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「海産種とワシントン条約:第69回ワシントン条約常設委員会報告」(『JWCS通信』寄稿) [国際会議]

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【ワシントン条約第69回常設委員会(2017年11~12月・於ジュネーブ)の模様(筆者撮影)】

 昨2017年12月にワシントン条約の下部委員会である「常設委員会」では、海産種関連としては鯨類やウナギの取引、FAO(国連食糧農業機関)との関係の問題など、日本にとっても関心が深い議題が扱われましたが、これに関して先日『野生生物保全論研究会(JWCS)』のニューズレター『JWCS通信』より発行された拙稿にて会議報告を書いてみました。ご参考までに。なお拙稿の元原稿については以下のJWCSさんのサイトから見ることもできます。

https://www.jwcs.org/work/study/
【JWCS「論考」:会報に掲載した文書】

=============================================
海産種とワシントン条約:第69回ワシントン条約常設委員会報告

真田康弘(早稲田大学 研究院客員准教授)


(JWCS『JWCS通信』第83号(2018年)、6~13頁)

 
 2017年11月27日(月)ら12月1日(金)までの5日間、スイス・ジュネーブでワシントン条約(「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora: CITES)」)の下部機関である常設委員会(Standing Committee)の第69回会合が開催され、筆者もオブザーバーとして参加した。
 ここで象牙問題などとともに議題の目玉の一つとされたのが、日本が北太平洋で実施している調査捕鯨によるイワシクジラの捕獲であり、日本はこの問題で各国からの厳しい批判に晒された。日本はこの他海産種についてFAOとの連携を緊密化させることを狙った提案を上程、常設委員会でも広く議論が行われ、ウナギについても短時間ではあるが審議が行われた。本稿ではこうした海産種に関する常設委員会の議論及び結論を紹介するとともに、これらに関する今後の展望を述べるものとしたい(1)。

1. ワシントン条約と海産種

 ワシントン条約は本文及び付属書Ⅰ、付属書Ⅱなどにより構成され、付属書Ⅰ掲載種は「主として商業目的(primarily commercial purposes)」の輸出入及び「海からの持ち込み(introduction from the sea)」が禁止される(第三条)(「海からの持ち込み」の定義については後述)。学術・研究目的等の「主として商業目的」ではない輸出入及び海からの持ち込みを行う場合、輸出入の場合は輸出国の輸出許可と輸入国の輸入許可、「海からの持ち込み」の場合は持ち込まれる国からの許可が必要である。
 付属書Ⅱに掲載された種については、輸出入に際しては輸出国の許可、「海からの持ち込み」に関しては持ち込まれる国の許可が必要となる。ワシントン条約では、締約国は「管理当局(Management Authority)」及び「科学当局(Scientific Authority)」を指定することが義務付けられているが(第九条一項)、輸出(ないし海からの持ち込み)の許可に際しては、輸出国の科学当局が当該輸出(あるいは海からの持ち込み)が当該種の存続を脅かすこととならない(not be detrimental to the survival of that species)と助言を行う必要がある(第四条)。この助言は「無害証明(non-detriment finding: NDF)」と呼ばれる。
 付属書Ⅰに掲載される動植物は、絶滅のおそれがあり取引(2)による影響を実際に受けている、あるいは受ける可能性があるものが掲載される(第二条一項)。付属書Ⅱには、(a)現在必ずしも絶滅のおそれはないが、その存続を脅かすこととなる利用がなされないようにするためにその標本の取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種、あるいは(b)上記(a)の種以外であって、(a)の種の取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種、が掲載される(条約第二条二項)。具体的な掲載基準は締約国会議で採択された決議9.24に、より詳細に定められている。
 ワシントン条約に言う「海からの持ち込み」とは、いずれの国の管轄の下にない海洋環境において捕獲され又は採取された種をいずれかの国へ輸送することを指す(第一条(e))。但し、何が「いずれの国の管轄の下にない海洋環境」かが不明確であったため、この後の締約国会議で採択された決議14.6により、国連海洋法条約の諸規定に即し「一国の主権もしくは主権的権利の下におかれる領域を越えた海域を意味する」と定義された(3)。国連海洋法条約で「一国の主権もしくは主権的権利の下におかれる領域」とは領海、排他的経済水域、及び大陸棚であるため、魚やクジラなどについては領海及び排他的経済水域を超えた公海での漁獲・捕獲が、サンゴや貝など海底で静止しているか絶えず海底に接触していなければ動くことのできない生物については、領海、公海、排他的経済水域、及び大陸棚(4)を超えた海底での採取が、「海からの持ち込み」に当たることになる。
 2017年1月現在、魚類に関しては、ノコギリエイ、ウミチョウザメ、ニシチョウザメ、アジアアロワナ、トトアバ、シーラカンスなど16種が付属書Ⅰに掲載されている。付属書Ⅱには、ヨーロッパウナギ、ナポレオンフィッシュ(メガネモチノウオ)、シュモクザメ科3種、オナガザメ、ホホジロザメ、ジンベイザメ、付属書Ⅰ掲載種以外のチョウザメ、マンタ(オニイトマキエイ)、タツノオトシゴなど107種の魚類が掲載されている(5)。鯨類については、ホッキョククジラ、セミクジラ、コセミクジラ、ミンククジラ(西グリーンランド個体群を除く)、ミナミミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、シロナガスクジラ、ツノシマクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、コククジラ、マッコウクジラなどが付属書Ⅰに掲載され、付属書Ⅰに掲載されていないクジラ目全種が付属書Ⅱに掲載されている。
 日本は附属書I掲載された鯨類のうち10種(ミンククジラ、ミナミミンククジラ、イワシクジラの一部、ニタリクジラ、ツノシマクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラ、ツチクジラ及びカワゴンドウ、オーストラリアカワゴンドウ)に、付属書Ⅱに掲載されたもののうち11種(ヨゴレ、アカシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、シロシュモクザメ、ウバザメ、ホホジロザメ、ニシネズミザメ、ジンベイザメ、タツノオトシゴ属全種、クロトガリザメ、オナガザメ類)について留保を付しており(6)、パラオ(32種)、アイスランド(22種)についで留保数が多い(7)。日本の留保種は全て海産種であることも特徴的である。
 日本は上記留保種についてはワシントン条約の非締約国として扱われ(十五条三項)、したがって例えば締約国で同じ種について留保を付している国あるいは非加盟国と条約の規定にかかわらず取引を行うことができる。日本と同様ナガスクジラについて留保を付しているアイスランドから当該種鯨肉の輸入ができるのはこのためである。但し、留保を付していない締約国とはこうした条約の規定にかかわらない取引を行うことはできず(8)、したがって留保を付しているが条約の規定を守っている国もある。例えば日本は付属書に掲載されたサメ10種に対して留保を付しているが、2014 年8月に制定した日本の水棲動物種に対するNDF ガイドラインに従って輸出許可を発給するとしている(9)。

2. イワシクジラの調査捕獲とワシントン条約での「海からの持ち込み」

 現在日本は南極海でミナミミンククジラを、北太平洋ではミンククジラとニタリクジラを調査名目で捕獲している。捕鯨の国際的管理を規律する国際捕鯨取締条約第8条で科学調査を目的としたものについて締約国は条約上の規制にかかわらず捕獲許可を発給できるとの規定があることから、日本はこれを拠り所として調査捕鯨を実施している。
 ワシントン条約では上記のクジラのいずれについても付属書Ⅰに掲載されている。これに対して日本はミナミミンククジラ及びミンククジラについてはその全てについて留保を付しているため、「海からの持ち込み」規定にかかわらず公海上で捕獲したこれらクジラを日本に陸揚げすることができる。他方イワシクジラについては、北太平洋の個体群並びに東経0度から東経70度及び赤道から南極大陸に囲まれる範囲の個体群については留保を付しておらず、これについてはワシントン条約における規制に従う義務がある。
 ワシントン条約では付属書Ⅰ掲載種に関して「主として商業目的」ではない「海からの持ち込み」を行う場合、持ち込みがなされる国の「管理当局」から事前に証明書の発給を受けている必要がある。この証明書は、当該持ち込みがなされる国の「科学当局」が、当該持ち込みがその種の存続を脅かすこととならないと助言し、かつ、当該持ち込みがなされる国の「管理当局」が、捕獲されたものが「主として商業目的」のために使用されるものでないと認めた場合にのみ発給される(第三条五項)。日本はクジラの海からの持ち込み関して水産庁を「管理当局」及び「科学当局」に指定しているため、調査捕鯨に関して国際捕鯨取締条約の下の許可を発給し捕鯨を推進している水産庁自身がワシントン条約の証明書も発給することができることになる。
 では締約国は自らの「これは主として商業目的ではない」との判断のみに基づいて「海からの持ち込み」を許可する証明書を発給できるかというと、必ずしもそうではない。というのも、ワシントン条約は1985年に開催された締約国会議で採択(2010年に改正)された決議5.10(10)により、条約第三条に規定する「主として商業目的」の語の解釈に縛りをかけているからである。
同決議の「一般原則」第1項から3項までは以下のように規定している。

1. 付属書Ⅰ掲載種の取引はとりわけ厳格な規制の下に置き、例外的状況下においてのみ許可されるものでなければならない。
2. 一般的に「商業的」活動とは、その目的が(現金であるか否かにかかわらず)経済的利益を得るためのものであり、再販売、交換、役務の提供、もしくはその他の形態の他経済的利用もしくは経済的利益のために行われるものを言う。
3. 「商業目的」の語は、完全に「非商業目的」とは言えないいかなる取引も「商業的」と見做されるよう、輸入国により可能な限り広範に定義されるべきである。この原則を「主として商業目的」の語に当てはめた場合、非商業的側面が明らかに支配的である(clearly predominate)とは言えない全ての利用は主として商業的性質を有すると見做されるべきであり、付属書I掲載種の輸入は許可されるべきではない。付属書I掲載種の使用目的が明らかに非商業的であるとの挙証責任はかような種の輸入を求める個人もしくは団体に存する。

 調査捕鯨で捕獲されたクジラは鯨肉として国内で販売されているが、「非商業的側面が明らかに支配的である(clearly predominate)とは言えない全ての利用は主として商業的性質を有すると見做されるべきであり、付属書I掲載種の輸入は許可されるべきではない」との上記決議から鑑みると、こうした鯨肉販売は「主として商業目的」と捉えられ得ることになる。そうだとした場合、イワシクジラの公海での捕獲は条約の「海からの持ち込み」規定に違反する。この問題はワシントン条約の初代事務局長を務めたピーター・サンドが2008年に著した論文によって既に指摘されていたが(11)、今回の常設委員会でついに審議されることになったのである。

3. イワシクジラの「海からの持ち込み」に関する事務局の動きと常設委での議論

 ワシントン条約では、付属書Ⅰまたは付属書Ⅱに掲げる種が取引によって望ましくない影響を受けていると認められる場合、またはこの条約が効果的に実施されていないと認められる場合、条約事務局は当該情報を関係締約国の管理当局に通告しなければならないと定めている(第十三条一項)。事務局はこれに関する予備的な協議を行うとして、2016年9月12日に1度目の情報提供要請を行い、これに対して日本側は9月22日付のEメールで回答を行っている。このメールで日本側は①2016年に90頭のイワシクジラを捕獲したこと、②管理当局として水産庁が証明書発給を行ったこと、③イワシクジラの捕獲は科学調査目的であるので「主として商業目的」には該当しないこと、④国際捕鯨取締条約では第八条二項で「捕獲したクジラは可能な限り鯨肉として利用しなければならない」から鯨肉を利用しているのであり、同条約同条一項での科学調査目的の捕獲を認める条項に基づき実施しているのだから、商業目的には当たらないこと、を主張した(12)。
 しかし、国際捕鯨取締条約の規定に仮に基づいていたとしても、それはワシントン条約での規定に合致することを保証することを意味するものではない。そこで事務局は2017年9月22日付で、今度は正式な事務局発出文書の形式で、同年の日本の134頭のイワシクジラ捕獲に関し、捕獲されたこれらのクジラの肉がどのように利用されるのか、その利用によって生じる収益金は何に充当されるのか等について、より詳細な情報を求めたいとの要請を行った(13)。
 これに関する日本側の返答は、会議1日目の11月27日(月)の午後に本件の審議された際、事務局より口頭で紹介された(14)。まず事務局はこれまでの日本とのやり取りなどの経緯を紹介した後、日本からは10月20日に回答があったとしながらも、その内容は「簡素(succinct)」で「最小限な(minimally)」なものでしかなかったとし、特にどのようにして日本の当局は主として商業的目的でないと判断したのか等についてさらなる情報提供の要請を行った、と報告した。加えて、①日本に対して事務局が調査団を派遣して本件を調査すること、②その結果と勧告を次回の常設委員会で報告すること、を常設委員会で決定したい、と事務局作成の決定案を紹介した。
 この後まず本件に関して最初に発言したニジェールは「日本は情報提供に関する期限を守らなかった。日本と事務局との情報交換は2016年に遡るにもかかわらず、日本からクジラの使用と収入等々に関する情報が提供されていない」と批判するとともに、ワシントン条約の履行手続に基づく正式な警告(official warning)を日本に対して与えるべきだ、と発言した。続いて発言したニュージーランドは「事務局が本件について調査する必要がある。我々が知りたいのは主として商業的目的か否かだ」とし、調査団派遣提案に関して支持を表明した。グアテマラも、ニジェールとニュージーランドの意見を支持する発言を行った。
 これら発言に対して次に発言した日本の水産庁の担当者は「ニジェールは日本が情報提供に関する期限を守らなかったと言っているが、それは間違いだ。日本は期限通りに情報を提供しているではないか。日本は事務局からの要望に真摯に答え、可能な限り早く情報の提供を行ってきた」と強い調子で反駁するとともに、現在実施されている北太平洋での調査捕鯨について時間を割いて説明した後、これが国際捕鯨取締条約八条の規定に基づいていること、同条により鯨肉はむしろ可能な限り利用しなければならないこと、同条約に依拠した調査捕鯨であるので「主として商業的目的」にはあたらないのは明白だ、と約8分にわたる発言の中で主張した。しかし先に指摘したとおり、国際捕鯨取締条約の規定を援用したところで、それはワシントン条約の規定に合致することを立証するものとはならない。
 日本側の感情がこもってはいるが内容の乏しい発言は、この後に続く各国代表からの更に手厳しい批判を誘発することとなった。セネガルは、「イワシクジラは付属書Iに掲載されており、最大限の保護が必要であるにもかかわらず、日本自身が鯨肉販売を促進させている」と主張するとともに、「これはワシントン条約違反であり、日本に対して直ちにイワシクジラの海からの持ち込みを止めるよう要請する」との一歩踏み込んだ発言を行った。オーストラリアとメキシコからも調査団派遣に関する事務局案への支持が表明された。アルゼンチンは「ワシントン条約では義務を守らない国に対して常設委が取る措置が決議により定められており、そのなかには取引停止勧告も含まれる」と前置きした上で、「イワシクジラは2002年からずっと捕獲されており、これは取引停止勧告に値する」と批判した。ケニアも「今回の常設委で何らかのアクションを取るべきだ。日本のイワシクジラの海からの持ち込みは、条約第三条違反だ」と主張した。米国も「オーストラリアやその他の国の意見に賛成だ」とし、「得られた情報から鑑みて、日本のイワシクジラ捕獲は条約第三条違反である」と明言した。EUは「日本からの情報の提供が限定的だ」と述べた後、さらに一歩踏み込み、「常設委は事務局に対して日本が本常設委閉会後60日以内に必要な情報を求めるべきであり、このデッドラインまでに日本が情報を提供しない場合、あるいは情報が不十分である場合、郵便投票を通じてイワシクジラに対する取引停止勧告を実施すべきだ」と発言した。政府代表としては唯一日本に対して親和的な発言をしたアンティグア・バーブーダも「おそらくここで必要なのは、ワシントン条約の義務と国際捕鯨取締条約の義務との調和(reconciliation)である。ワシントン条約の義務を果たそうとすれば、日本は国際捕鯨取締条約の義務を破ることになってしまう」と述べ、日本のイワシクジラの捕獲がワシントン条約上合法であるとの立場を取らなかった。この後発言したWWF、JWCSなど14のNGO(15)を代表して発言したAnimal Welfare Instituteは、日本は政府自ら既存販路の拡大や新規販路の開拓をつうじて販売収入増加を目指しているなどとし、これが「主として商業目的」に該当するのは明らかであり、本常設委において条約違反と認定し必要な措置を取るべきだとの発言を行った。唯一日本を擁護したのは、この後に発言したIWMC(国際野生生物管理連盟)のラポワント代表にとどまった。
 各国からの辛辣な批判に対し日本は再び発言を求め、「日本は常にワシントン条約の規定に従って行動してきた。情報が限定的となぜEUが言うのか理解し難く、この批判は完全に根拠がない(baseless)」と激しい口調で反発するとともに、事務局からの調査団派遣提案についても、「条約第十三条には調査団派遣に関する規定は存在せず、当該調査団派遣の必要はない」と反対姿勢を明確にした。
 今回の常設委は議題が極めて多数にのぼるため、会議冒頭から議長(16)が繰り返し「発言はできるだけ内容を絞って簡潔に」と各国に念を押していたにもかかわらず、日本からかなり長くかつ激しい口調の発言が繰り返されたことから、ここで議長が「発言は常設委での決定案に関するものに限定して欲しい」と各国に対し発言に対する自制を求めるとともに、「議場の多数意見では調査団が必要だと言っている」と前置きし、「『常設委が日本に対して調査団を招請するよう要請する』との決定を行うことでまとめたい」と発言した。
 これ対してニジェールは再び発言を求め「ただ単に調査するだけでは十分ではない。日本に対して条約の文言を遵守するよう警告する必要がある」と繰り返すとともに、EUやケニアの踏み込んだ提案に同調する姿勢が示された。そこで議長が「種々の意見があるのでその中間をとり、やはり日本が調査団を招請するし、また日本からの情報を得た後に次回の常設委で判断するというかたちにしたい」との提案を再度行い、カナダとオセアニア地域代表から議長提案に対する支持が表明された。そこで議長が「常設委メンバーから発言要請がないので、上記で合意されたと判断する」とまとめ、日本がなおも発言を求めて食い下がろうとしたところ、「日本が発言を求めて手を挙げているが、時間がないのでこれで結論とする」と押し切ろうとした。
 これに対して日本はさらに反発、「議事進行異議あり(Point of order)」と大声を上げて発言を求めた。会議でpoint of orderが発議された場合、議長は発議者に発言を許さなければならない。したがって議長が直ちに日本を指名すると、日本は「日本が調査団を招請するとのことだが、これに関して我が国から財政的支出をする必要があるのか。もしそうであるなら我が国の財政当局と話をする必要がある」と抵抗し、「調査団派遣の法的根拠を提示すべきだ」と議長に要求した。これに対し議長は「調査団派遣の費用は事務局側が持つ」と述べるとともに「調査団派遣といった手続きは条約第十三条に基づく標準的な手続き(standard practice)となっている」と日本の主張を斥け、結局投票に付されることなく調査団を派遣し次回の常設委で事務局が調査結果の報告と本件に関する勧告を行うとの議長案が採択された(17)。但しこの後EUから「これでは緊急性が失われてしまう。日本から情報を受領後、郵便投票により決定を下すべきだ」との懸念が表明されている。

4. 海産種掲載に関するワシントン条約事務局とFAOの関係

 ワシントン条約では、海産種に関する改正案を締約国から受領した場合、事務局は当該海産種に関連を有する活動を行っている国際機関と、当該国際機関が提供することができる科学的な資料の入手及び当該機関体の実施している保存措置との調整の確保を特に目的として協議を行わなければならないと定めるとともに、事務局は、当該国際機関の表明した見解及び提供した資料を事務局の見解及び勧告とともにできる限り速やかに締約国に通告しなければならないと規定している(第十五条二項(b))。この条項に基づき、商業的に利用されている海産種の提案については、国連食糧農業機関(FAO)が2004年に開催された第13回締約国会議以降、締約国会議開催前に専門家諮問パネル(Expert Advisory Panel)を開き、提案に対する分析を行っており、この手続きはその後2006年にワシントン条約とFAOが結んだ覚書(Memorandum of Understanding: MOU)により定式化されている(18)。すなわち、ワシントン条約事務局は商業的に利用されている付属書Ⅰ及びⅡに関する全ての提案をFAOに通知し、FAOはワシントン条約の決議9.24に示されている付属書掲載基準に従い提案を評価する。FAOは評価結果をワシントン条約事務局に提示し、条約事務局は提示されたFAOの評価を事務局自身の勧告とともに締約国に通告することとなっている。
 提案に関する分析と評価はIUCN/TRAFFICも行っており、この他にもTRAFFICとSpecies Survival Network(SSN)等のNGOは提案に関する賛否を明示した各々の文書を締約国会議に際して公表・配布している。2010年、2013年及び2016年のワシントン条約締約国会議での日本の立場、FAOとIUCN/TRAFFICの提案分析、事務局・TRAFFIC・SSNの賛否の意見、及び締約国会議での表決結果については以下の表の通りである。

海産種附属書掲載提案.jpg
表:付属書掲載提案に関する各機関の評価、日本の態度、及び結果。「基準(不)適合」は当該掲載提案が付属書掲載基準を満たしている(満たしていない)」と評価したことを示す。
* 大西洋クロマグロに関するFAOの上記評価は専門家パネル多数意見。

 以上から理解されるように、日本は海産種提案については原則として全て反対であり、Animal Welfare InstituteやHumane Society International等のNGOで構成されるSSNは提案に全て賛成であるが、FAO、条約事務局、IUCN/TRAFFICは提案により相互に見解が異なっている場合が散見される。すなわち、FAOが付属書掲載基準を相対的に厳しく解釈し提案が掲載基準を満たさないと判断する場合がある一方、ワシントン条約事務局やIUCN/TRAFFICは決議9.24をFAOとは異なるかたちで解釈し、付属書掲載基準を満たすと判断する場合がある。例えばFAOは2013年のマンタ付属書Ⅱ掲載提案で情報が不足しているため判断できない、2016年のクロトガリザメ付属書Ⅱ提案では付属書掲載のための生物学的基準を満たさない評価したところ、事務局は決議9.24では第2項で種の状態に関して不確実性が存在する場合は種の保全を対し最善となるようにしなければならないという予防的アプローチが定められていることから、これら提案は予防的アプローチに即し付属書掲載が妥当と勧告している。
 近年の傾向としては、サメの付属書Ⅱ掲載が毎回提案され、提案国が増加していることが挙げられる。2016年の第17回締約国会議では、クロトガリザメについては21カ国及びEU、オナガザメについては23カ国及びEU、イトマキエイについては22カ国及びEUが提案国に名を連ねており、EUは表決に際して加盟国分の票数を有している(第二十一条五項(19))ことから、これは提案時点で既に50カ国前後の賛成票が見込まれることを意味している。これら3提案のうち2つに対し、FAOは付属書掲載基準を満たしていないとの判断を行っている。
 付属書掲載により厳しい態度を取るFAOはその意味で日本の立場にも近いと言えることから、日本は今回の常設委員会で海産種掲載提案に関してFAOのプレゼンスをより高めることを目的としたと思われる提案を行った。ここで日本は、商業的に利用される海産種の付属書掲載提案のプロセスを改善する手段として、FAOとIUCN/TRAFFICとの提案分析に関する協働、FAOとワシントン条約事務局との見解が異なった場合における相互の見解の調整のためにアドホックな協議の開催、より早期の付属書掲載提案の事務局に対する提出、等が一案として挙げられるとし、常設委員会でFAOとワシントン条約との協働関係を促進するための常設委決定案を策定し、次回締約国会議に諮るのはどうかとの提案を行った。
 一見この提案はそれほど当たり障りがないようにも見えるが、海産種掲載に対して原則ほぼ全てに反対してきた日本からの提案であることもあってか、常設委員会での各国の反応は概して冷ややかなものであった。日本が「この文書の目的は科学・技術的アドバイスの過程を改善させることにある」との趣旨説明を行った後に発言したニジェールは、「付属書掲載提案に対する賛否の判断は締約国の主権に基づくものだ。現在我々は満足のゆくメカニズムを有しており、現在の手続きを変更する必要はない」と否定的評価を下した。前回の第17回締約国会議でサメ・エイ掲載提案にいずれも共同提案国となったスリランカも「ニジェールを支持する。第17回締約国会議における付属書掲載提案に関するFAO専門家パネルの評価は誤っていたと多くの締約国が考えており、FAOの付属書掲載基準の解釈に大きな懸念を表明する」と発言し、現在の手続きを変更する必要がない、との見解を表明した。スリランカと同様第17回締約国会議での全てのサメ・エイ掲載提案に対して共同提案国となったバハマも、「FAOの基準だけが我々が参考とした基準ではない。サメ・エイ提案の共同提案国は過去例にない多さであったし、圧倒的大多数により採択されたことは、他の事項も考慮に入れたことを示している」と発言した。ボリビア、アルゼンチン、グアテマラも代表し発言したペルーも、「バハマの発言に賛成だ。FAOだけが唯一の情報源ではない。参考とすべき情報は他にもある」とした。イスラエルもスリランカ、ニジェールの意見に賛同する旨発言し、カナダ、インドからも、日本提案にあるような決定案の策定は必要がないとの意見が述べられた。チリは、「現在のワシントン条約とFAOとのMOUに基づく現在のプロセスに満足している。各国が自ら自身の決定を行う主権的権利を有していることを認識しなければならない」と発言し、ノルウェーもニュージーランド等からの意見を支持すると述べた。EUは「条約には掲載提案と協議プロセスに関する明確なタイミングが示されており、これを変更するのは非現実的である。海産種掲載提案についてFAO、ワシントン条約事務局、IUCNが意見を相互に交換することは支持するが、同時にそれぞれの機関のマンデートを尊重する必要があり、それぞれの機関が自ら評価を行うという事実を認識する必要がある」と発言するとともに「FAO専門家パネルのメンバーの指名に関して透明なメカニズムの重要性を強調する」と、FAO専門家パネルに対する不信感をのぞかせた。こうした発言に対して、日本を支持する発言を行ったのは中国とIWMCにとどまった。中国は「科学的データに欠け、付属書掲載基準が不適切な形で適用されている提案が見受けられ、FAO専門家パネルの見解が反映されていない場合がある」と述べるとともに、日本提案を支持するとの発言を行っている。
 ワシントン条約事務局長は「我々は16年にわたりFAOと強い関係を構築してきた」と述べた後、「過去2回の締約国会議の海産種の14の提案のうち1つを除いてFAO専門家パネルと条約事務局の評価は同じであった」と指摘するとともに、「唯一異なった勧告があるのは、予防的アプローチに関する解釈の相違によるものである」と説明した。さらに「多くのメンバーが言及したように、最終的な決定を下すのはワシントン条約の締約国会議である」と述べた後、「ワシントン条約事務局は条約締約国により創設されている。我々はFAOによって権限を付与されている(mandated)ではなく、締約国会議によって権限を付与されているのであり、我々はその役割を果たすものだ」と発言した。
 議長はこれら発言を総括し、常設委で決定案を策定するという日本提案には支持が得られていないが、いずれにせよFAOとの協力関係をMOUに基づき今後も継続することについては各国とも異議がないようだとし、常設委は①FAOとワシントン条約事務局がMOUの効果的な実施について協働関係を継続することを支持する、②締約国に対し、海産種の提案を検討する場合なるべく早期にワシントン条約動物委員会及び他の関連機関と協議することを奨励する、等とする旨を議事録に記録することでまとめたいと発言し、各国から了承された(20)。

5. ウナギに関する常設委の議論

 2016年の第17回締約国会議では、ヨーロッパウナギとその他のウナギに関してそれぞれコンサルタントに委託してその輸出入等に関する調査を行いことが決定されていた(21)。常設委員会に対しては、ヨーロッパウナギの違法取引に関する情報に関して検討を行い、適宜勧告を行うことが求められていたため(22)、今回の常設委ではウナギの中でも専らヨーロッパウナギが議論された。
 本件に関する討議は会議4日目の午後のセッションで行われた。審議は全体で十数分程度と短めのもので、初めに事務局のほうから現在までのところの進捗状況等に関する報告があり、外部資金が得られなかったためコンサルタントの委嘱が遅れていたが、EUから資金拠出の申し出があり、数日中に資金拠出に関するEUとの合意がまとまる予定であるとの説明があった。また、これとは別にEUから、ヨーロッパウナギの密輸に関する報告があり、主として空港で密輸が摘発されていること、仕向地は中国や香港など東アジアであること、密輸には組織犯罪が関与している場合もあること等が報告された。TRAFFICとロンドン動物園も代表し発言したIUCNからは、EUがヨーロッパウナギの輸出を禁じたことから、それを埋め合わせるため他の地域からの輸出が行われているとし、ヨーロッパウナギ以外のウナギの生息国に対しても持続的かつ合法な輸出を確保するようとのコメントがあった。常設委員会としては、ヨーロッパウナギに関するインターセッショナルな作業部会を設け、情報をレビューするとともに次回の常設委に報告を行うことが合意された(23)。

6. 今後の展望

 以上2017年11月末から開催されたワシントン条約第69回常設委員会の海産種に関する問題について振り返ってみた。以下、今後予想される展開について簡単に示してみたい。
まず日本のイワシクジラの「海からの持ち込み」についてであるが、各国から厳しい批判が寄せられたことから鑑みて、次回の常設委では日本に対して何らかの措置が行われる可能性が少なくないと考えられる。
 条約の遵守手続については決議14.3に詳細が規定されており、常設委員会はもし遵守問題が解決しなかった場合、非遵守締約国に対して、①支援の提供、②特別報告書作成の要求、③書面による注意喚起(caution)の発出による、対応要請あるいは支援の申出、④特定の実施能力強化(capacity-building)活動の勧告、⑤当該締約国の招請による、国内支援、技術評価、検証ミッションの提供、⑥非遵守状態であるとの警告(warning)の発出、等を行うことができる(24)。今回の調査団派遣は上記⑤に該当すると言え、ニジェールの発言は上記⑥に該当する。さらに締約国が遵守達成の意志を示さない場合、最も厳しい措置として、⑦ワシントン条約掲載種ののうちの特定種あるいは全ての種に対する商取引または全取引(商取引であるか否かを問わない)の停止(suspension)を勧告することができる(25)。従って日本は最も厳しい場合、この取引停止勧告を受ける可能性がある。
 たとえ取引停止勧告まではゆかなくとも、日本が否定的評価・反応を常設委で受ける可能性が高いことは今回の各国の発言からも明らかである。常設委は基本的にコンセンサスで行われるが、議長もしくは2地域以上の常設委メンバー(26)からの要請があれば単純過半数による表決により決定を行うことができる(27)。実際今回の常設委でもセンザンコウの取引について表決が行われ、中国の反対を押し切って勧告案が可決されている。
 最も厳しい措置である取引停止勧告はワシントン条約で履行確保の手段として頻繁に用いられており、2017年8月1日現在、30カ国がこの勧告を受けている。うちジブチ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、モーリタニア、ソマリアの6カ国が全てのワシントン条約掲載種の商取引の停止勧告、アフガニスタンとグレナダの2カ国が、全てのワシントン条約掲載種の取引停止勧告を受けた状態にある(28)。
 この措置はあくまで勧告にとどまり、締約国は取引停止を実施する法的義務はない。しかしワシントン条約締約国が取引停止勧告をもとに実際に取引を停止することを通じ、またこうした措置の発動あるいは継続を回避したい非遵守締約国の取り組みを通じ、この勧告は履行確保のための有効な手段として機能していると指摘されている(29)。例えば1985年から2013年にかけて43カ国に対して全てのワシントン条約掲載種商取引停止勧告がなされたが、特定の国に対して行われた取引停止勧告の事例のうちの8割以上については、非遵守国が必要な措置を行ったとして同取引停止勧告が1年以内に解除されている(30)。
 イワシクジラの取引停止勧告を受けた場合、日本は捕獲したクジラを鯨肉にして海外に販売してはいないため、実害は存在しないことになる。しかし所謂先進国で現在取引停止勧告を受けている国は存在しておらず、ただでさえ留保数が多い日本のワシントン条約におけるにおける評価を下げる結果となろう。
 日本が何ら不遵守に対する是正措置を取ろうとしない場合は、最悪の場合掲載種全ての商取引あるいは全ての取引に対する取引停止勧告もワシントン条約では可能であり、仮に全ての商取引に対する停止が勧告された場合は付属書Ⅱ掲載種の輸出入を、全ての取引に対する停止が勧告された場合は付属書Ⅱ掲載種の商業的輸出入はもとより付属書Ⅰ掲載種の動物園や水族館に対する輸出入や学術研究目的の輸出入など、主として商業的でない付属書Ⅰ掲載種の日本への輸出入を、ワシントン条約締約国が禁止することもあり得ることになる。
 次に、ワシントン条約とFAOの関係についてであるが、これについては中国を除きほとんど支持が得られたことを鑑みると、次回の常設委員会あるいは締約国会議で現在以上にFAOの関与を認めさせるような決定ないし決議等を通すことは非常に難しいのではないかと考えられる。但し、前回の締約国会議でも海産種が討議される際にFAO代表は提案毎に専門家パネルの結論を紹介し、動物委員会や常設委員会でも前回締約国会議のFAO代表であったKim Friedman氏が継続して出席し、とりわけ動物委員会での審議に積極的に参加するなど、現状の形式に基づく相互の交流や情報交換はある程度進んでいるとも考えられ、こうした新規の決議や決定を経ない形での交流の深化はあり得よう。
 しかし、そのことは近年のワシントン条約におけるサメ・エイ提案に対する歯止めとなるようには必ずしも考えられない。先述したとおり、サメ・エイの付属書掲載提案に対する共同提案国は近年増加傾向にあり、その提案国も例えば2013年の第16回締約国会議ではEUとラテンアメリカ諸国を中心としたものであった一方、2016年の第17回締約国会議ではアジア、アフリカ諸国も共同提案国に広く名を連ねている。また2013年の締約国会議で表決にかけられたサメ付属書提案の賛成率は掲載に必要な3分の2の賛成をぎりぎりで上回る程度であったところ、2016年の第17回締約国会議でのサメ・エイ提案の賛成率は8割前後と大幅に上昇している。スリランカやバハマなどが「FAOの評価だけが我々が参照する評価ではない」と発言したとおり、サメ・エイ提案については条約やIUCNのみならず、これを推進しているPew Charitable Trustsも科学分析と評価を行い、これが提案国等に対する科学的インプットとなっているとも考えられる。かつて日本とともにサメ・エイ提案に反対していた韓国も17回締約国会議では賛成あるいは棄権に回ったようであり(31)、このまま海産種提案に対して否定的な態度を取り続ければ、以前に比べて抑制的である中国の態度とも併せ、日本がワシントン条約の「悪役」的役割を一手に引き受ける懸念なしとしない。
 最後にウナギについてであるが、コンサルタントに委嘱した報告の完成した場合、それに基づく議論が2018年7月に開催予定の動物委員会で行われ、そこで締約国会議に向けた何らかの勧告が行われることも予想される。特に日本との関係で言うならば、ニホンウナギがどの程度検討の対象とされ、あるいは何らかの措置が取られるかが注目されよう。
 もし次回の動物委員会、常設委員会、あるいは締約国会議でニホンウナギに関する議論が提起されるとすれば、果してこの種が付属書掲載基準を満たすか否かという議論も視野に入ってくることがあり得よう。決議9.24に定める付属書Ⅰ掲載基準では、①野生個体が少ない、②野生個体の分布域が狭い、③野生個体の数が著しく減少(decline)している、の3つのうちの少なくとも1つが該当すれば、付属書Ⅰ掲載の基準を満たすとされる。ここでの「減少」の判断基準としては、個体数の基準レベル(baseline)比で5~20%の減少(32)、あるいは過去10年間または3世代のいずれか長い方における50%以上の減少がその目安とされている。付属書Ⅱ掲載については、近い将来上記①~③の付属書Ⅰ掲載基準を満たすような事態を回避するためにはその種の取引の規制が必要であると考えられることが、条約第二条二項(a)に基づく掲載基準となる。基準レベルからの減少を援用する場合は、付属書Ⅰ掲載の場合と比べて5~10%高めに適用するのを目安としている。条約第二条二項(b)に依拠する付属書Ⅱ掲載の場合は、既に付属書Ⅱに掲載されている種の標本(個体の全体または一部もしくは個体の派生物)に類似しており、当該標本を見た執行官がそれらを区別することができないこと、等が基準とされる(33)。ニホンウナギについては、たとえばそれが付属書Ⅰ掲載基準の③を満たす、あるいは近い将来これを満たすと言えるか、あるいは既に掲載されているヨーロッパウナギと類似して見分けがつかないとの付属書Ⅱ掲載基準を満たすか否か、等が付属書掲載が検討された場合のポイントとなり得るだろう(34)。

1. 本稿の条約の説明の一部及びイワシクジラの「海からの持ち込み」に関する部分は、以下のニューズレターに掲載された拙稿に概ね即した。真田康弘「イワシクジラとワシントン条約(CITES):第69回CITES常設委員会報告」『IKANet News』第69号(2017年12月)、4~13頁。原稿の二次使用に関し承諾頂いた「イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク」に対し、ここで謝意を表したい。
2. ワシントン条約の「取引(trade)」とは、輸出、再輸出、輸入又は海からの持ち込みをいう(条約第一条(c))。
3. CITES, Conf. 14.6 (Rev. CoP16), “Introduction from the sea,” para. 1.
4. 国連海洋法条約では、「採捕に適した段階において海底若しくはその下で静止しており又は絶えず海底若しくはその下に接触していなければ動くことのできない生物」を「定着性種族(sedentary species)」と呼び、大陸棚を有する沿岸国が探査・開発に関して主権的権利を行使できる。国連海洋法条約第77条。
5. CITES, “The CITES species,” https://www.cites.org/eng/disc/species.php (accessed on January 1, 2018).
6. 経済産業省、「ワシントン条約について(条約全文、付属書、締約国など)」、http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_about.html(2017年12月26日アクセス)。
7. 留保数は以下による。CITES, “Reservations entered by Parties in effect from 5 July 2017,” https://www.cites.org/eng/app/reserve.php (accessed on January 1, 2018).
8. 条約第十条では「締約国は、この条約の締約国でない国との間で輸出、輸入又は再輸出を行う場合においては、当該この条約の締約国でない国の権限のある当局が発給する文書であって、その発給の要件がこの条約の許可書又は証明書の発給の要件と実質的に一致しているものを、この条約にいう許可書又は証明書に代わるものとして認容することができる」と規定している。
9. 水産庁、「サメ類の保護・管理のための日本の国内行動計画」、平成13年2月(平成21年3月・平成28年3月一部改正。http://www.jfa.maff.go.jp/j/koho/bunyabetsu/pdf/samerui_keikaku160315_a.pdf(2018年1月1日アクセス);金子与止男「ワシントン条約(CITES)とは」、中村秀樹・高橋紀夫編『魚たちとワシントン条約:マグロ・サメからナマコ・深海サンゴまで』文一総合出版、2016年、11頁。
10. Resolution Conf. 5.10 (Rev. CoP15)
11. Peter Sand, “Japan’s ‘Research Whaling’ in the Antarctic Southern Ocean and the North Pacific Ocean in the Face of the Endangered Species Convention (CITES),” Review of European, Comparative & International Environmental Law, Vol. 17, No. 1 (2008), pp. 56 – 71.
12. Sixty-ninth meeting of the Standing Committee, Geneva (Switzerland), 24 November - 1 December 2017, “Compliance Report,” SC69 Doc. 29.1 (Rev. 2), pp. 3 – 4.
13. Ibid., p. 4.
14. 本項での各国の発言は、筆者のボイスレコーダーによる録音記録に基づく。この他、会議での各国の発言を簡単に記録しているものとしては以下を参照。Earth Negotiations Bulletin (ENB), “Summary of the Sixty-Ninth Meeting of the CITES Standing Committee,” December 4, 2017, http://enb.iisd.org/vol21/enb2199e.html (accessed on December 26, 2017).
15. Animal Welfare Institute, Born Free Foundation, Born Free USA, The Center for Biological Diversity, Environmental Investigation Agency, Humane Society International, International Fund for Animal Welfare, JWCS, Natural Resources Defense Council, ProWildlife, SSN, Whale and Dolphin Conservation, Wildlife Impact, Wildlife Conservation Society and WWF.
16. 今回の常設委ではカナダ環境・気候変動省でワシントン条約・国際生物多様性担当マネジャーを務めるCarolina Caceresが議長を務めた。
17. CITES, SC69 Sum. 2 (Rev. 1) (27/11/17) – pp. 1 – 2.
18. Memorandum of Understanding between the Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) and the Secretariat of the Convention on International Trade in Endangered Species (CITES).
19. 条約第二十一条は1983年にボツワナのハボローネで開催された締約国会議で改正が採択され、2013年に効力が発生した。EUなど地域経済統合機関に関する二項から六項が新たに加わった内容となっている。
20. SC69 Sum. 7 (Rev. 1) (30/11/17), p. 3.
21. CITES Decision 17.186.
22. CITES Decision 17.189.
23. SC69 Sum. 8 (Rev. 1) (30/11/17), p. 3.
24. CITES Resolution Conf. 14.3, Annex, para. 29.
25. Ibid., Annex, para. 30. 条約第十四条では、各締約国は付属書掲載種をワシントン条約での規制よりも厳重に規制したり取引を停止したりすることができると規定しており、取引停止勧告はこれに基づいている。
26. 常設委員会は各地域代表、条約寄託国(スイス)、前回及び次回締約国会議ホスト国により構成される。地域代表は現在アフリカ5カ国、アジア3カ国、中南米カリブ諸国3カ国、欧州4カ国、北米1カ国、オセアニア1カ国の構成となっている。常設委員会で投票権を有するのは原則として地域代表のみであり、寄託国のスイスは可否同数の場合のみ投票権を有する。
27. Rules of Procedure of the Standing Committee, Rule 24 and Rule 25.
28. CITES, “Countries currently subject to a recommendation to suspend trade,” https://www.cites.org/eng/resources/ref/suspend.php (accessed on December 26, 2017).
29. 例えば、以下を参照。Rosalind Reeve, Policing International Trade in Endangered Species: The CITES Treaty and Compliance (London: Earthcan, 2002).
30. Peter H. Sand, “Enforcing CITES: The Rise and Fall of Trade Sanctions,” Review of European Community & International Environmental Law, Vol. 22, No. 3 (2013), pp. 255 – 256.
31. 韓国政府代表団関係者インタビュー。2017年7月、ジュネーブ。
32. 海産種では①生産性が高い種は基準レベル比で5~10%、②生産性が中程度の種は基準レベル比10~15%、③生産性が低い種は基準レベル比15~20%の減少を「減少」の目安としている。この基準レベルの推定に用いるデータは出来る限り過去に遡るべきであるとされている。FAO専門家パネルは当該種が基準レベルから20~30%減少していると判断され、ヨーロッパウナギは生産性が低いもしくは中程度と考えられ、付属書Ⅱ掲載の場合は上記基準より5~10%上方に幅を持たせて適用するのが適当なので、基準レベルから9~19%減少したと考えられる当該種は付属書Ⅱ掲載が妥当と判断している。なおFAO専門家パネルはシラスウナギ及全ての年齢のウナギの1950~1980年(全年齢のウナギについてはこれに加えて1970~80年)の加入量を基準レベルに設定し評価している。FAO, “Report of the Second FAO Ad Hoc Expert Advisory Panel for the Assessment of Proposals to Amend Appendices I and II of CITES Concerning Commercially-Exploited Aquatic Species,” 2007, pp. 81 – 83.
33. 付属書掲載基準の議論は以下を参考とした。金子与止男「ワシントン条約(CITES)とは」、中村秀樹・高橋紀夫編『魚たちとワシントン条約』、2016年、20頁;。中野秀樹「ワシントン条約とクロマグロ掲載問題」、前掲書所収、30頁。
34. 私見では、ニホンウナギは少なくとも付属書Ⅱの基準を満たしていると思料される。その理由等の詳細については以下拙ブログ記事参照。真田康弘、2018年1月、「ニホンウナギはワシントン条約の付属書掲載基準を満たすのか?」http://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-01-06


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