designation and role of the Scientific Authorities,” para. 2.
Sand, “Enforcing CITES,” pp. 261 – 262; Reeve, Policing International Trade in Endangered Species, p. 153.
Sand, “Enforcing CITES,” pp. 262 – 263.
Notification to the Parties No. 1999/24, “Parties that have not designated Scientific Authorities,” March 12, 1999; Sand, “Enforcing CITES,” p. 262.
Government of Japan, “Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific
(NEWREP-NP)”; 水産庁、外務省、「新北西太平洋鯨類科学調査計画の概要について」、2017年6月、http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-7.pdf(2017年12月26日アクセス)
なお、仮にIWCで北太平洋での商業捕鯨が容認されたとしても、日本がCITESの締約国である限り、公海でのイワシクジラの商業捕鯨は、「主として商業目的」に他ならないため、CITESでイワシクジラを付属書I掲載から外すさない限り、実施することができない。但し、現在大型鯨類が付属書Iに掲載されている大きな理由は、IWCが商業捕鯨モラトリアムを実施していることにあるため、商業捕鯨モラトリアムがイワシクジラについて解除されたならば、そのことはCITESで付属書Ⅰ掲載から外すよう求める論拠となり得よう。


https://www.dropbox.com/s/u9qfr034sy2tnq3/IKANet%20NEWS%20No.69%20%282017.12.29%29.pdf?dl=0  
【真田康弘「イワシクジラとワシントン条約(CITES):第69回CITES常設委員会報告」『IKANet News』第69号(2017.12)、4~14頁 】


nice!(0)  コメント(0) 

天下りましておめでとうございます②水産土木編 [水産行政]

 12月22日、水産関係の2018年度予算が閣議決定されました。総額は1772億円、前年度比99.9%です。
 
 資源管理にこれまでお金がかけられておらず、結果として科学的な資源管理ができかった教訓に鑑みて、水産庁は前年43億円だった資源管理・調査のための予算を60億円にすべきと概算要求しましたが、ばっさり削られて微増の46億円にとどまりました。水産予算全体のなかで3%を占めるに過ぎません。これについては資源管理を担当する水産庁及びその他の機関の主要関係者からも「これで良いのか」との大きな不満の声が聞こえてきます。関係者にとり、まったくめでたくない事態です。

FY2018 fisheries.jpg

 他方、漁港をつくったり整備したりする公共事業関係は昨年と同額の718億1700万円でした。これは、水産予算の40%にあたります。これからも依然と同様、しっかりと漁港土木に予算が充当される予定です。関係者にとり、誠にめでたいことだと言えるでしょう。

 その水産土木関係の新年特集号があった業界紙の下に、業界団体新年挨拶がありました。そこで水産庁OBの在籍する団体及び役員に赤でハイライトしてみました。会長・理事長・社長の全員が水産庁の漁港漁場整備部長経験者であることがわかります。
(公務員については国家公務員法第106条の25に基づき、民間への再就職先が公表が義務付けられているところから、下記の水産庁OBの再就職先団体は内閣人事局ウェブサイトにある情報に主として依拠しています。*1)

new year 2018.jpg


全国漁港漁場協会
橋本牧会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2007.4.1~2013.3.31)

全日本漁港建設協会
長野章会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2001.1.6~2003.3.31)
森田正博理事・事務局長 ← 水産庁漁政部漁政課付(北海道漁業調整事務所長)

漁港漁場漁村総合研究所
影山智将理事長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2005.7.19~2007.3.31)
長元雅寛常務理事 ← 水産庁船舶管理室長
髙吉晋吾技術審議役 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2014.7.22~2017.1.11)
高原裕一第1 調査研究部部長 ← 水産庁港漁場整備部計画課課長補佐(計画班担当)

水産土木建設技術センター
宇賀神義宣理事長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2013.4.1~2014.7.22)
丹羽行専務理事 ← 水産庁資源管理部国際課国際水産情報分析官

全国漁港漁場新技術研究会
橋本牧会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2007.4.1~2013.3.31)

全国漁港・漁村振興漁業協同組合連合会
橋本牧代表理事会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2007.4.1~2013.3.31)

株式会社センク21
田中潤兒代表取締役社長 ← 水産庁漁港漁場整備部長(任:2003.4.1~2005.7.19)

 田中潤兒・株式会社センク21代表取締役社長(元水産庁漁港漁場整備部長)は、1971(昭和46)年に農林省に入省、2003(平成15)年に水産庁漁港漁場整備部長に就任し、2005(平成17)年に農林水産省を退職、退職後は2006(平成18)年から2015年6月まで全国漁港漁場協会の会長を務められていました*2*3。後任の全国漁港漁場協会会長は橋本牧・元水産庁漁港漁場整備部長です。

 漁港漁場整備部長在任者を時系列的に並べると以下のようになります。

・長野章(任:2001.1.6~2003.3.31) → 全日本漁港建設協会会長
・田中潤兒(任:2003.4.1~2005.7.18) → 株式会社センク21代表取締役社長
・影山智将(任:2005.7.19~2007.3.31) → 漁港漁場漁村総合研究所理事長
・橋本牧(任:2007.4.1~2013.3.31) → 全国漁港漁場協会会長・全国漁港漁場新技術研究会会長・全国漁港・漁村振興漁業協同組合連合会代表理事会長
・宇賀神義宣(任:2013.4.1~2014.7.22) → 水産土木建設技術センター理事長
・髙吉晋吾(任:2014.7.22~2017.1.11) → 漁港漁場漁村総合研究所技術審議役

 在任期間が6年と最も長い現全国漁港漁場協会会長は、他の2団体の会長も兼任していることがわかります。


 漁港漁場漁村総合研究所というところには水産庁OBが4人も再就職していて、しかもうち2人は漁港漁場整備部長なので、少し調べてみると、水産庁の水産土木の調査関係のある程度がここを通じて流れているようですね。例えば水産基盤整備事業でH28(2016)年度予算に31億円ついているプロジェクトを見てみると、下図左側の「直轄漁場整備事業」で9600万円を、右側の「水産基盤整備調査」で1億8300万円を、漁港漁場漁村総合研究所が1億8300万円で調査を請け負っています。つまり、この事業だけで水産庁OBが4人在籍する漁港漁場漁村総合研究所は1年間で2億7900万円を国から受け取っていることになります。勿論これは全て我々の税金から支出されます。
 なお1億8300万円で請け負った調査については、水土舎というところに3200万円で、その他1社に2000万円で再委託しています。
 ちなみに水土舎の現社長は漁港漁場漁村技術研究所OBのようです(現社長が以前同研究所で専門技術員として在籍した当時の論文があります)。

行政事業レビュー.jpg
【図の出典】
「平成28年度の事業に係る行政事業レビューシート(最終公表)22. 漁村の健全な発展(0294~0311)、24頁」
[http://www.maff.go.jp/j/budget/review/h29/review/bunya/attach/pdf/28_22gyoson_saisyu-2.pdf]

*1 内閣人事局「退職管理・再就職等規制:国家公務員法等に基づく再就職状況の公表」[http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_j.html]
*2 CANPAN FIELDS「団体情報:社団法人全国漁港漁場協会 」[http://fields.canpan.info/organization/detail/1886697448]
*3 水産経済新聞2015年6月8日。[http://www.suikei.co.jp/%E6%96%B0%E4%BC%9A%E9%95%B7%E3%81%AB%E6%A9%8B%E6%9C%AC%E7%89%A7%E6%B0%8F%E3%80%81%E5%85%A8%E5%9B%BD%E6%BC%81%E6%B8%AF%E6%BC%81%E5%A0%B4%E5%8D%94%E4%BC%9A%E3%83%BB%E9%80%9A%E5%B8%B8%E7%B7%8F%E4%BC%9A/]


nice!(1)  コメント(0) 

天下りましておめでとうございます(水産庁の天下り) [水産行政]

 業界紙の2018年元旦号に、水産業界団体からの新年挨拶の広告記事がありました。
 各業界団体の役員の名前が並んでいるので、水産庁等のOBがいる団体と役員に赤の丸印でハイライトしてみると、こんなかんじになりました。なかなかな数ですね。

業界団体新年挨拶広告(2018.1.1)ハイライト.jpg


 上の画像は解像度を落としていますので、以下、一覧にしてみました。ご参考までに。

大日本水産会
白須敏朗会長 ← 元農林水産事務次官・水産庁長官
山下潤副会長 ← 水産庁次長
重義行専務理事 ← 水産庁増殖推進部長

日本漁船保険組合
本田直久常務理事 ← 水産庁漁港漁場整備部防災漁村課長

漁船信用基金中央会
篠崎益司会長 ← 水産庁指導室長

全国漁業信用基金協会
藤井富美雄専務理事 ← 元漁政部水産経営課経営改善班課長補佐

海外漁業協力財団
竹中美晴理事長 ← 元農林水産審議官
粂知文専務理事 ← 水産庁資源管理部審議官

全国漁業共済組合連合会
内海和彦常務理事 ← 水産庁漁政部参事官

日本水産資源保護協会
成子隆英副会長 ← 水産庁増殖推進部付

全国水産技術者協会
川口恭一会長 ← 水産庁次長
原武史理事長 ← 水産庁中央水産研究所 所長
井上潔専務理事 ← 元水産総合研究センター 理事
關哲夫理事 ← 元水産総合研究センター 東北区水産研究所 所長
中添純一理事 ← 元水産総合研究センター 中央水産研究所 所長
福永辰廣理事 ← 元水産総合研究センター 業務推進部 次長
山田久 ← 元水産総合研究センター 中央水産研究所 所長

全国底曳網漁業連合会
富岡啓二会長理事 ← 元資源管理部漁業調整課付(農林水産省大臣官房政策課調査官)

全国まき網漁業協会
武井篤専務理事 ← 水産庁資源管理部参事官

日本かつお・まぐろ漁業協同組合
山下潤代表理事組合長 ← 水産庁次長

海外まき網漁業協会
中前明会長 ← 水産庁次長

全国いか釣り漁業協会
川口恭一会長 ← 水産庁次長
堀尾保之専務理事 ← 水産庁漁政部漁業保険管理官

全国さんま棒受漁業協同組合
大石浩平専務理事 ← 水産庁漁政部付(水産庁漁政部漁業保険管理官)

全国定置漁業協会
森義信専務理事 ← 水産庁境港漁業調整事務所長

責任あるまぐろ漁業推進機構
長畠大四郎専務理事 ← 水産庁漁政部漁業保険管理官

海洋水産システム協会
津端英樹会長 ← 水産庁増殖推進部付
平石一夫事務局長 ← 水産庁増殖推進部研究指導課海洋技術室長

マリノフォーラム21
井貫晴介代表理事会長 ← 水産庁増殖推進部長

全国漁港漁場協会
橋本牧会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長

漁港漁場漁村総合研究所
影山智将理事長 ← 水産庁漁港漁場整備部長
長元雅寛常務理事 ← 水産庁船舶管理室長
髙吉晋吾技術審議役 ← 水産庁漁港漁場整備部長

水産土木建設技術センター
宇賀神義宣理事長 ← 水産庁漁港漁場整備部長
丹羽行専務理事 ← 水産庁資源管理部国際課国際水産情報分析官

全国漁港・漁村振興漁業協同組合連合会
橋本牧代表理事会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長

全国漁港漁場新技術研究会
橋本牧会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長

全日本漁港建設協会
長野章会長 ← 水産庁漁港漁場整備部長
森田正博理事・事務局長 ← 水産庁漁政部漁政課付(北海道漁業調整事務所長)

海と渚環境美化・油濁対策機構
松本憲二専務理事 ← 水産庁資源管理部国際課国際水産情報分析官

海洋生物環境研究所
香川謙二理事長 ← 水産庁次長

漁業情報サービスセンター
川口恭一会長 ← 水産庁次長
淀江哲也専務理事 ← 水産庁漁政部漁業保険管理官


 大型まき網などの大規模な漁業のほか、水産予算1700億円のうちの700億円が今年も充当されている予定の漁港土木系には、相当程度水産庁OBが理事として在籍していることがわかります。


nice!(1)  コメント(0) 

ニホンウナギはワシントン条約の付属書掲載基準を満たすのか? [ウナギ]

 私の研究対象の一つはワシントン条約での多国間環境交渉なのですが、その関係から去年も下部委員会の動物委員会と常設委員会にオブザーバー出席しました。今年も7月に動物委員会が、10月に常設委員会が開催されるので、それに出席する予定です。

IMG_9956.JPG
[ワシントン条約第17回締約国会議(2016年・ヨハネスブルグ)の模様。スクリーンに映っているのは条約事務局長]

 ここで日本に関係する種の一つとして挙げられるのがウナギです。特に2019年5月から開催予定の締約国会議で、ニホンウナギについて付属書掲載提案が出るのか等何らかの動きがあるのかどうかが注目されます。

 それでは、ワシントン条約ではどのようなとき、付属書に掲載されることがあるのでしょうか。

【付属書Ⅰ掲載基準】

 ワシントン条約では、付属書Ⅰには
・絶滅のおそれがあり輸出入等による影響を実際に受けているもの、あるいは受ける可能性があるもの
が掲載され、商目的の輸出入が禁止される、と規定されています(第二条一項)。

 但し、この条約の規定は概括的に過ぎるので、締約国会議で採択された決議9.24(Conf. 9.24)で詳細が定められています。
[CITES Conf. 9.24 (Rev.Cop17). https://www.cites.org/sites/default/files/document/E-Res-09-24-R17.pdf;日本語訳は以下TRAFFICによるものを参照。http://www.trafficj.org/aboutcites/resolutions/Conf.9.25.pdf]

 付属書Ⅰには、
(1) 個体数が少ない(生産性が低い種の場合5,000未満)
(2) 分布域が狭い
(3) 個体数が著しく減少(decline)している
の3つのうちの少なくとも1つが該当すれば、掲載の基準を満たすとされています(Conf. 9.24, Annex 1)。

 ここでの海産種の(3)の「減少(decline)」の判断基準としては、個体数の基準レベル(baseline)比で5~20%の減少、あるいは過去10年間または3世代のいずれか長い方における50%以上の減少が目安とされています。なお、基準レベルの推定に用いられるデータは出来る限り過去に遡るべきとされています。

 前者についてさらに詳細にガイドラインがAnnex 5の脚注で示されており
(i) 生産性が高い種は基準レベル比で5~10%
(ii) 生産性が中程度の種は基準レベル比10~15%
(iii) 生産性が低い種は基準レベル比15~20%
を「減少」の判断基準としています。つまり生産性の低い種が基準レベルで100万匹いたものが15~ 20万匹に減少した場合、付属書Ⅰ掲載基準を満たすことになります。

 自然死亡率の一つの指標としては自然死亡率が挙げられ、これが年0.2~0.5の範囲にある場合生産性が中程度となる、とされています。

 なお、ここで示された数値的な判断基準は決議9.24のAnnex 5に基づきますが、これらの数値は「単に例として提示しているに過ぎない」と冒頭で付記されていることに留意する必要があります。

【付属書Ⅱ掲載基準】
付属書Ⅱには
(a) 現在必ずしも絶滅のおそれはないが、その存続を脅かすこととなる利用がなされないようにするためにその種の輸出入等を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種(第二条二項(a))、あるいは
(b) 上記(a)の種以外であって、(a)の種の取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種(第二条二項(b))
が掲載され、輸出入の際には輸出国からの輸出を許可する証明書が必要になります。

 これについても、決議9.24で適用の詳細が定められています。

 まず、上記(a)「現在必ずしも絶滅のおそれはないが、その存続を脅かすこととなる利用がなされないようにするためにその種の輸出入等を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種」(二条二項(a))に該当する場合として

〈Annex 2a A基準〉
A 近い将来(near future)に付属書Ⅰへの掲載が適格となる事態を回避するために、その種の取引の規制が必要であることがわかっているか、予想できる場合(Conf. 9.24, Annex 2a A)

〈Annex 2a B基準〉
B 捕獲採取を続けることにより種の存続が脅かされる水準にまで個体数が減ら(reduce)ないようにするためには、その種の取引の規制が必要であることがわかっているか、予想できる場合(Conf. 9.24, Annex 2a B)

のうちのいずれかが該当すれば、掲載の基準を満たすとされています(Conf. 9.24, Annex 2 a)。

 なお、上記Aにおける「近い将来」(near future)」とは5年以上10年未満と定義されています(Conf. 9.24, Annex 5)。

 上記付属書Ⅱの基準のうち、Aがより厳格です。これは短期間のうちに付属書Ⅰ掲載基準を満たしてしまうであろうほどその種の個体数が減ったり分布域が減少してしまうことがわかっているか予想される場合に当てはまります。

 付属書Ⅰ掲載についての基準は上記に示された数値的な基準を援用し得ることになります。この数値を援用する場合、5~10%高めに考えることができるとされています。すなわち、生産性の低い種では基準レベル比15~20%が付属書Ⅰ掲載の目安でしたが、付属書Ⅱの場合は、基準レベル比20~30%を目安と考えることができます(Conf. 9.24, Annex 5, footnote 2)。

 Bの基準はAに比べると緩やかで、このまま捕獲・採取を続けた場合、ワシントン条約で輸出入の規制をかけなければ、種の存続が脅かされるほど数が減ってしまう(reduce)ことがわかっているか予想される場合、付属書Ⅱ掲載基準を満たすということを意味します。

 なお、ここでは「減る」にreduceが用いられ、付属書Ⅰ掲載基準で「減少する(decline)」ではないことに留意する必要があります。付属書Ⅰ掲載基準の”decline”には「生産性が低い種は基準レベル比15~20%にまでdeclineすれば、基準を満たす」といつた数値的ガイドラインが決議に盛り込まれていますが、reduceにはそうした数値的なガイドラインは存在せず、declineよりも減少の程度が甚だしくないと解釈し得ます(CITES, “Criteria for the inclusion of species in Appendices I and II,” CoP15 Doc. 63.)。

 以上は条約第二条二項(a)に基づく付属書Ⅱ掲載基準ですが、付属書Ⅱについては「上記(a)の種以外であって、(a)の種の取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種」も掲載対象となると規定されています(第二条二項(b))。

 決議9.24では上記に関する適用の詳細が定められています。すなわち、

〈Annex 2b A基準〉
A 取引される形でのその種の標本が、付属書Ⅱにすでに掲載されている種の標本に類似しているため、執行官がそれらを区別できそうもない場合(Conf. 9.24, Annex 2b A)

〈Annex 2b B基準〉
B 上記基準Aに挙げた理由以外で、現在の掲載種に関する有効な取引規制が達成されることを保証するための説得に足る理由がある場合(Conf. 9.24, Annex 2b B)

のうちのいずれかが該当すれば、掲載の基準を満たすとされています。
 (なお、「標本(specimen)」とは、動物の場合、動物の個体、あるいは付属書Ⅰ・Ⅱ掲載種個体の部分もしくは派生物を意味します(条約第一条(b))

 Aの基準によると、既に付属書に掲載されたものと税関職員など執行官が見分けがつかない種は、付属書Ⅱに掲載し得ることになります。

 Bの基準によると、A以外の理由で現在の掲載種の取引規制の履行を確保するために説得力を有する理由がある場合、付属書Ⅱに掲載し得ることになります。


【予防的アプローチ】
 
 付属書掲載提案を行うとする種については、往々にして知見が不十分であったり、科学的に不確実な部分が多分に含まれている場合が少なくありません。そこで決議9.24では本文で予防的アプローチ(precautionary approach)が適用されるべきことが定められています。
 すなわち、
「予防的アプローチに基づき、種の状態あるいは取引が種の保全に及ぼす影響に関して不確実性がある場合、締約国は当該種の保全を第一に考え行動しなければならず、付属書ⅠもしくはⅡの改正提案を検討する場合、その種に対して予想されるリスクに比例した措置を取らなければならない」
と定めています(Conf. 9.24, para. 2)。

 したがってこの規定を鑑みるならば、例えば付属書Ⅰ掲載基準に関する決議9.24にある数値的な指標を明確に満たしていなかったとしても、このまま放置すれば絶滅の危機に瀕するなどのリスクが高いと判断されれれば、付属書に掲載され得ることになります。



 ここでニホンウナギについて考えると、たとえばそれが付属書Ⅰ掲載基準を満たす、あるいは近い将来これを満たしてしまう恐れがあると言えるか(この場合付属書Ⅱ掲載基準を満たす)、あるいは既に掲載されているヨーロッパウナギと類似して見分けがつかないとの付属書Ⅱ掲載基準を満たすか否か、等が付属書掲載が検討された場合のポイントとなり得ると思われます。


【ヨーロッパウナギ付属書Ⅱ掲載提案】

 では、既に付属書に掲載されているヨーロッパウナギの事例はどうだったかをみてみます。
 ヨーロッパウナギの提案書でヨーロッパウナギが付属書Ⅱ掲載を満たす論拠として、決議9.24のAnnex 2aのA基準と、同じくAnnex 2aのB基準が援用されています。
(CITES, CoP14 Prop. 18. https://www.cites.org/sites/default/files/eng/cop/14/prop/E14-P18.pdf)

 Annex 2aのA基準は「近い将来(near future)に付属書Ⅰへの掲載が適格となる事態を回避するために、その種の取引の規制が必要であることがわかっているか、予想できる場合」でした。

これについては、
・ オランダのデッカー博士らの文章と図を引用し、ヨーロッパウナギが1970年代後半の水準から1~5%に激減していること、
を一つの理由として挙げています(CoP14 Prop. 18, p. 1)。

Dekker et al (2003).jpg
[Dekker, W, Casselman, J. M, Cairns, D. K., Tsukamoto, K., Jellyman, D. and Lickers, H., "Quebec Declaration of Concern: Worldwide decline of eel resources necessitates immediate action," Fisheries Vol. 28 (2003), p. 28. http://library.wur.nl/WebQuery/wurpubs/fulltext/40989]

また、
・ ICES/EIFACウナギ・ワーキンググループの分析によると、シラスウナギ(ウナギ幼魚)が平均95~99%減少していること(CoP14 Prop. 18, p. 1)
も理由として挙げています。ICES/EIFACウナギ・ワーキンググループの報告書からは、シラスウナギや黄ウナギの加入量についてのグラフ等が資源減少を示すものとして引用されています(CoP14 Prop. 18, p. 26)。

EIFAC ICES WGEEL Report 2006 Fig 2.1.1.jpg
EIFAC ICES WGEEL Report 2006 Fig 2.1.3.jpg
[ICES, "Report of the 2006 session of the Joint EIFAC/ICES Working Group on Eels," ICES C.M. 2006/ACFM:16 (2006), pp. 3-4. https://brage.bibsys.no/xmlui/handle/11250/102073]

 なお、提案書ではヨーロッパウナギは生産性が低いとして、生産性が低い場合に当てはめる基準レベル比20%かそれ以下という付属書Ⅰ掲載基準の目安を下回っているとされています。

 Annex 2aのB基準は「 捕獲採取を続けることにより種の存続が脅かされる水準にまで個体数が減ら(reduce)ないようにするためには、その種の取引の規制が必要であることがわかっているか、予想できる場合」でした。

 これについては深刻な資源状態にあるヨーロッパウナギが、その資源状態にもかかわらず中国や日本などに輸出されており、このままでは種の存続が脅かされる可能性がある、等をその論拠としています。

【ヨーロッパウナギ提案に対するFAO専門家パネル評価】
 
 ワシントン条約では商業的に利用されている海産種の場合、FAO(国連食糧農業機関)の専門家パネルが提案が付属書掲載基準を満たすかどうかを評価します。付属書掲載提案は条約事務局やIUCNなども評価しますが、FAOが一番厳しめの評価、つまり提案に対して「これは基準を満たさない」とダメ出しをする場合が多いです。一番厳しい評価であることもあってか、基準を満たすと評価された提案は概ね締約国会議でも採択されます。

 ヨーロッパウナギについてもFAO専門家パネルは評価を行っていますが、提案書にある加入量の減少に着目し、これを理由として付属書Ⅱ掲載基準に合致すると結論付けました。

 すなわち、FAOはICES/EIFACウナギ・ワーキンググループから直接データを入手し、そのデータをもとにグラフ等を補正し、1950~1980年もしくは1970~1980年の加入量を基準レベルと考えた場合、この基準レベルから9~19%に減少していると評価しました。

FAO Fig 1.jpg
FAO Fig 2.jpg
[FAO, "Report of the Second FAO Ad Hoc Expert Advisory Panel for the Assessment of Proposals to Amend Appendices I and II of CITES Concerning Commercially-Exploited Aquatic Species," FIMF/R833 (En) (2007), p. 91. http://www.fao.org/docrep/010/a1143e/a1143e00.htm]


 FAO専門家パネルはヨーロッパウナギの生産性を低いもしくは中程度としました。生産性が低い種は基準レベル比15~20%、中程度の場合は基準レベル比10~15%が決議9.24で付属書Ⅰ掲載の目安であり、付属書Ⅱの場合は5~10%高めに考えることができるともされているので、15~30%が付属書Ⅱ掲載の目安となります。これに対して専門家パネルの評価は基準レベルから9~19%減少でしたので、付属書Ⅱ掲載が妥当と判断しました。


【ニホンウナギは?】

 上記の付属書掲載基準及びヨーロッパウナギの事例を鑑みた場合、ニホンウナギについては、決議9.24のAnnex 2bのA基準が最も簡単に適用し得ることになります。

 確認のため、再度のこの基準を記すと、

A 取引される形でのその種の標本が、付属書Ⅱにすでに掲載されている種の標本(≒すでの掲載されている種そのもの、あるいはその一部分や製品)に類似しているため、執行官がそれらを区別できそうもない場合(Conf. 9.24, Annex 2b A)

 付属書Ⅱ掲載基準を満たすということでした。

 ニホンウナギの蒲焼きと、ヨーロッパウナギの蒲焼きが税関職員に区別できるかというと、DNA検査をすれば区別できるでしょうが、そうでないと区別できないということになります。

 ただ、確実に付属書Ⅱ掲載を狙ってくる国がいるとすると、それは決議9.24のAnnex 2aのA基準を狙ってくることになるでしょう。


 確認のため繰り返すと、決議9.24のAnnex 2a A基準とは

A 近い将来(near future)に付属書Ⅰへの掲載が適格となる事態を回避するために、その種の取引の規制が必要であることがわかっているか、予想できる場合(Conf. 9.24, Annex 2a A)

 でした。
 ヨーロッパウナギ掲載提案についても、かなり基準を厳しめに解釈するFAO専門家パネルもこの基準から付属書Ⅱ掲載が妥当と判断しました。

 ヨーロッパウナギの事例で指標とされたのはウナギの加入量でしたが、ウナギ研究で知られる中央大学の海部健三先生のウェブサイトによると「個体群動態に関する研究は進んでおらず」「ニホンウナギに関して入手可能なデータは、おもに漁獲量のみ」とのことです。
[海部健三「ウナギレポート:日本ウナギは絶滅するのか」http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaifu/3zetsumetsu.html

 野生生物保全論研究会(JWCS)の「ニホンウナギの生息状況と日本におけるウナギ養殖・販売の現状」レポートでは、農林水産省の「漁業・養殖業生産統計年報」のデータに基づくならば、「日本の内水面における黄ウナギ・銀ウナギの漁獲量は、1960年代には3000t前後であったが、2016年にはわずか68tにまで減少した」と紹介されています。

JWCSウナギ・ファクトシート 内水面ウナギ漁獲量.jpg
[JWCS、「ニホンウナギの生息状況と日本におけるウナギ養殖・販売の現状」、2頁。https://www.jwcs.org/wp-content/uploads/JP_EelsinJapan.pdf


1960年代に3,000トンだったものが現在68トンなので、その1960年代を基準レベルとすると、現在は97%以上減の約2.27%ということになります。FAO専門家パネルの評価ではヨーロッパウナギに関して15~30%が付属書Ⅱ掲載の目安としていたので、これを大幅に下回ります。
 ただし、海部先生も先述のウェブサイト指摘されているように「漁獲努力量に関する情報が不足」しているため、漁獲量を漁獲努力量によって補正して用いることができないため、加入量データより信頼度は落ちることになります。

 では、漁獲量データを論拠にした付属書掲載提案はなかったのか。
直近の掲載提案をみてみますと、2016年のイトマキエイ類の付属書Ⅱ提案でインドネシアやコスタリカのココス島などでの漁獲データ等を用いて、これらが96~99%減少していることを、決議9.24のAnnex 2AのA基準に適合しているとの主張がされています。
[CoP17 Prop. 44, pp. 1, 6 – 7. https://cites.org/sites/default/files/eng/cop/17/prop/060216/E-CoP17-Prop-44.pdf]

FAO専門家パネルはこれに対して、以下のように評価しました。

(a) イトマキエイは生産性が低い種であるので、「基準レベル比15~20%」まで資源が減少すると、付属書Ⅰ掲載基準を満たす。
(b) 付属書Ⅱ提案の場合、5~10%高めに設定し、「基準レベル比20~30%」まで資源が減少しているか、あるいは近い将来(=10年以内)にそうなるおそれがある場合、この掲載基準を満たす。
(c) この提案では、「基準レベル比30%」まで資源が減少しているか、あるいは近い将来(=10年以内)にそうなるおそれがある場合、を掲載基準の評価基準とする。
(d) 付属書掲載提案にあるインドネシアで2001-05年と2013-14年の漁獲量を比べたデータ・論文とココス島の1993~2013年の漁獲量の推移に関するデータ・論文をFAO専門家パネルでも採用する。
(e) インドネシアでは、2001-05年と2013-14年の間で漁獲量が50%~99%減少しており、ココス島でも1993~2013年で漁獲量が78%減少している。
(f) ゆえに、「「基準レベル比30%」まで資源が減少しているか、あるいは近い将来(=10年以内)にそうなるおそれがある場合」という決議9.24のAnnex 2aのA基準に適合している。
(g) イトマキエイ属の他の種については、イトマキエイが広く大洋を回遊し、種相互で見分けがつかないため、決議9.24のAnnex 2bのA基準を満たす。
(h) ゆえにイトマキエイ属全て、付属書Ⅱの掲載基準を満たす。

 2016年の締約国会議でFAOは他の2提案についても評価しましたが、いずれも「付属書掲載基準を満たさない」とし、このイトマキエイ提案のみ「付属書掲載基準を満たす」と判断しました。
["Report of the Fifth FAO Ad Hoc Expert Advisory Panel for the Assessment of Proposals to Amend Appendices I and II of CITES Concerning Commercially-Exploited Aquatic Species," FIAF/R1163 (En) (2016), pp. 36 - 45.https://cites.org/sites/default/files/E-CoP17-88-03-A5.pdf]

 イトマキエイと同様に漁獲データによってのみでもよいとするFAO専門家パネルがするならば、ニホンウナギも「付属書Ⅱ掲載基準を満たす」と同様の判断を下す可能性がある、ということになるでしょう。

 なお、IUCNや条約事務局と比べて厳しめの評価をするFAO専門家パネルがその評価を2004年に開始して以降「基準に合致する」とした過去の11提案のうち否決されたものは2つだけなので、FAO専門家パネルで「基準適合」とされると、その提案が採択される可能性は高いと言えます。
 
 

nice!(1)  コメント(0) 

マニラでクジラ肉に遭遇 [クジラ]

 12月3日(日)から開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)にオブザーバーとして出席するため、フィリピンのマニラに出張しました。

IMG_2706.JPG
【WCPFC本会議が開催された会議場の模様】

 会議は最終日になった段階でも今回の最大の目玉議題であるカツオ、メバチマグロ、キハダマグロの管理措置がまとまっておらず、夜を徹した各国喧喧囂囂の議論の後、日付をまたいでようやくまとまり、翌日午前3時に会議は閉会しました。皆さん本当にお疲れさまでした。

 空調が今までどこでも体験したことのないほどきんきんに冷えていて、外は昼は30度近くあるのに会議場の中はコートを着ていても寒いくらいというありさま。おまけにインフルエンザにかかっていた人がいたようで、私の周りでもインフルエンザにかかる人が続出、私自身も会議最終日には熱気味で、帰ってからもしばらく風邪にやられてしまっていました。
 ちなみに会議場で貸し出される音声レシーバーの2台か3台に1台は充電不足か何かで動かないのが普通。果ては小部屋で開催されている作業部会の会議室で会議場スタッフが仕事もせずに大声でスマホで駄弁って参加者からきつく注意されるというのは初めて見ました。この会議のほんの数週間前にもASEANサミットが開かれるほどマニラでは最もメジャーの会議場のはずなのですが、なかなかな秩序です。

 マニラには地下鉄がないとのことで、空港から都心への往来も含め、交通手段は基本的にタクシーのみ。しかもタクシーはメーターを倒さないほうが普通、同じ区間なのに毎回乗るごとに料金が全く違い、しかも夜中でもない限り激しい渋滞が日常的で、渋滞なしなら数分程度の道のりに30分以上かかったりすることも普通。信号機はあまりなく、したがって歩行者はjaywalkし放題、車はクラクション鳴らしまくり、割り込みまくりとなかなかの秩序。あとである新聞記者の方に聞いたところ、通常都心と空港の間のタクシー代は200ペソ(約400円)にもかかわらず、「有り金全て出せ」と言われて約5,000円をぼったくられたとのこと。種々の点で基本的な社会的秩序が維持されていないフィリピンの実情を目の当たりにして、ドゥテルテ現大統領のような極めて強権的に社会秩序の改善を標榜するリーダーが生まれる素地を実感することができました。

 そんななか、会議の日程中のある夜、記者さんたちに紹介されてマニラの日本料理店に行きました。とそこにはメニューに「クジラベーコン」が。現物確認のため注文したところ、確かにクジラ肉でした。

IMG_2717.JPG
【マニラの日本料理店で提供された鯨肉。2017年12月】


 現在クジラベーコンの原料になる大型鯨類は全てワシントン条約の付属書Ⅰに掲載され、商業的な輸出入が禁止されていて、この規制に服さないことが国際法上合法であるのは、これら鯨類に対してワシントン条約の規制に服さないとする「留保」を付している場合に限られます。
 
 そこでフィリピンのワシントン条約付属書掲載種に対する留保を以下の条約事務局ウェブサイトから調べたところ、フィリピンは留保を付しているはキエリボウシインコ(Amazona auropalliata)、オオキボウシインコ(Amazona oratrix)、ヤマヒメコンゴウインコ(Primolius couloni)の3種だけだということが判明しました。

https://cites.org/eng/app/reserve.php
【ワシントン条約事務局ウェブサイト。留保掲載種】

Amazona_auropalliata.jpg
(キエリボウシインコ(Amazona auropalliata))
Amazona_oratrix.jpg
(オオキボウシインコ(Amazona oratrix))
Blue-headed_Macaw_RWD3.jpg
(ヤマヒメコンゴウインコ(Primolius couloni))

【上から、キエリボウシインコ、オオキボウシインコ、ヤマヒメコンゴウインコ。彼らがフィリピンのペットショップで売られていたりレストランで丸焼きなどされて出てきた場合でも、直ちにワシントン条約違反とは言えないことになります。写真はWikipedia Commonsより*】


 ということは、このフィリピンの「クジラベーコン」は、ワシントン条約に違反してことになるでしょう。マニラに来てまさかクジラの問題に遭遇するとは、と驚いている今日この頃です。



* 各写真の出典
キエリボウシインコ(Amazona auropalliata):https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Amazona_auropalliata_-_Gatorland_-upperbody-3.jpg
オオキボウシインコ(Amazona oratrix):https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Amazona_oratrix_-Palmitos_Park,_Gran_Canaria,_Canary_islands,_Spain-8a_(1).jpg
ヤマヒメコンゴウインコ(Primolius couloni):https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Blue-headed_Macaw_RWD3.jpg
nice!(1)  コメント(0) 

マグロ類消費世界一の責任-国際資源管理と日本の政策(『グローバルネット』寄稿) [マグロ]

 今回は地球・環境人間フォーラム発行の『グローバルネット』第324号(2017年11月)に寄稿しました日本のカツオとマグロに関する外交に関するエッセイを転載します。
 なお、掲載された原稿をPDF化したものをこの記事の最後にあるリンク先からダウンロードできるようにしました。

IMG_0364.JPG
【中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第13回年次会合(2016年12月)の模様。筆者撮影】

==========================================================================

マグロ類消費世界一の責任-国際資源管理と日本の政策
真田康弘(早稲田大学地域・地域間研究機構 研究院客員准教授)

 日本は世界で漁獲・養殖されるまぐろの約5分の1を消費する世界最大のかつお・まぐろ類の消費国であるとされる。スーパーに行けば、我々は気軽にこれらを買うことができる。
 人には国籍があるが、魚には国籍はない。かつお・まぐろ類は日本近海のみならず他国の水域や公海にまたがって回遊する以上、資源保護の取り組みは漁獲国や沿岸国が協力して行わなければならない。このため日本沿岸を含む西太平洋については「中西部太平洋まぐろ類委員会(Western and Central Pacific Fisheries Commission: WCPFC)」という国際資源管理機関の下で保存管理が試みられている。
 このWCPFCの場で水産庁を中心に構成される日本政府代表団が以前から訴えてきたことが、カツオとメバチマグロの資源保護策の強化である。カツオについては近年日本近海に回遊する資源量が減少傾向にあり、これは熱帯域で多くのカツオを「先取り」してしまうからではないか、と日本側は訴えている。メバチマグロについても、人口集魚装置(Fish Aggregating Devices: FADs)を用いて熱帯域で巻網という巨大な網で魚を一網打尽にする漁法によって乱獲されているとして、日本側はWCPFCで資源保護策の強化を強く求めている。
 しかしこれに対して熱帯域の漁獲国は立場が大きく異なる。カツオについては、そもそも熱帯域での漁獲と日本近海での漁獲には関連性が薄く、日本近海での資源減少は日本自身による取り過ぎが原因ではないかというのがこれら諸国の意見である。また、親魚資源量も初期資源量(漁業がないと仮定したときの資源量)比で50%を超えているとされており、WCPFCでこの資源に対して設定されている「不合格ライン」の初期資源量比20%を大幅に上回っている。メバチマグロにしても、WCPFCの下に設けられている科学委員会で今年示された資源評価によると、親魚資源量は初期資源量比20%という「不合格ライン」を超えている可能性が高いとされている。
 日本側はこうした資源評価自体が楽観的だと批判している。そもそもこの資源評価はWCPFC科学委員会自体が実施するのではなく、太平洋の島嶼国やオーストラリアなどで構成される太平洋共同体(SPC)メンバーの科学者が実施し、科学委員会はこれを評価するに過ぎない。太平洋諸国等は言わば「お手盛り」の資源評価をして自分たちへの規制を強めないようにしているのではないか、との疑念を持つ日本側関係者も少なくない。
 ただ、こうした日本代表団を支持する声はWCPFCでは、環境NGOを含め、極めて少ない。日本側は自分が「被害者」の立場であるカツオやメバチでは資源保護強化を訴えておきながら、「加害者」側の立場になると文字通り意見を180度変えてきたという事実があることがその要因の一つと言えるだろう。
 まぐろ類のなかでも最も高価なクロマグロは現在初期資源量比2.6%と危機的水準にあるとされており、IUCNは絶滅危惧種指定している。この資源の大半は日本によって漁獲されている。これに対してカツオやメバチと同様、初期資源量比20%を中期回復目標と設定して資源保護を図れと米国など他の加盟国からさんざん言われてきたにも拘わらず、水産庁はこれまで頑なにこれを拒否し続けてきた。また同じWCPFC管轄魚種でもクロマグロなどの北太平洋の資源については「北太平洋まぐろ類国際科学小委員会(ISC)」という日本の科学者が多数参加するフォーラムで評価が行われてきたが、これについては運営が透明性に欠けるとの批判がWCPFC加盟国や各国の科学者・専門家からも上がっていた。カツオやメバチについては乱獲を指弾しておきながら、クロマグロになると自国の乱獲を擁護し、SPCでの資源評価は不透明性だと疑念を持ちながら、自分たちが中心とのISCについては不問に付す。立場に一貫性が見られないのである。
 筆者の専門分野でもある政治学では「ソフトパワー」という概念がある。米国の政治学者ジョセフ・ナイが名付けたものであり、強制や報酬ではなく、魅力によって望む結果を得る能力のことを指している。軍事力や経済力によって相手に何か本当はしたくないものを〝押し付ける〟のが「ハードパワー」である一方、科学的・専門的知見や主義主張等によって相手になるほどと思わせ、自分の考え方に〝引き寄せる〟のが「ソフトパワー」である。注意しなければならないのは、「ソフトパワー」とは〝押し付ける〟ではなく〝引き寄せる〟力なのであって、主張に〝引き寄せる〟ためには、その主義主張が一貫してなければならない。主張の一貫性、それこそが水産庁によるまぐろをめぐる日本の漁業資源外交にともすれば欠けてきたものである。
 これに類する問題はカツオ・マグロだけにとどまらない。例えば秋の味覚であるサンマの不漁が近年マスコミを賑わせており、これについて日本は「北太平洋漁業委員会(NPFC)」というこの魚種を管理する国際委員会で資源保護強化を訴えている。ただNPFC科学委員会は当該資源が乱獲状態に陥っていると評価しておらず、漁獲を近年急増させてきた中国、台湾など他の漁獲国の腰は重い。日本はこれに対して、たとえ資源は乱獲状態に陥っていないとしても、それ以前の段階から十分予防的な対策を講じるべきであるとNPFCで訴えている。しかし日本は中国などの漁獲急増が起こる前、サンマの資源保護に対して実際の漁獲量を上回る漁獲枠を設定するのみで、何の実効的な国内資源管理策を実施してはこなかった。ろくな資源管理を国内的にしてこなかった国がいくら保護的な資源管理を国際的に訴えても、それに耳を傾ける国がどれほどいるだろうか。
 日本は世界有数の魚の漁獲国であり消費国である。もし日本が厳格な資源管理対策を国内的にも実施して資源回復に成功すれば、それは一つの成功モデルとなるだろう。徹底した資源管理とその成功を背景に国際的にも資源保護を訴えるならば、日本の主張は〝引き寄せる力〟を有するようになるだろう。
 クロマグロについて日本はWCPFCでの各国からの強い批判に押される形で、今年ついに初期資源量比20%を中期目標とし、2034年までにこの水準まで回復させることに合意した。今後はこれに基づき、既にWCPFCで設定されている漁獲枠を遵守し、資源回復を図るため国内的な措置を着実に実行することが必要である。クロマグロの資源が低位にある限り、カツオやメバチのことをWCPFCで訴えても、「クロマグロに比べれば全然ましではないか」と太平洋諸国はクロマグロを言わば「カード」として使ってくるだろう。そうした負のカードを日本は一刻も早く捨て去らなければならない。
 WCPFCを巡るまぐろ資源外交で日本がリーダーシップを取るためには、まず最低条件として、クロマグロを可及的速やかに資源回復させなければならない。他のマグロや魚種についても同様に、徹底した資源管理を実施して世界に一つの範を示す必要があるだろう。その上で、どの交渉の場でも首尾一貫して予防的な資源管理という立場を貫くこと、それが我が国が漁業資源外交の分野での「ソフトパワー」を発揮し、国際社会において名誉ある地位を占めるための条件なのである。

https://www.dropbox.com/s/gogf3hwpeecqrqe/%E7%9C%9F%E7%94%B0%E3%80%8C%E3%81%BE%E3%81%90%E3%82%8D%E9%A1%9E%E6%B6%88%E8%B2%BB%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E3%81%AE%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E3%80%8D.pdf?dl=0
【真田康弘「マグロ類消費世界一の責任-国際資源管理と日本の政策」『グローバルネット』第324号(2017年11月)、16~17頁】





nice!(0)  コメント(0) 

「捕鯨と環境倫理」研究会発表資料 [クジラ]

本日(2017年11月19日)国立民族学博物館で開催された「捕鯨と環境倫理」研究会での私の発表分の報告資料をアップロードしました。以下のリンク先からダウンロードできます。

https://www.dropbox.com/s/91pymd092l9m5si/ICJ%E6%8D%95%E9%AF%A8%E8%A3%81%E5%88%A4%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%B1%95%E9%96%8B.pptx?dl=0
【真田康弘「ICJ捕鯨裁判とその後の展開」(「捕鯨と環境倫理」研究会発表資料)】

内容は、国際司法裁判所(ICJ)での南極海捕鯨裁判(豪州対日本)についてと、その後の国際捕鯨委員会での議論についてです。国際司法裁判所の口頭弁論のビデオクリップが多数入っているので、ダウンロードするのにやや時間がかかるかも知れません。

ビデオクリップの入れていないものについては、以下からダウンロードできます。

https://www.dropbox.com/s/snsptwb0tbutxkf/ICJ%E6%8D%95%E9%AF%A8%E8%A3%81%E5%88%A4%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%B1%95%E9%96%8B%EF%BC%88%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%89.pptx?dl=0
【真田康弘「ICJ捕鯨裁判とその後の展開」(「捕鯨と環境倫理」研究会発表資料)(動画なし)】

なおこのビデオクリップにも出てくるICJ捕鯨裁判については、共著にて以下のものを執筆いたしました。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%83%A9%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E6%8D%95%E9%AF%A8%E8%A3%81%E5%88%A4%E3%81%AE%E5%8B%9D%E8%80%85%E3%81%AF%E3%81%A0%E3%82%8C%E3%81%8B-%E7%9F%B3%E4%BA%95-%E6%95%A6/dp/4487809258
【石井敦・真田康弘『クジラコンプレックス:捕鯨裁判の勝者は誰か』2015年、東京書籍】

IMG_2622.JPG



nice!(0)  コメント(0) 

日本の調査捕鯨は違法か [クジラ]

 今回は2015年12月に発行されたニューズレター『IKA Net News』第62号、5~12頁に寄稿した文章を掲載しました。脚注の引用のリンクが切れてているかもしれませんが、原文そのまま掲載します。
 なお、元の原稿についてはPDFファイルにしたものをこの文章の一番最後にあるリンク先からダウンロードすることができるようにしました。

========================================================================

日本の調査捕鯨は違法か:義務的管轄権受諾宣言とNEWREP-A最終案
真田康弘(早稲田大学)
 
 2015年10月、日本は国連事務総長に対し、海洋関係の問題については国際司法裁判所(International Court of Justice: ICJ)の義務的管轄権から除外するとの宣言を行うとともに、同年12月に「新南極海鯨類科学調査(New Scientific Whale Research Program in the Antarctic Ocean : NEWREP-A)」と題する南極海での科学調査名目での捕鯨に対する捕獲許可証を正式に発給した。とりわけ日本の「調査」捕鯨再開は「日本は国際司法裁判所の判決を事実上破った」と諸外国において驚きをもって報じられた。
 そこで本稿では、まず日本の義務的管轄権受諾宣言の変更とのその意義について明らかにした後、NEWPREP-A最終調査計画書を分析し、その問題点すなわち調査目的に照らし計画が合理性を有さないため国際法上違法ではないのかとの点について検討を試みたい。

1. 日本の義務的管轄権受諾宣言変更

ICJに訴訟を提起するためには、紛争当事者がICJの管轄権を受諾している必要がある。つまり、一方が提訴しても、他方がICJの裁判管轄権を受諾しなければ、ICJは裁判をすることができない。例えば日本は2012年8月、韓国に竹島問題のICJ付託を提案したが、韓国がこれを拒否したため、ICJはこの問題に対して裁判をすることはできない。
その一方、ICJは規程第36条2項で、この規程の当事国は、条約の解釈等に関するすべての法律的紛争についての裁判所の管轄を、同一の義務を受諾する他の国に対する関係において当然に且つ特別の合意なしに義務的であると認めることを、いつでも宣言することができると定めている。これがICJの義務的管轄権と呼ばれるものである。この宣言を行うか否かは各国が自由に選択できることから「選択条項受諾宣言」とも呼ばれている。日本が南極海捕鯨裁判で豪州から提訴された際、これに応じざるを得なかったのは、日本が義務的管轄権受諾の宣言を行っていたためである。
日本が最初にICJ強制管轄権受諾宣言を行ったのは、1958年のことである。すなわち同年9月15日付ハマーショルド国連事務総長宛宣言書により、「この宣言の日付以後の事態又は事実に関して同日以後に発生するすべての紛争であって他の平和的解決方法によって解決されないものについて、国際司法裁判所の管轄を、同一の義務を受諾する他の国に対する関係において、かつ、相互条件で、当然にかつ特別の合意なしに義務的であると認める」と宣言している(1)。その後日本は2007年7月9日付潘基文国連事務総長宛の宣言書で、改めてICJの義務的管轄権を受諾しているが、この新たな宣言書では、紛争の他のいずれかの当事国が「当該紛争との関係においてのみ若しくは当該紛争を目的としてのみ国際司法裁判所の義務的管轄を受諾した紛争」または「国際司法裁判所の義務的管轄の受諾についての寄託若しくは批准が当該紛争を国際司法裁判所に付託する請求の提出に先立つ12か月未満の期間内に行われる紛争」には適用されないとの文が挿入されている(2)。これは、強制管轄受諾宣言を行っていなかった国が日本との紛争をICJに付託する目的で急遽宣言を行い、その直後に紛争を付託するという「不意打ち提訴」に応じないためのものである(3)。
ICJ捕鯨判決(2015年3月)の約1年半後の2015年10月6日付で潘基文国連事務総長宛に送付された今回の宣言書では「海洋生物資源の調査、保存、管理又は開発により生じるか、関するものか、又は関連するいかなる紛争(any dispute arising out of, concerning, or relating to research on, or conservation, management or exploitation of, living resources of the sea)」についてはICJの強制管轄を認めないとの新たな一文が挿入されている(4)。これについて外務省は「海洋生物資源に関する規定が置かれ,また,科学的・技術的見地から専門家の関与に関する具体的な規定が置かれている国連海洋法条約上の紛争解決手続を用いることがより適当」であるためと強制管轄除外の理由を説明している(5)が、柴田明穂神戸大学教授(国際法)が指摘する通り「南極海での調査捕鯨の再開(及び北西太平洋の調査捕鯨の継続も)は国際法的に危うい、少なくともICJに持って行かれるのはいやだ、というメッセージ (6)」と解することもできよう。
では、日本が今後海洋関係の紛争で提訴された場合に応ずるとしている国連海洋法条約(United Nations Convention on the Law of the Sea: UNCLOS)の下での紛争解決手続きとはどのようなものか。同条約第286条はまず、UNCLOSの解釈または適用に関する紛争で交渉等によって解決が得られなかったものは、いずれかの紛争当事国の要請により、管轄権を有する裁判所に付託されると規定する。締約国は国際海洋法裁判所、国際司法裁判所、仲裁裁判所、特別仲裁裁判所のいずれかの管轄権を義務的なものとして予め選択的に受諾を宣言することができる(287条1項)。紛争当事国が同一の裁判所を選択している場合は、当事国が別段の宣言をしない限り、その裁判所に付託される(同条2項)。紛争当事国の宣言に共通の裁判所が存在しない場合は、仲裁裁判にのみ付託されることになる(同条3項)。したがって仮に豪州が日本をUNCLOSに定める義務的紛争解決手続きに付託する場合で同一の裁判所を選択していない場合は、別段の宣言をしない限り、仲裁裁判所に付されることになるであろう。この場合、日本は裁判を回避することはできない。
なお、国際海洋法裁判所は21名の裁判官で構成される(付属書Ⅵ、国際海洋法裁判所規程2条1項)。仲裁裁判所は5名の仲裁人で構成される。仲裁人5名のうち原告・被告側が各々1名を選任し、残りの3名は原告・被告双方の合意により選任される。原告・被告側が各々選任する仲裁人は自国民とすることができるが、双方が合意した3名については、紛争当事国が別段の合意をしない限り、第三国の国民としなければならない(付属書Ⅶ第3条)。
では、ICJで裁判を行う場合と、UNCLOSの下での裁判では法の適用に関してどのような違いが生ずるか。この点に関してケンブリッジ大博士研究員のMichael A Beckerは、UNCLOSに定める国際裁判の手続きに付されるのは「この解釈又は適用に関する紛争」(286条)であり、国際捕鯨取締条約の解釈は直接的には海洋法条約上の義務的手続きに付されるものではない、という点を指摘している。つまり豪州がUNCLOSに基づき再提訴する場合は、NEWREP-Aの実施がUNCLOS違反であると主張する必要がある。UNCLOS第65条及び120条は「いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と規定していることから、NEWREP-A実施を同条に基づく協力義務に違反していると主張することは可能であろうが、この立証は国際捕鯨取締条約違反より困難であろう(7)。
では、UNCLOSでの裁判手続きでは豪州は勝訴の公算がないのであろうか。これに関しては第87条及び第116条の存在を指摘したい。第87条では「公海の自由は、この条約及び国際法の他の規則(other rules of international law)に定める条件に従って行使される」とされ、この公海の自由には、「科学的調査を行う自由(freedom of scientific research)」が含まれる、と規定されている。また、第116条は「すべての国は、自国民が公海において」「自国の条約上の義務」に「従って漁獲を行う権利を有する」と定めている。しかるに、国際捕鯨取締条約は第87条に言う「国際法の他の規則」に当然含まれ、日本が公海で鯨類を捕獲する際には、国際捕鯨取締条約における「自国の条約上の義務」に服する必要がある。したがって、科学調査目的の捕獲許可発給を規定した国際捕鯨取締条約第8条に違反した鯨類の捕獲は、「国際法の他の規則に従っ」た「科学的調査」ではなく、「自国の条約上の義務」に服していないと解釈され得る。
こうした法的議論が可能なことは、豪州側も既に認識しているのではないかと考えられる。というのも、豪州が日本をICJに提訴する際の法的議論のベースの一つとした報告書に調査捕鯨が第87条と116条に抵触するとの記述が見受けられるからである(8)。
なお紛争が義務的管轄権を有するとして申し立てを受けた裁判所は、「紛争当事者のそれぞれの権利を保全し又は海洋環境に対して生ずる重大な害を防止するため」に適当と認める暫定措置を定めることができる(290条1項)。当事者間が義務的管轄権を有する裁判所について合意がない場合は仲裁裁判所に付託されることになるが(287条3項)、裁判官の選任等設立までに時間を要することが予想されることから、国際海洋法裁判所は「事態の緊急性により必要と認める場合」、暫定措置を定めることができる(第290条5項)。豪州及びニュージーランドは1999年に日本を相手取りミナミマグロの調査漁獲の即時停止を命じる暫定措置を同290条5項に基づき国際海洋法裁判所に請求したことがあり(9)、従って同様にNEWREP-Aに対してその停止を求める暫定措置命令を求めることも理論上考えられ得る。

2. IWC科学委での議論

NEWREP-AはIWC科学委員会の下に設置された専門家パネルで2015年2月レビュー会合が行われたが、同パネルは捕獲予定数の333頭についての根拠が薄弱であること、非致死的調査を十分に考慮していないこと、捕獲することによって商業捕鯨再開時の捕獲頭数管理方式の向上にどの程度役立つのか具体性に乏しいこと、他機関との協力についても不十分であること等を指摘したうえで、「現在の調査計画は……致死的サンプリングが必要であることを立証(demonstrate)していない(10)」として計29の勧告を行った。加えて、捕獲が一時中断したとしても調査に大きな影響は与えないとして、致死的調査実施の前に上記勧告の全てが実施され、それが評価されるべきであるとの判断を下している(11)。
これに対して日本側は、「致死的調査・サンプル数の妥当性に関する評価に不可欠な作業に関する勧告」と自らが考える5つについては、具体的な作業計画を提示し、科学委員会でその結果報告を行うとする一方、それ以外の勧告については、NEWREP-A実施を通じて対応するとし、全ての勧告を完了せずとも捕獲は実施するとの立場を表明した(12)。ここで日本側自らが科学委員会で結果報告を行うとした5つの勧告は、①調査捕獲によって得られる自然死亡率・性成熟年齢・妊娠率・加入率・寿命などのデータ精度が向上によって捕獲枠の算定方式であるRMPがどの程度改善されるのかの評価実施、②資源解析のアップデート、③自然死亡率推定の実行可能性・精度を判断するための既存データの分析、④捕殺によって得られる性成熟年齢データを資源解析に用いた場合、どのような利点があるのかを測定する基準の策定、⑤性成熟年齢の変化の検知に必要となるサンプル数に関する詳細な検出力分析の提出、である。
2015年5月から6月にかけて開催された科学委員会は、ワーキンググループを設置し、日本の追加作業の評価を行った。しかしここでも、日本が致死的調査・サンプル数の妥当性に関する評価に不可欠な作業に関する勧告としたものについても、日本の追加作業が完了していないとの見解が提示された。すなわち、上記①について日本側は、シミュレーションをしてみたところ、捕獲によってしか得られない耳垢に基づく年齢測定データが資源解析には必要なことが論証できた、これを用いてRMPも改善するつもりだ、とした。しかしながらワーキンググループは、確かに専門家パネルの勧告に則した作業が行われてはいるが、クジラの捕獲によってどの程度精度が改善するかについて十分な評価を行っていないと評価し、②の資源解析のアップデートについても勧告されたことが部分的にしか対処されていないとした。③の既存データ分析は何も追加作業は行われておらず、④の捕獲によって得られる性成熟年齢データを用いると、資源解析の点でどういうメリットがあるのか説明すべきとの勧告についても、日本側が提示したシミュレーションの結果からは性成熟年齢は年齢解析の結果の多くにほとんど影響を与えないことが示されており、どのようなメリットがあるのかが証明されていない、と指摘されている。⑤のサンプル数計算についても十分であるとはされなかった(13)。これを受けて科学委員会は「ワーキンググループの結論に合意する」とともに、日本の追加説明に示された「分析は不完全であり、十分な評価をすることができない」こと、したがって「十分なレビューを行うためにより詳細な情報が必要である」との点で合意している(14)。40名を超える科学委メンバーはこれとは別に共同ステートメントを発表し、日本側がサンプル数評価に必要不可欠としている項目についても作業が完了していない以上、致死的調査が必要だということが証明されておらず、捕獲調査を行わず専門家パネルの勧告で求められていることを実施すべきであると結論付けている(15)。
2014年9月にスロベニアで開催されたIWC総会では、科学委員会に対してICJで判示された基準にNEWREP-Aが合致しているか検討を指示する決議(16)が採択されており、科学委ではこれに関する議論が行われた。ここでは、サンプル数について十分な説明ができてもいないのだから、日本の主張する調査目的からみて合理的かどうかも当然わからないし、ミンククジラが南極海で食べているのはほとんどオキアミであること等は既に十分わかっていることなので、これ以上捕獲して調査しても鯨類の保全管理に何も役には立たない、との意見が出される一方、日本側が説明した通り非致死的調査だけでは保全管理に資する十分なデータが得られないとの意見も提示され、コンセンサスに至ることはできなかった(17)。

3. NEWREP-A最終案

 専門家パネル及び科学委員会での極めて厳しい批判を受け、日本側は再度修正した調査計画最終案を2015年12月公表し、「我が国研究者による追加作業の結果、調査実施前に証明すべき事項については、必要な作業が完了した」として「NEWREP-Aを本年度から実施することを決定した」旨発表した(18)。同調査の調査目的は当初案通り、①商業捕獲のための捕獲枠算定メカニズムである改訂管理方式(RMP)を適用したミンククジラの捕獲枠算出のための生物学的及び生態学的情報の高精度化と、②生態系モデルの構築を通じた南極海生態系の構造及び動態の研究であるとされ、捕獲頭数も当初案通り333頭とされている。
 確かに最終案は当初案に比べて、いくつかの点で若干の改善が試みられている。例えばICJ判決で他の国際機関との研究面での協力がほとんど全く存在しないと批判された点に対応して「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)」とオキアミ調査で連携すると表明するとともに、同調査に関し当初計画より具体的な計画案が提示されている。しかしながら、専門家パネル及び科学委で指摘された勧告等に十分応えているとは言い難い。
 問題点の第一として、サンプル数の説得的な説明がなされていない点が挙げられよう。確かに最終計画案では333頭のサンプル数の根拠として、1年あたり0.1歳の性成熟年齢の若齢化もしくは老齢化を90%以上の確率で検出するためのものだとして、その計算論拠が提示されている。しかしながら、内容は当初計画案とおおよそ同様であり、なぜ0.01歳でもなく0.2歳でもなく0.1歳を基準とするのか理解することに困難が伴う。
また、なぜそもそも性成熟年齢だけを基準にしているのかも不明である。NEWREP-Aの調査目的であるRMPを適用したミンククジラの捕獲枠算出のための情報の高精度化と、生態系モデルの構築は、以前の調査捕鯨計画(JARPA II)にも含まれている。また、JARPA IIでは性成熟年齢に加えて、妊娠率、脂皮厚、系群混淆率等5つの基準からサンプル数の算定根拠が提示されている。しかしNEWREP-Aでは性成熟年齢からしか算定論拠が示されていない。2000年代半ばまで水産庁で捕鯨問題の陣頭指揮をとった小松正之も「性成熟率から333頭を積算した方法は、ICJに批判されたJARPA IIのサンプル数の算定方法より統計的有意性が低」く、「検出の有意性成熟年令の変化の程度と調査期間で、サンプル数は変化させられる」と批判し、捕獲頭数は「国内の鯨肉需要に焦点を合わせた妥協の産物」だ、と批判している(19)。
加えて、2つの調査目的のうちの1つである南極生態系解明という観点からなぜこの数が必要かの説明が一切なされていない。NEWREP-A調査計画最終案でも、当初案と同様、南極海生態系という調査目的からのサンプル数計算が「現段階では実現不可能」であり、333頭を捕獲するのしないのとでどの程度の南極生態系解明という調査目的達成の点で違いが出るのかはわからない、と説明を諦めている(20)。
ICJ判決では、発給された捕獲許可が科学研究目的であるかは、当該発給国の認識のみに委ねることはできないとし(21)、サンプル数は調査目的に照らして合理的でなければならない、と判示している(22)。しかるに、日本側の説明は、一番目の調査目的であるRMPを適用したミンククジラ捕獲枠算出のための生物学的及び生態学的情報の高精度化という観点からも不十分であり、二番目の調査目的である南極海生態系の解明という観点からは全くなされていない。ゆえに、調査捕獲が国際捕鯨取締条約第8条で許容されている科学目的であるか否かの客観的基準としてICJが採用し、2014年のIWCで採択された決議でも盛り込まれた、「調査目的に照らしサンプル数を合理的であること」との基準を満たしていない。
第二の問題点として、調査の目的と致死的方法という手段に整合性があるのか、という点が挙げられる。日本側は、捕獲枠算定メカニズムであるRMPを適用したミンククジラの捕獲枠算出のための情報を収集して高精度化を図ることを2つの目的のうちの1つとしている。そもそもRMPで捕獲枠を算出するためには、①過去の捕獲実績と、②推定生息数の2つの情報だけで足りる。これに対して日本は、クジラの他の生物学的情報も収集すれば、資源に悪影響を与えることなく捕獲枠を多く算定することができるが、こうした情報のうち性成熟年齢については年齢データがなければわからず、年齢を知るためには捕殺が必要である、と主張している(23)。ところが調査計画では、サンプル数計算のベースとして用いられた1年あたり0.1歳の性成熟年齢の若齢化・老齢化を90%以上の確率で検出ことが、RMPをどの程度高精度化させるのか、数字による具体的な説明が示されていない。捕獲枠計算の高精度化を図るというのであれば、なぜこれまでの20年以上にわたって実施されてきた調査捕鯨で、こうした高精度化について顕著な具体的成果が得られなかったのであろうか。これまでも達成し得なかったものを、具体的な数字もなく達成できるという説明は理解に苦しむと言わざるを得ない。
調査目的の2番目である南極海生態系モデルの構築に関しては「南極海の海洋生態系の構造と動態を解明するために必要な捕食者の消費を算定するには胃内容物が必要(24)」とミンククジラ捕獲の必要性を日本側は主張するが、南極海に生息する生物の中で、なぜミンククジラだけを捕獲し、他の鯨種は目視だけでよいのか合理的に説明することは困難である。事実、調査捕鯨の実施主体である日本鯨類研究所自身も「生態系モデルを構築するためには豊富に存在するすべての鯨種からのデータが必要」との立場を現在でも維持しており(25)、これはミンクしか捕獲しないNEWREP-Aと矛盾する。調査主体である日本鯨類研究所はまた、「漁業資源への影響に関することも含めて、捕鯨調査の重要性を示していきたい」と調査の意義を強調しているが(26)、南極海に回遊するクジラが食べているのは専らナンキョクオキアミであることは数十年前より周知の事実であり、南極海に生息する魚類を大量に捕食しているとの話を筆者は残念ながら寡聞にして知らない。調査する意義に極めて乏しいと判断せざるを得ない。
専門家パネルは、これまで多数のサンプルを捕獲してきたのだから、まずこれを調べれば良い話であり、捕獲を一時中断しても支障はない筈だ、と指摘している(27)。これに対し日本側は、南極海の鯨類資源は近年大きく変動し、ザトウクジラとナガスクジラ増加に伴いミンククジラの資源量停滞あるいは減少が起こっている可能性があるとし、こうした変動の動態を捉えるには継続的な捕獲調査が必要不可欠だ、と反論している(28)。他方、北西太平洋で実施している調査捕鯨(JARPN II)ではICJ判決を受けて沖合海域でのミンククジラ調査捕獲を当初100頭が予定捕獲数であったところ、これを0としていることに対し、海洋生態系の大規模な変化が一因と考えられる近年の発見頭数減少を受けたものだ、と説明している。南極海でミンククジラの捕獲を継続的に行うのは、南極海の生態系に大きな変化が起こっているからだと主張している一方で、北太平洋でミンククジラ捕獲を中止した理由も、この海域の生態系に大きな変化があったからだと説明しており(29)、これは相互に矛盾する。この矛盾は2015年のIWC科学委員会でも指摘されており(30)、小松正之も「南極海新計画のミンク鯨はバイオプシー調査では無理だから、サンプル数333頭を示した」一方で「北西太平洋ではバイオプシー調査で対応するため、ミンク鯨のサンプル数を0にしている」と指摘し、「見れば見るほど、日本の調査捕鯨は支離滅裂」だ、と批判している(31)。
さらに付言すべきは、多数の科学的疑義があるにもかかわらず、なぜ捕獲調査が必要なのか、その科学的根拠を日本国内においてすら説明する努力を行っていないことである。数十億円の国費によって賄われる水産資源管理としては国内最大規模の科学調査事業の一つである筈にもかかわらず、実施主体である日本鯨類研究所にはIWCに提出した英文の調査計画書1本をつい最近になってウェブページにアップロードしたのみであり、この計画が何を目的とするものであり、どのような科学的成果が得られるのか、なぜこの頭数が必要であるのか、科学者から多数提示されている疑義に対してどう答えるのか、何の説明も行われていない。税金を用いて調査研究を行う機関として、科学的アカウンタビリティ(説明責任)に欠けると指摘せざるを得ない。

4. 小括

 以上見てきたように、NEWREP-A最終調査計画書は、IWC科学委及び同委専門家パネルの指摘事項に十分応えたと言うにほど遠い。同調査はICJ判決で示された基準を満たしておらず、科学目的であると客観的に立証したと言えない。ゆえに国際法上違法と考えられる。日本の調査捕鯨再開を報じた英字紙の論調は総じて日本の立場に否定的であり、日本の主張に理解を示す報道はほとんど見受けられない。日本国内でも勝川俊雄東京海洋大准教授は日本の調査捕鯨は「〝科学〟として破綻している」として「国際裁判をないがしろにした形での調査捕鯨に反対」と明言(32)、日本経済新聞も12月6日付で「調査捕鯨の再開は拙速だ」との社説を掲載している(33)。「国際社会における法の支配」を外交の基本原則とする日本政府の基本方針と調査捕鯨の再開は背反しており、南シナ海・東シナ海での中国の海洋進出に対して国際法の遵守を求める日本の立場と矛盾する。国際社会における日本の威信と評価を下げるものであっても、上げるものとはなり得ない。国益に反すると言わざるを得ない。
 現在調査捕鯨再開に関して豪州一般世論での反応はそれほど激しい反発を招いてはいないと報じられているが、シーシェパードが調査捕鯨操業の妨害を公言しており、このため船舶を南極海に向け出港させている。捕鯨船とシーシェパード妨害船との衝突は、豪州内での関心を一気に高めることも予想される(34)。かような場合、豪州は再び国際裁判に打って出る可能性も否定できない。
日本の新調査捕鯨NEWREP-Aは、科学的に正当化され得ず、ICJ判決の主旨を踏まえているとは到底言えない。国際捕鯨取締条約違反であり、言わば日本政府公認の「IUU漁業(違法操業)」であると判断されよう。南極海での調査捕鯨は中止すべきと思料される。

(1) 秋月弘子「国際司法裁判所における手続き」、東壽太郎・松田幹夫編著『国際社会における法と裁判』国際書院、2014年、179頁。
(2) 同上。
(3) 外務省国際法局国際法課、「国際司法裁判所(ICJ)について」、2015年、5頁、http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000103330.pdf(2015年12月12日アクセス)。
(4) 同上;ICJ, “Declarations Recognizing the Jurisdiction of the Court as Compulsory: Japan,” http://www.icj-cij.org/jurisdiction/?p1=5&p2=1&p3=3&code=JP (accessed on December 12, 2015).
(5) 外務省国際法局国際法課、前掲注3。
(6) 柴田明穂Facebook、2015年10月18日付投稿、https://www.facebook.com/akiho.shibata.3?fref=ts(2015年12月12日アクセス)。
(7) Michael A Becker, “Japan’s New Optional Clause Declaration at the ICJ: A Pre-Emptive Strike?” EJIL: Talk! (Blog of the European Journal of International Law), October 20, 2015, http://www.ejiltalk.org/japans-new-optional-clause-declaration-at-the-icj-a-pre-emptive-strike/ (accessed on December 12, 2015).
(8) International Fund for Animal Welfare, Report of the International Panel of Independent Legal Experts On: Special Permit (“Scientific”) Whaling under International Law, May 12, 2006, pp. 48-51.
(9) 水上千之『現代の海洋法』有信堂、2003年、129頁。
(10) IWC, “Report of the Expert Workshop to Review the Japanese JARPA II Special Permit Research Programme,” SC/65/Rep02, 2014, p. 2.
(11) Ibid., p. 35.
(12) 水産庁・外務省、「新南極海鯨類科学調査(NEWREP-A)に係る国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会レビュー専門家パネル報告書への対応について」、2015年4月、1頁。
(13) IWC, “Report of the Scientific Committee – Annex Q: Matter Related to Item 17. Special Permits,” IWC/66/Rep01(2015) Annex Q, June 19, 2015, p. 2.
(14) IWC, “Report of the Scientific Committee,” IWC/66/Rep01(2015), June 19, 2015, p. 92.
(15) IWC, “Report of the Scientific Committee – Annex Q: Matter Related to Item 17. Special Permits,” IWC/66/Rep01(2015) Annex Q, June 19, 2015, p. 9.
(16) IWC Resolution, 2014-5.
(17) IWC, “Report of the Scientific Committee,” p. 96.
(18) 水産庁・外務省、「新南極海鯨類調査計画(NEWREP-A)の実施について」、2015年12月、1頁。
(19) 小松正之「緊急提言!IWC」みなと新聞2014年12月5日。
(20) Government of Japan, “Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the Antarctic Ocean (NEWREP-A),” 2015, para. 3.1.1, p. 32.
(21) Whaling in the Antarctic (Australia v. Japan: New Zealand Intervening), 2014, p. 28, para. 61.
(22) Ibid., p. 33, para. 88.
(23) Government of Japan, “Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the Antarctic Ocean (NEWREP-A),” 2015, para. 1.3, p. 9.
(24) Ibid.
(25) 日本鯨類研究所、「Q&A-南極海における日本の捕獲調査」、http://www.icrwhale.org/05-A-a.html(2015年12月18日アクセス)
(26) 藤瀬良弘日本鯨類研究所理事長の森山裕農水団人と面談した際の発言。水産経済新聞2015年12月8日「捕鯨3団体が森山大臣訪問」。
(27) 小松正之も「南極海のミンククジラはこれまでのJARPAとJARPA IIで約1万頭のサンプルが集積されているので、これに年間300頭余りのサンプルが追加されたところで、統計的な精度を向上させる意味合いは薄い」と指摘している。小松正之『国際裁判で敗訴!日本の捕鯨外交』マガジンランド、2015年、107頁。
(28) Ibid., para. 1.1, p. 5.
(29) Government of Japan, “Response to SC 65b recommendation on Japan’s Whale Research Program under Special Permit in the Western North Pacific (JARPN II),” SC/66a/SP/10, 2015, p. 4.
(30) IWC, “Report of the Scientific Committee,” IWC/66/Rep01(2015), June 19, 2015, p. 92.
(31) みなと新聞2015年6月30日。
(32) 勝川俊雄Twitter、2015年12月7日。
(33) 捕鯨推進の旗振り役の一人であった大西睦子氏(大阪鯨料理「徳家」女将)も「南極海での捕獲調査に対する風当たりがあまりにも強く、実施が現実的に困難ならば、日本は大きな決断を下す時ではないでしょうか」と「南極海での捕獲調査を諦めるのも選択肢」と述べている。みなと新聞2015年6月30日、「大きな決断下す時 徳家女将大西睦子さん」
(34) Daniel Flitton and Andrew Darby, “Japan whale hunt tensions to flare as Australia considers court action,” Sydney Morning Herald (electronic edition), December 8, 2015, http://www.smh.com.au/federal-politics/political-news/japan-whale-hunt-tensions-to-flare-as-australia-considers-court-action-20151207-glhag4.html (accessed on December 13, 2015).


https://www.dropbox.com/s/66xr60ah4vqebqp/IKANet%20NEWS%20No.62%20%282015.12.25%29%20Sanada.pdf?dl=0
【真田康弘「日本の調査捕鯨は違法か:義務的管轄権受諾宣言とNEWREP-A最終案」『IKA Net News』第62号(2015)、5~12頁】
nice!(0)  コメント(0) 

新北西太平洋鯨類科学調査計画(NEREP-NP)・IWC科学委員会レビュー [クジラ]

 先頃北太平洋で実施されていた日本の今年度分の調査捕鯨が終了したところですが、今回は『IKA-NET News』68号(2017年8月)に寄稿した北太平洋での調査捕鯨に関するIWC科学委員会での議論について書いたエッセイをアップしました。
 なお、元の原稿についてはPDFファイルにしたものをこの文章の一番最後にあるリンク先からダウンロードすることができるようにしました。

IMG_0201.JPG
【IWC第66回隔年会合(2016)の模様。筆者撮影】

================================================================

新北西太平洋鯨類科学調査計画(NEREP-NP)・IWC科学委員会レビュー
真田康弘(早稲田大学)


 
 2017年5月、国際捕鯨委員会(International Whaling Commission: IWC)科学委員会会合がスロベニアで開催され、日本が同年より実施する新北西太平洋鯨類科学調査計画(Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific: NEWREP-NP)に対するレビューが行われた。NEWREP-NPについては2017年4月、IWC科学委員会の下に設けられた専門家パネルが評価報告書を発表し、新調査計画をほぼ全面否定するにも等しい判断を下すとともに多数の勧告を行い、これら勧告での事項が実施され評価を受けるまでは捕獲を伴う調査を行うべきでないとの結論を提示していたが 、IWC科学委員会はこうしした専門家パネルの勧告を承認(endorse)した 。
本小論では、NEPREP-NPの調査計画の主たる内容と専門家パネルの要旨を振り返ったのち、科学委員会での議論の内容を紹介するとともに、この評価のインプリケーションを指摘することとしたい。 

1. NEWREP-NP調査計画

 日本は北太平洋では1994年から1999年にかけて「北西太平洋鯨類捕獲調査(Japanese Whale Research Program under Special Permit in the Northwestern Part of the North Pacific: JARPN)」、2000年と2001年の予備調査を経て2002年から2016年にかけて「第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(Cetacean Studies in the Western North Pacific under Special Permit: JARPN II)」と呼ばれる調査捕鯨を実施してきた。JARPAN IIでは「鯨類は、人間の食用に漁獲されるものの3倍から5倍の海洋資源を消費していると推定される」として「鯨類と漁業の競合関係を調査し、日本をはじめとする周辺各国にとって重要な漁場である、北太平洋西部の海洋生態系における鯨類の役割を明らかにすることを主眼」とすることが謳われた 。
 予備調査を含むと足掛け17年に及び、累年総計で数百億円規模と思料される日本の水産資源管理史上最大規模の研究プロジェクトの一つであったJARPN IIはしかしながら、「クジラが多くの魚を食べて漁業と競合している関係を明らかにした生態系モデルを構築する」との目的の達成に失敗する結果となった。JARPN IIの最終評価を行うため2016年2月に開催されたIWC科学委員会独立専門家パネルに対して日本側が「鯨と魚の餌を巡る競合」に関して提示したのは「三陸沖のイカナゴの約10%をミンククジラが捕食している」との仮説のみにとどまり 、これについても専門家パネルは「モデルで用いられているデータには誤りがあることが明らかとなったため、イカナゴに関するモデルの結果をパネルとして評価することはできない」と退けるとともに、提出された全ての研究結果は「複数の点で不完全」で「予備的(preliminary)なものにとどまっている」と評価した 。専門家パネルは、生態系モデリングというJARPN II最大の目的の達成度に関し、「鯨類や他の海洋生物資源ないし生態系の保全管理の改善をもたらすものとはならなかった 」と結論付けた。
 JARPN IIレビューでのこうした評価に直面した水産庁は、新調査計画NEWREP-NPでは「餌の競合を巡る生態系モデルの構築」を調査目的から外し、①日本沿岸域におけるミンククジラのより精緻な捕獲枠算出と、②沖合におけるイワシクジラの妥当な捕獲枠算出の2つに主たる調査目的を絞った新調査捕鯨計画案を策定、2016年秋に発表している 。
 IWCでは商業捕鯨が再開された場合「改訂管理方式(Revised Management Procedure: RMP)」というスキームにより捕獲枠の算定が行われることがIWCで合意されている。商業捕鯨の中止がIWCで決定された最大の原因の一つとして、捕獲頭数算定に必要な種々のデータに不確実性が伴うことから、捕獲枠に関するコンセンサスを得られなかったことが挙げられる。そこでRMPでは、種々の不確実性をシミュレーションとして組み入れつつ、①過去の捕獲頭数と、②現在の推定生息数、という2つのデータのみで捕獲枠を計算することが可能となっている。その一方、その他の補助的データをRMPのシミュレーションに組み込むと、より精緻なモデルを構築することも可能である。致死的調査によってしか入手不可能なデータがRMPにおけるモデル構築の精緻化に役立つのであれば、調査捕鯨の正当性を科学的に裏付けることも不可能ではない。ほぼ何の成果も生み出さなかった生態系モデルの構築という目的をそぎ落とし、対外的にも説明可能なものとしようと試みたと言える。捕獲頭数に関しては、ミンククジラを沖合域で27頭、沿岸域で147頭捕獲、イワシクジラを140頭捕獲、とされた。

2. NEWREP-NP専門家パネル報告

 2016年11月に発表されたNEWREP-NPの説明に際し、森下丈二IWC日本政府代表は「科学的な根拠に基づき、持続可能な捕鯨の再開をこれまで以上に明確に打ち出した」と調査計画の内容に胸を張った 。
 この調査計画案の評価を行うため、IWC科学委員会の下で設置された独立専門家パネルの評価会合が2017年1月30日から2月3日まで開催された。しかしながら日本側の同調査計画への自信とは対照的に、パネルの科学者たちはNEWREP-NPに対し厳しい評価を下した。
 専門家パネルの指摘・勧告事項は多岐にわたるが、そのなかの一つとして挙げられているのが、北太平洋沖合の広大な海域(下図の7WR、7E、8、9)での捕獲頭数が27頭であるのに比べて三陸・釧路沿岸(下図の7CSと7CNの海域)での捕獲頭数が100頭にものぼっており、捕獲が沿岸部に偏り過ぎている点である。沿岸域での調査は沿岸の小規模捕鯨船により行われると調査計画書では明記されており、これでは沿岸の捕鯨業者により多くのクジラを捕獲してもらうためという経済的・商業的見地からの配慮に基づくものではないかとの批判を受けても仕方のないものとなっている。
NEWREP-NP map 2.jpg
 さらに問題として専門家パネルが指摘したのが、沿岸捕鯨業者によって実施される沿岸での捕獲が通例の鯨類の科学調査としては大きく異なっている点である。通常の調査では、偏りが生じないようにするため、予め決められたラインの上を調査船は航行し、原則としてここから外れることはない。ところが沿岸での調査では、確かに30カイリまでは調査船は決められた航路にそって航行するが、もしクジラに遭遇しなかった場合は、30カイリ以降はミンククジラを捕獲するため自由に船を動かしてよいという計画になっている。また、30カイリまでにクジラに遭遇して捕獲した場合、クジラを水揚げするため港に戻るが、その途中で新たにクジラに遭遇した場合、これも捕獲して良いことになっている。加えて、天候が悪くなると予想される場合も、30カイリに到達する前であっても自由に船を動かしてよいことになっている 。
 こうした「科学調査」の建前から大きく外れた方法は、やはり小型捕鯨業者がより確実にクジラを捕獲できるようにとの経済的・商業的配慮に基づくものではないかとの誹りを免れない。専門家パネルも、調査計画では「日本沿岸域のミンククジラ日本海個体群(J-stock)の時空分布」が調査目的になっている筈なのに、これではサンプルに偏りが出てしまい、この調査目的達成に対して重大な障害となってしまうではないか、と批判する。NEWREP-NPの「提案者は本件を徹底的に検討(thoroughly consider)し、現行のデータ収集計画に対する更なる正当化・修正を提示しなければならない 」と専門家パネルは厳しい要求を突き付けた。
 調査計画での捕獲数についても、日本側の計画案では、なぜこの頭数が必要なのか、合理的な説明が十分になされていない、とも専門家パネルは指摘している。日本側はミンククジラ127頭の捕獲がなぜ必要かとの点に対して、この頭数の捕獲を行った場合、メスのミンククジラ1頭が子供を何頭産むかの割合の10年間で30%以上の減少を検知することができるようにするためである、と説明している 。これに対して専門家パネルは、メスが子供を産む割合が10年間で30%減少したことを検知することができれば、どの程度捕獲枠算定の精緻化に貢献することができるのか、その理由を日本側が具体的な数字を提示して説明していないと批判した。
 イワシクジラについても同様である。日本側は、サンプル数についてこのクジラの自然死亡率推定を算定根拠としている 。このデータを得られれば、新調査計画の目的の一つであるイワシクジラ捕獲枠算定の精緻化に貢献することができるからだとの理屈である。しかしながら、このクジラを140頭捕獲採集することで、どの程度の捕獲枠の精緻化が図られるのか、それについての説明がなされていない。従って専門家パネルはイワシクジラについても、この頭数の捕獲が必要であることの論証に失敗しているとの判断を下した 。
 致死的調査の必要性そのものについても、専門家パネルは否定的評価を行っている。現在クジラを含め動物の調査では皮膚の一部を採取し、これをDNA検査等に用いる「バイオプシー」という方法が用いられている。日本側は自らが調査の対象とするミンククジラ等についてはバイオプシー調査の成功率が低いため、捕獲して調査を行わざるを得ないとの主張を行ってきた。しかし専門家パネルは、これまで非致死的調査が試みられたのは北太平洋のミンククジラは23頭にしかすぎず、調査自体の絶対数が極めて少なく、調査時間も足りていないとし、バイオプシー調査が効率的なあるかどうか、より丁寧に評価を行うべきであるとの勧告を行った 。また、確かに年齢等一部のデータを入手するためには致死的調査が必要であり、こうしたデータが鯨類の保全管理の改善に貢献する可能性が理論上存在しているが、どの種のデータを集めればどの程度NEPRE-NPでの調査目的を達成することができるのか、定量的な評価を行うべきであるとの勧告を行っている 。
 さらに問題とされたのが、現行の調査計画案では一部の捕獲対象について資源を減少させる恐れがある点だった。
 日本側はミンククジラの資源に与える影響の分析に関して、日本周辺には日本海・黄海・東シナ海個体群(J ストック)とオホーツク海・西太平洋個体群(O ストック)の2つの個体群が存在するとの前提で行っている。ところが北西太平洋のミンククジラについてはさらに個体群が分類できるとの仮説が存在しており、日本も個体群の同定をNEWREP-NPの目的の一つとしている。にもかかわらず日本側はこれらの前提を検討していない。加えて、たとえ日本側の個体群の数に関する前提に基づくとしても、Jストックが混獲等により減少する可能性が存在している。これは懸念すべき問題であると指摘したのである 。
 これら諸々の欠点として指摘した事項を総括するかたちで専門家パネルは、①致死的調査部分についてのサンプリング・デザインとサンプル数が十分正当化できていない、②追加的な年齢データが保全管理の顕著な改善に資するとの十分な正当化ができていない、③ミンククジラ捕獲が資源に与える影響についての評価(とりわけ、現在提案者が採用している方法を取った場合、幾つかのシナリオではJストックが減少することになる点)、の3点を主たる懸念事項と挙げ、以下のように評価した。

 
本パネルは、(NEPREP-NPの)主たる目的及び二次的目的が保全管理のために重要であると認めるが、その貢献度にはばらつきがある旨合意する。(NEPRE-NP)提案者の行った作業にかかわらず、現在の計画案について以下の旨を結論する。(1)本調査提案は致死的サンプリングの必要性とサンプル数についてその正当性を十分に立証できてはいない。とりわけ、IWCにおける管理保全措置の改善にどの程度資するのかを定量的に立証できてはいない。(2)本調査提案は基本的な計画部分に欠陥がある(17)。

 「なぜこの頭数を捕るのか説明できていない」「そもそも計画の基本部分から欠陥がある」との全面否定に近い評価の後、専門家パネルは、NEPREP-NPの致死的サンプリングを伴う部分については同パネル報告書で同定した点につき追加的作業を行い、かつこれがレビューされるまで、実施されるべきでないとの勧告を行った。

3. NEWREP-NP修正調査計画案

 専門家パネルの極めて厳しい評価を受け、日本側はNEWRE-NPの計画案を一部修正し、これを2017年5月に開催されたIWC科学委員会に提出した。
 最終案では「沿岸域でのミンククジラの捕獲が沖合と比較して多すぎる」との専門家パネルから指摘を踏まえ、沖合(前掲図の7WR、7E、8、9の海域)の捕獲頭数は27頭から43頭に増やされ、三陸・釧路沿岸(前掲図の7CS及び7CNの海域)での捕獲頭数は100頭から80頭に引き下げられている。これは、当初案では沖合域25%、沿岸域75%の比率で捕獲枠を配分していたところ、最終案では沖合域40%、沿岸域60%としたことに基づいている(18)。「本来は50%・50%が望ましいが操業上の理由も鑑みて40%・60%の比率とした」と理由が述べられているが、そもそもなぜ50%・50%が望ましいのか、なぜ最終的に40%・60%の比率にしたのか、その理由はどこにも付されていない。
 ミンククジラ加入が10年間で30%変化することが、捕獲枠の改善にどの程度資するのか、定量的な説明がなされていないため、ゆえにこのサンプル数の算定根拠は正当化されない、との専門家パネルの指摘について、日本側は、専門家パネルに応えて定量的な根拠を示すのではなく、クジラの加入の変化が捕獲枠の改善に資することは疑いがなく、また他の地域漁業管理機関で同様のデータを用いているとし、専門家パネルが求めているような詳細な説明をする必要はないとの反論を行った(19)。専門家パネルの勧告の受け入れが拒否されたと言える。
 専門家パネルはイワシクジラについても、このクジラを140頭捕獲採集することでどの程度の捕獲枠の精緻化が図られるのか、数値としての具体的な論証がなされていないとして、この頭数の捕獲が必要であることの論証に失敗しているとの判断を下している。日本側が提出した最終的な調査計画では捕獲頭数は134頭と6頭を減じているものの、その算定根拠を示した説明書(20)も、当初案と概ね変わるものではなく、ここでも専門家パネル勧告の受け入れを事実上拒否するかたちとなっている。
 先述の通り、今回の新北太平洋調査捕鯨では、沿岸については、30カイリまでは直線状のあらかじめ定められた航路を走るが、これを超えて航行してもなお予定の頭数のクジラを捕獲することができなかった場合、あとは自由に動き回ってクジラを捕まえて構わない等とされており、これについて専門家パネルは「これではサンプルの代表性が保てない」と批判している。これに対して日本側は、自分たちが調査で得ようとしているのは統計学的な捕獲時の年齢解析のために必要な年齢データであるが、これについてはランダムサンプリングは必要がないと反論し(21)、調査計画の変更はなされなかった。

4. 科学委員会での議論と結論

 以上のように、日本側は専門家パネルの勧告の最も基本的部分について、事実上受け入れを拒否したと言える。
 これでは、各国の科学者からの批判の反発を受けないはずがない。事実、2017年5月に開催されたIWC科学委員会でも、多くの科学者からNEPRE-NPに対する批判が加えられた。計17カ国(22)とIUCNの科学者は連名で、NEPREP-NPと前年より実施されている南極海での調査捕鯨NEWREP-Aはともにサンプリングのデザインやサンプル数について十分な正当化が行われておらず、なぜ追加の年齢データが鯨類の保全管理に有用であるのかについても説明に失敗していると指摘するとともに、NEWREP-NPの現行の捕獲予定頭数では、ミンククジラの日本海系群(Jストック)に対する悪影響を否定できない、と捕獲を伴う調査の停止を要求した(23)。
 これに対して日本及びその他一部の科学者は、科学委員会での調査捕鯨の是非の検討に関して批判側が要求するまでのレベルの正当化を行う必要なく、調査の実施は正当化されたと主張した(24)。
最終的に科学委員会報告書では上記の両論が併記される結果となった。専門家パネルでは調査計画の提案国科学者は調査計画に対する評価には参加できない仕組みになっている一方、科学委員会ではそうなっておらず、また多数決により結論を決定する仕組みでもないため、日本があくまで「調査計画の妥当性は立証された」と主張し続ければ両論併記となってしまうためである。
 他方注目すべきこととして指摘されるべきは、同委員会報告書には以下の文章が盛り込まれた点である。
   
The Committee endorses the recommendations of the Panel, recognizing that it was based on the information available at the time, although the proponents stated that they did not agree with all the recommendations. The proponents also stated that they had provided substantial new information at this meeting in responding to the Panel’s report that in their view responded adequately to its recommendations(25).(筆者強調)
 

 「調査計画提案者側は専門家パネルの結論の全てに合意しているわけではない。また、提案者側は、パネル報告に応えるかたちで相当程度の新規の情報を本委員会会合に提出し、パネル勧告に十分回答したとの主張を行っている」としつつも、「委員会全体としてはパネルの勧告を承認(endorse)する」との一文が盛り込まれたのである。
 先述したとおり、専門家パネルはNEPREP-NPが現段階では致死的調査を行う必要性やサンプル数の妥当性を立証できていないと評価するとともに、致死的サンプリングを伴う部分については同パネル報告書で同定した点につき追加的作業を行い、これがレビューされるまで、実施されるべきでないとの勧告を行っている。したがって「専門家パネルの勧告を科学委員会は承認した」との一文は、今後の調査捕鯨を巡る国際的議論で極めて重要な意味を有する可能性がある。事実、米国海洋大気庁に所属する鯨類研究者のフィリップ・クラブハムは科学誌『Nature』の「Correspondence」欄に寄稿した「日本、再び(調査)捕鯨のレビューを無視」と題する短報で「専門家パネルは更なる検討が行われるまで開始されるべきでないと勧告し、IWC科学委は専門家パネルの勧告を承認(endorse)した」と指摘している(26)。
 
5. 国内・国際社会の反応と今後の展望

 IWC科学委員会終了後、水産庁は6月7日に会見を開き、「捕鯨に強硬に反対する学者からの反論があったものの、一定の理解は得られた」としてNEWREP-NPの実行を決定したと発表(27)、11日より北海道・網走沿岸域で、14日から沖合海域での調査捕鯨が開始された。
 これに対してジョシュ・フライデンバーグ・オーストラリア環境相は7月20日声明を発表し、日本の北太平洋の調査捕鯨の一方的実施に対して「深く失望する」とし、「日本は2014年の国際司法裁判所の決定を無視していることがより明白なものとなりつつある」と非難した(28)。ニュージーランドのジェリー・ブラウンリー外相も翌21日、北太平洋での調査捕鯨実施は「国際捕鯨員会、同科学委員会、及び専門家パネルの勧告に背くものだ」とし「極めて失望している」との声明を発表した(29)。
 さらに7月27日、EUは声明を発表、専門家パネルの勧告事項が実施されレビューされるまで致死的調査を行うべきでないとの勧告を行っていることを指摘し、また同パネルではミンククジラ日本海系群がNEPREP-NPの下では20%減少する可能性があると指摘されていることに強い懸念を表明するとともに、こうした専門家パネルの勧告はIWC科学委員会でも承認(endorse)されているとし、日本に対して北太平洋で調査捕鯨の再考を求めている。
 確かに国際捕鯨取締条約では第8条で、科学調査を目的とする場合、条約の締約国は捕獲特別許可を発給することができると定めており、日本はこの条文を援用し調査捕鯨を行ってきた。しかしながら、国際司法裁判所は南極海調査捕鯨を巡る判決において、「特別許可にもとづく鯨の捕獲、殺害及び処理が科学的研究を目的としたものか否かは、(特別許可を発給した)当該締約国の認識にのみ委ねることはできない(30)」とし、科学目的か否かは調査計画案と実際に行われた調査の種々の要素が、調査計画で謳われている目的に照らして合理的か否かにより客観的に判断されると判示している。日本もこの判決を受け入れており、IWCも科学委員会に対し、現在進行中の調査捕鯨及び新たな調査捕鯨計画が捕鯨判決に判示された基準に適合しているかどうか評価を行い、IWCに助言を行う指示するとともに、IWCで科学委員会からの評価と助言に基づき調査捕鯨に関する審議を行うまで調査捕獲許可発給を行わないよう要請する決議を採択している(決議2014-5)。
 2016年のIWCではこれに加えて、科学委員会からの調査捕鯨計画に関する評価と助言をまとめ、IWCに提出することを主たる役割とする常設作業部会を設置する決議が採択されている(決議2016-2)。先に触れたように、科学委員会では調査捕鯨を実施しようとする国が審議に加わるため、両論併記にならざるを得ないという欠陥を有している。作業部会はこれを補うため、この作業部会で検討される調査捕鯨を行おうとする国はオブザーバーとしては参加できるが、作業部会のメンバーとはなることはできない構成となっている。
 日本は上記の決議にいずれも反対票を投じ、決議には拘束されない旨表明し、上記2決議に基づく初めての評価が行われる2018年のIWC隔年会合を待つことなくNEWREP-NPを実施している。しかしながら国際司法裁判所判決を踏まえると、上記決議に基づく調査捕獲許可に対するIWCでの判断が国際的意義を持つことは避けられないと考えられる。とりわけ、もし他国が再び日本を国際裁判で提訴した場合、重要な参照軸となるであろう。その意味からも、2018年にブラジルで開催予定IWCでの審議の結果が注目される。

(1) IWC, “Report of the Expert Panel Workshop on the Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Programme in the western Pacific (NEWREP-NP),” SC/67A/REP/01 (2017), p. 44.
(2) IWC, “Report of the Scientific Committee,” SC/67A/Rep01 (2017)rev1, June 7, 2017, p. 110.
(3) 日本国政府「第二期北西太平洋鯨類捕獲調査計画(JARPNII)(仮訳)」、2002年、4~5頁。http://www.icrwhale.org/pdf/SC54O2Japane.pdf
(4) IWC, “Report of the Expert Panel of the final review on the western North Pacific Japanese Special Permit program (JARPN II), 22-26 February 2016, Tokyo, Japan,” SC/66b/Rep06, 2016, p. 34.
(5) Ibid., p. 35.
(6) Ibid.
(7) Government of Japan, “Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific (NEWREP-NP).”
(8) 水産経済新聞2016年11月11日付。
(9) Government of Japan, “Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific (NEWREP-NP),” pp. 81-82.
(10) IWC, “Report of the Expert Panel Workshop on the Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Programme in the western Pacific (NEWREP-NP),” SC/67A/REP/01 (2017), p. 29.
(11) Government of Japan, “Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific (NEWREP-NP),” p. 18.
(12) Ibid, p. 33.
(13) IWC, “Report of the Expert Panel Workshop on the Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Programme in the western Pacific (NEWREP-NP),” SC/67A/REP/01 (2017), p. 31.
(14) Ibid., p. 15.
(15) Ibid., p. 35.
(16) Ibid., p. 15.
(17) Ibid., p. 44.
(18) Government of Japan, “Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific (NEWREP-NP),” p. 114.
(19) Government of Japan, “Proponents preliminary response to the Report of the Expert Panel to review the proposal for NEWREP-NP),” SC/67A/SCSP/01, p. 12.
(20) Government of Japan, “Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the western North Pacific (NEWREP-NP),” Annex 16, pp. 165-168.
(21) IWC, “Report of the Expert Panel Workshop on the Proposed Research Plan for New Scientific Whale Research Programme in the western Pacific (NEWREP-NP),” SC/67A/REP/01 (2017), p. 70.
(22) スペイン、ブラジル、コスタリカ、米国、ドイツ、ルクセンブルク、豪州、コロンビア、アルゼンチン、クロアチア、イタリア、英国、ニュージーランド、フランス、ベルギー、オランダ、ポルトガル。
(23) IWC, “Report of the Scientific Committee, Annex P: Statements Related to Item 19. Special Permits,” SC/67A/Rep01 (2017), p. 18.
(24) 科学委員会に出席した諸貫秀樹漁業交渉官によると、「日本を擁護したのはアイスランド、ノルウェー、セントルシア」であったとしている。『水産タイムス』2017年6月12日。
(25) IWC, “Report of the Scientific Committee,” SC/67A/Rep01 (2017)rev1, June 7, 2017, p. 110.括弧内は筆者による追加。
(26) Phillip J. Clapham, “Whaling permits: Japan disregards whaling review again,” Nature, Vol. 547 (July 6, 2017), p. 32.
(27) 諸貫秀樹水産庁漁業交渉官の発言。水産経済新聞2017年6月8日付。
(28) Department of the Environment and Energy, “Australia strongly opposes Japanese whaling plans,” July 20, 2017, http://www.environment.gov.au/minister/frydenberg/media-releases/mr20170720.html.
(29) New Zealand Herald, July 21, 2017.
(30) Whaling in the Antarctic (Australia v. Japan: New Zealand intervening), p. 28, para. 61.


https://www.dropbox.com/s/9d2p7vofnk8irss/%E6%96%B0%E5%8C%97%E8%A5%BF%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A7%91%E5%AD%A6%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E8%A8%88%E7%94%BB%28NEREP-NP%29%E3%83%BBIWC%E7%A7%91%E5%AD%A6%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC.pdf?dl=0
【真田康弘「新北西太平洋鯨類科学調査計画(NEREP-NP)・IWC科学委員会レビュー」『IKA-NET New』第68号(2017)、5 ~12頁】

nice!(0)  コメント(0) 

水産庁の天下り・水産土木編 [水産行政]

 以前拙ブログでも触れたのですが、2017年度の水産関係予算で最も多い費目は、公共事業で、718億円・全体の約40%を占めます。漁港の整備などです。つまり、水産関係予算では魚や海に対して使う予算ではなく、陸地の土木工事系の予算が最も多いということになります。

2017水産関係予算①.jpg

http://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2017-05-12
【拙ブログ「2017年度水産関係予算」】

 たまたま今日(2017年10月25日)の水産紙『みなと新聞』を見ていたら、全国漁港漁場協会なる団体が主催する『全国漁港漁場大会』が31日に開催されるとの記事がでており、水産庁の担当官の岡貞行漁港漁場整備部長と業界団体代表のインタビューが掲載され、漁港漁場整備部長は「ハード面での予算確保が重要」と来年度もさらに漁港整備への予算を確保・増額への意気込みを力強く語っておられます。

http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/73872
【みなと新聞2017年10月25日付「31日、岩手で全国漁港漁場大会」】

 その記事の下に業界団体の広告記事がででいました。それが以下のものです。

20171025_31日、岩手で全国漁港漁場大会  業界団体広告 _みなと.jpg 

 ここに掲載されている業界団体代表の皆さんの過去の経歴は以下の通りとなります。

白須敏朗・大日本水産会会長=元水産庁長官・農林水産事務次官

宇賀神義宣・水産土木建設技術センター理事長=元水産庁漁港漁場整備部長

影山智将・漁港漁場漁村総合研究所理事長=元水産庁漁港漁場整備部長

長野章・全日本漁港建設協会会長=元水産庁漁港漁場整備部長

津端英樹・海洋水産システム協会会長=元水産庁漁政部漁業保険課長

橋本牧・全国漁港漁場協会会長(漁港漁場新技術研究会会長・全国漁港・漁村振興漁業協同組合連合会代表理事会長)=元水産庁漁港漁場整備部長


 全て水産庁OB、とりわけ漁港漁場整備部長が多いことがわかります。

http://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2017-05-11
【拙ブログ「水産庁の天下り(2013~2015年度分)」。宇賀神義宣さん、橋本牧さんの経歴について記述があります。】
http://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/g_merumaga/sub85_050906.html
【水産庁HP。影山智将さんが2005年9月の段階で漁港漁場整備部長であることがわかります。】
http://ci.nii.ac.jp/naid/40005698132
【全国漁港協会発行『漁港』書誌。2003年発行第45巻1号に「新春対談--長野章(漁港漁場整備部長)・坂井淳((社)全国漁港協会会長) 」というものがあります。】


 宇賀神義宣・元水産庁漁港漁場整備部長が理事長を務める水産土木建設技術センターの常勤役員のうち2名は以下の通りとなっています。
丹羽行・水産土木建設技術センター専務理事=元水産庁資源管理部国際課国際水産情報分析官(九州漁業調整事務所長)

荒川敏久・水産土木建設技術センター常務理事=元長崎県水産部長


 影山智将・元水産庁漁港漁場整備部長が理事長を務める漁港漁場漁村総合研究所の役員名簿で常勤役員を調べてみたところ、以下のようになりました。
長元雅寛・漁港漁場漁村総合研究所 常務理事=元水産庁船舶管理室長

 常勤役員は影山智将さんと長元雅寛のみですので、全て水産庁OBによって占められていることになります。

 長野章・元水産庁漁港漁場整備部長が会長を務める全日本漁港建設協会の役員名簿で常勤役員を調べたところ、以下のようになりました。
森田正博・全日本漁港建設協会事務局長(常務理事)=元水産庁漁政部漁政課付(北海道漁業調整事務所長)

 常勤役員は長野章さんと森田正博さんのみですので、全て水産庁OBによって占められていることになります。

https://web.gogo.jp/library/58d8822a490358483545e577/58eb496c700f4ab75591c935.pdf
【水産土木建設技術センター・役員名簿】
http://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2017-05-11
【拙ブログ。丹羽行・水産土木建設技術センター専務理事が水産庁資源管理部国際課国際水産情報分析官であった旨記しています。】
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/20510
【『みなと新聞』2013年1月14日配信「『年頭所感』荒川敏久・長崎県水産部長 」】
http://www.jific.or.jp/about/officer.html
【漁港漁場漁村総合研究所役員名簿】
http://www.maff.go.jp/j/org/who/meibo/140121.html
【農林水産省HP。農林水産省幹部職員名簿 平成26年1月21日現在】
http://www.zengyoken.jp/about/director.html
【全日本漁港建設協会役員名簿】
http://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2017-05-11
【拙ブログ。森田正博・全日本漁港建設協会事務局長が水産庁漁政部漁政課付(北海道漁業調整事務所長)であった旨記しています。】
 

 役員報酬についても調べてみました。

 水産土木建設技術センターについては、個々の役員の報酬はわかりませんでしたが、平成27(西暦2015)年度の事業計画では、役員報酬として合計3420万円が計上されていました。

 漁港漁場協会会長(橋本牧元水産庁漁港漁場整備部長)の報酬は、年間1200万円以内とのことです。

 海洋水産システム協会(津端英樹・元水産庁漁政部漁業保険課長)の常勤役員の給与は、合計年間2100万円以内でした。なかなかの好待遇です。


http://www.fidec.or.jp/library/58d8822a490358483545e577/58eb496741ccd2d554bf9ee5.pdf
【水産土木建設技術センター平成27 年度事業計画】
http://www.systemkyokai.or.jp/k-index.htm
【海洋水産システム協会・常勤役員報酬規程。同規定第3条に「常勤役員の報酬額は、合計21,000,000円以内とする」と規定されている。】
http://www.gyokou.or.jp/about/pdf/yakuin_housyu.pdf
【公益社団法人全国漁港漁場協会 役員の報酬等並びに費用に関する規程。別表で、会長は1200万円以内、専務理事は1080万円以内、常務理事は960万円以内とされています。】
nice!(2)  コメント(0) 
前の10件 | -