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IWC脱退による商業捕鯨再開は脆い前提に立っていないか? [クジラ]

 日本政府は2018年12月26日、国際捕鯨委員会(International Whaling Commission: IWC)への脱退通告を行いました。この通告は2019年6月30日に効力が発生し、これ以降日本はIWCの非加盟国となります。これにより、商業捕鯨を排他的経済水域内で再開するとしています。

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【国際捕鯨委員会第67回会合(2018年)の模様】

 しかしこれには国際法上の問題があります。日本も締約国となっている国連海洋法条約第五部「排他的経済水域」の第65条で「いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と規定されています。つまり、排他的経済水域であったとしても、「適当な国際機関を通じて活動する」法的義務が存在します。
 これに対して水産庁などは「IWC科学委員会や本委員会にオブザーバーとして出席する」ことにより「適当な国際機関を通じて活動する」の義務を満たすと判断しています。しかし通常この条項は「国連海洋法条約の締約国はクジラの管理について、適切な国際機関に参加して、あるいは適切な国際機関の定めたルールに則って活動しなければならない」と解すべきものだとの主張が当然なされ得るでしょうし、そのような解釈が自然のように思われます。従ってIWCに参加せず、またそのルールにも服せずに排他的経済水域内で商業捕鯨を実施することは国際法違反、すなわち脱法操業、IUU漁業であると批判されることになるでしょう。
 また、日本のこの政策の担当者は、IWCではオブザーバー参加があたかも未来永劫無条件であるように誤解されているようにも思われますが、そうだとしたら政策判断として大変危ういと言わざるを得ません。
 オブザーバー参加に関する規定はIWCの設立条約である国際捕鯨取締条約の本文にも、4分の3の多数で改正が可能な附表(Schedule)にもありません。この規定は議事手続規則に存在します。
 現行の議事手続規則C.1(a)項では「条約の締約国でないいかなる国及び国際機関も、委員会にオブザーバーとしてすることができる」とされており、したがって他のIWC加盟加国の意向にかかわらず、オブザーバー参加ができます。
 しかしながら、議事手続規則は改正を行うことができます。そして、議事手続規則の改正は単純過半数で足ります(議事手続規則E.3(a))。
 つまり、議事手続規則を変更し、例えば「条約の締約国ではないが、条約の下で定められた規則に従っている国に対しては協力的非加盟国としてオブザーバー参加を認める(注:つまり、それ以外はオブザーバー参加を認めない)。協力的非加盟国であるかどうかは、IWCで決定する」としてしまうと、オブザーバーからも排除されてしまうことになってしまいます。
 「たとえ非加盟国であったとしても、当該海産種を管理する国際機関のルールを守らなければならないし、そうでなければ漁獲は認められない」という一般的ルールは公海の漁業資源管理のための枠組み条約的な役割を果たしている「国連公海漁業協定」にも定められています。
 すなわち、同協定第8条4項では「小地域的若しくは地域的な漁業管理のための機関の加盟国若しくはそのような枠組みの参加国又は当該機関若しくは枠組みが定めた保存管理措置の適用に同意する国のみが、当該保存管理措置が適用される漁業資源を利用する機会を有する」と定められています。
 この条約は魚類、軟体動物、及び甲殻類が適用対象であり(条約第1条1項(c))、鯨類は適用の対象ではないため、上記条項の適用は受けませんが、「IWCでも国連公海漁業協定の趣旨を汲み、このため議事手続を改正するのだ」と改正を正当化することが可能ではないかと思われます。
 オブザーバー参加が認められず、かつIWCに代替するような「適当な国際機関」を北太平洋で設立し日本がその加盟国となっていなければ、排他的経済水域限定の商業捕鯨操業さえ、その道を断たれる可能性があります。議事手続規則を改正してオブザーバーから排除するというのは、ある意味で容易に考えつくことができる戦術をIWC加盟国が一つも思い至らないとは想像しがたいようにも思われます。したがって、「オブザーバー参加による国連海洋法条約第65条を満たす」作戦は極めて危うい前提に上に立っていると言わざるを得ないでしょう。
 

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日本のIWC脱退:外交的失敗の帰結だ【共同通信配信コラム記事】 [クジラ]

先日共同通信から配信され、地方紙各紙に掲載された日本の国際捕鯨委員会(IWC)脱退に関するコラムを転載しました。もしよろしければご参考までに。

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【2018年9月に開催された国際捕鯨委員会本会合の模様】

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視標「IWC脱退」
国際社会で信頼なくす 
 外交的失敗の帰結だ  早稲田大学客員准教授 真田康弘 

 日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を表明した。これ以上IWCに留まっても商業捕鯨再開の道筋が描けないので脱退で再開を図るという。しかし脱退は南極海の調査捕鯨からの撤退を意味し、南極海での商業捕鯨再開を長く求めてきた日本にとっては、IWCでの外交的失敗の帰結であるとも言える。
 そして日本周辺での商業捕鯨の実施も容易ではない。政府は排他的経済水域(EEZ)と領海内でのみ商業捕鯨を再開するとした。だが、日本も加盟する国連海洋法条約では、鯨類の保全管理は「適当な国際機関を通じて活動」しなければならないと規定している。従って日本のEEZや領海内でも商業捕鯨を再開する場合、IWCに代わる国際機関の設立するなどの対応が必要になる可能性が高い。
 カナダはIWC非加盟だが、先住民に年数頭のホッキョククジラ捕獲を許可しており、IWCに報告書等を提出。これにより「適当な国際機関を通じて活動」したこととしている。
 日本も再開後はIWCにオブザーバーとして参加し、報告書などを提出することで上記条項を満たすと主張すると思われるが、先住民の年数頭程度の捕獲と、100頭を超えるような商業的な捕獲とは規模や意味合いが異なり、EEZや領海内であっても国際社会からの批判は免れない。国際法的にも疑義が生じる。
 日本は「国際社会における法の支配」を外交の大原則としており、この意味からも脱退は、国際社会での日本の信頼性を低めこそすれ、高めることにはなり得ない。
 IWCの設立根拠である国際捕鯨取締条約第8条は、締約国政府が「科学的研究のため」であれば独自に捕獲許可を発給できると規定しており、日本はこれまでこの条項を援用し南極海での調査捕鯨を実施してきた。だが、脱退すると、これができなくなる。
 「南極海など公海での調査捕鯨を中止し、捕鯨はEEZ内に限定する」という案は約20年前に妥協案として当時のIWC議長から提起されたことがある。これが、IWCで成立し得る数少ない妥協案だと多くの識者が指摘していた。
 IWC内部にいても得られた可能性があることを、脱退で実現したというのは外交の失敗だと言える。南極海の捕鯨から撤退し、活動を大幅に縮小するという外交的敗北を「IWCからの堂々退場」というナショナリズム的レトリックで言い換え、糊塗(こと)することは正しい姿勢とはいえない。
 日本国内での捕鯨賛成論は純粋な「捕鯨支持」というより、ナショナリズム的感情に基づく「反・反捕鯨」と言うべき部分が少なくない。脱退はそうした心情を満たすものとはなるだろう。だが、その結果、得られるものは少なく、失うものは大きい。

【「静岡新聞」2018年12月28日付・「宮崎日日新聞」2018年12月27日付等掲載】
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イワシクジラワシントン条約:ワシントン条約第70回常設委員会報告 [クジラ]

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【ワシントン条約第70回常設委員会の模様】

 この2018年10月にソチで開催されたワシントン条約常設委員会には私もオブザーバーとして出席しましたが、この委員会では日本が調査捕鯨として公海で捕獲しているイワシクジラの国内水揚げが議題となり、ワシントン条約違反と認定されました。これにより翌2019年2月1日までに日本は是正措置を条約事務局に報告し、5月よりスリランカで開催されるワシントン条約締約国会議と併せて開催される次回常設委員会で日本の是正措置を審議する予定です。
 上記ソチ開催の常設委員会のイワシクジラ問題に関する審議の模様と結果についての小論をJWCS(野生生物保全論研究会)のニューズレターに寄稿し、このほどウェブにアップされました。以下からアクセスすることができます。ご参考までに。
 
https://www.jwcs.org/data/1812_sanada.pdf
【真田康弘「イワシクジラとワシントン条約:第70 回ワシントン条約常設委員会参加報告」『JWCS通信』第85号(2018年)、2~7頁】

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【赤の広場】




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国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案 [クジラ]

 9月10日(月)から14日(金)までブラジル・フロリアノポリスで開催されていた国際捕鯨委員会(International Whaling Commission: IWC)第67回総会が終了しました。

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【国際捕鯨委員会第67回総会の模様。提供:佐久間淳子氏】

 総会ではブラジルなどが20年にわたり採択を求めてきた南大西洋サンクチュアリ(鯨類保護区)提案は賛成39、反対25、棄権3と採択に必要な4分の3の多数を得られず否決された一方、同じくブラジルなどが提案した商業捕鯨モラトリアムの重要性を再確認し「致死的調査は不必要」とした「フロリアノポリス宣言」などが賛成40、反対27と採択に必要な過半数の多数を得て可決。また先住民生存捕鯨の捕獲枠の改訂がオーストラリアやニュージーランドといった原則として商業捕鯨を一切認めない立場の国も賛成する中賛成58、反対7、棄権5と採択に必要な4分の3の多数を得て可決されました。

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【フロリアノポリス宣言表決結果】

 ちなみにIWCでは法的拘束力のある付表の改正(サンクチュアリ提案や捕獲枠の改訂提案等)は採択に4分の3、IWCの組織内部的な事項以外については法的拘束力がない決議案は過半数の多数で可決されます。

 この会議で日本側は「The Way Forward」と題するパッケージ提案を上程しました。これは現在のIWCが商業捕鯨の再開を認めず機能不全に陥っているとの認識の下、「持続可能な捕鯨委員会」を総会の下部機関として設立、現在付表の修正は総会で4分の3の多数が必要なところ、これら下部機関でコンセンサスで合意された提案は総会で過半数の多数が得られれば可決されるよう条約を改正(このため条約改正のための全権会議を招集)、持続的な利用が可能と認められたクジラについては商業的な捕獲を可能にするよう付表を改正する、という内容でした。なお「持続可能な捕鯨委員会」設立及び条約改正全権会議を求めるものは過半数の多数で可決が可能な決議案です。

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【提案を説明する日本政府代表】
 
 内容が決議案から付表の修正、さらには条約改正までを含む極めて包括的なもので、日本側はこの提案のコンセンサスを目指すとの意向でした。今回のIWCは数十年ぶりに日本人が議長を務めることから、日本国内の一部には商業捕鯨の再開に期待感も広がっていたようで、鈴木俊一・自民党捕鯨議員連盟会長が「今回のIWCが商業捕鯨復活に向けて画期的な第一歩となるよう議連としても見守ってゆきたい」と代表団に発破をかけ(水産経済新聞2018年8月9日)議員を現地に派遣するなど、採択を目指し並々ならぬ意欲で日本側代表団は会議に臨んだようです。

 しかしこの提案を一見して、残念ながらなぜ採択の見込みが絶望的なものを出してくるのか、非常に不思議に思っていました。総会でオーストラリア代表が、「この提案は、これが失敗に帰すということはっきりわかっていて、失敗することを意図して考えられ提案されたものであるとの結論する他ない(It is hard to avoid the very difficult conclusion that the proposal was designed and brought forward with the intent of clear knowledge that it will be failed.)」と発言していましたが、日本提案の状況を的確に言い表していると考えられます。かつてIWC政府代表代理として捕鯨交渉のタフ・ネゴシエイターとして名を馳せた小松正之・東京財団研究所上席研究員も「率直に言って、非現実的」と批判されていました(みなと新聞2018年9月10日)。実際、コンセンサスどころか、日本提案は賛成27、反対41、棄権2と過半数を大きく割り込み否決されました。

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【日本提案に対し「わざと失敗することがわかっていて提案しているのでないか」と批判する豪州代表ニック・ゲールズ博士。代表の発言の後会場の一部から拍手が起こりました。】

 そもそもこの提案が正式に公表されたのは7月と総会の僅か3か月前。実際に総会でも「3か月前に突然出てきた」との発言が複数よりあったことから、実際に各国に提示されたのも時期的にあまり変わらなかったようです。ハードルが高い提案であればあるほど、十分事前に提示して各国に対して説明と根回しが必要なはずで、これでは外交手法として残念ながら稚拙と言わざるを得ません。

 たまたま提案が公表された7月にワシントン条約動物委員会に出席していたのですが、たまたま会議にIWCでは最も保護的なポジションを取るあるラテンアメリカ諸国のIWCにも来ているという代表に日本提案をどう思うかと聞いたところ、到底賛成できないとのことでした。オーストラリアはもとより会議に先立って「日本提案には絶対反対」の立場を明確にしていましたし、IWCに出席するNGOも強く反対の立場でした。ラテンアメリカ諸国やEU諸国はこうしたNGOの意見が強く反映されることから、もとより採択される見込みは全くなかったと言ってよいでしょう。

 日本側は、「この日本側の提案は一回限りのものであり、もし採択されなかった場合は次回の総会には出さない。もしこの提案が否決されたならば、IWC脱退も考えざるを得ない」と交渉を試みていたようにも側聞しました。しかし、この提案に合意が得られなかった場合脱退も選択肢かとの質問に対し、水産庁の担当者は「その議論は時期尚早」と業界紙のインタビューで答えていました(みなと新聞2018年7月31日)。もちろん一般の外国人は日本語はわからないでしょうが、東京に在外公館を有している国々は関係する報道はくまなく読んで適宜本国に伝達しているはずですので、これでは「脱退を検討する」とのポジションはブラフ(はったり)であるとあらかじめシグナルを送っているに等しいと言えます。残念ながらやはり交渉手法として稚拙と言わざるを得ないでしょう。

 日本案否決後、谷内正明農林水産副大臣は「あらゆる選択肢を精査せざるをえない」と発言し、「IWCからの脱退の可能性に言及」と報じられました。

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 問題となったところを、以下そのまま見てみましょう。

“We continuously believe the potential of IWC as a forum of global governance for the conservation and management of whale resources. And therefore, we wish to continue in cooperation with the IWC in various ways to achieve the objective of the Convention enshrined in the Convention. However, if scientific evidence and diversity are not respected, if commercial whaling based on science is completely denied, and if there is no possibility for the different positions and views to coexist with mutual understanding and respect, then Japan will be pressed to undertake fundamental reassessment of its position as a member of the IWC where every possible option will be scrutinized.”

「我々は鯨類資源の保全管理のフォーラムとしてのIWCの可能性を引き続き信じております。従いまして、この条約の目的を達成するため、様々なかたちでIWCとの協力を引き続き行っていきたく思っております。しかしながら、もし科学的証拠と多様性が完全に否定され、もし科学に基づく商業捕鯨が完全に否定され、そしてもし異なった立場や見解が相互の理解と尊重の下に共存する可能性がない場合、日本はIWCの加盟国として立場を抜本的に再検討せざるを得ないこととなり、全てのオプションを精査せざるを得なくなるでしょう」


 以上のステートメントでは、「鯨類資源の保全管理のフォーラムとしてのIWCの可能性を引き続き信じ」、「様々なかたちでIWCとの協力を引き続き行っていきたい」とされている一方、 「全てのオプションを精査せざるを得ない」とのくだりのまえにif(もしも)が3つもついており、しかも「脱退」の文言は入っていません。少なくとも現時点では脱退の可能性は大きな選択肢とは到底言えないと考えられます。

 ちなみに日本が「脱退の可能性」に初めて言及したのは今から約四半世紀前の1992年のことです。

 この年開催されたIWCでは、商業捕鯨再開にさらに条件を付す決議案が圧倒的多数で採択されました。この決定を受け、日本政府代表団の島一雄代表(水産庁次長)は「もし科学的証拠に基づく議論が尊重されないとすれば、IWCは本来の機能を停止したと言わざるを得ない」とした上で「(このままでは)IWCからの脱退を求める国内の圧力は強まるばかりだ」と指摘、国内政治・世論の動向次第では、脱退も検討せざるを得ない、との認識を明らかにしています(読売新聞1992年7月4日「日本がIWC脱退を示唆 不公平な運営非難 政府代表演説 総会が閉幕」)。

 この1992年の島代表のステートメントでは「脱退」の文言に言及されており、今年のIWCでの谷内副大臣の発言よりも意味的に強い内容を含んでいると言えます。もとより少なくともこのころから日本は「全てのオプション」を精査している筈であり、したがって四半世紀以上「全てのオプション」が検討され続けてきたとも言えるでしょう。
 国際捕鯨取締条約第8条で科学調査目的の捕獲については条約規制の適用除外とすると定められており、日本はこれを援用して南極海と北太平洋で調査捕鯨を実施しています。また、国連海洋法条約は第65条で「鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動しなければならない」と規定されています。このため、今回IWC議長を務めた森下丈二・IWC日本政府代表が指摘しているように「IWCを抜けた時点で、南極海での捕鯨が、事実上許されなくなる。南極海を捨てる覚悟がある時のみ、この(脱退という)選択肢を探れる」と言えます(みなと新聞2016年12月16日)。

 さて、余談なのですが、IWC総会は毎回のごとく時に討議がヒートアップし、熱い議論が行われることがあります。特に商業捕鯨の再開やサンクチュアリ提案などに関しては今回もそうでした。

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【日本提案に対してコメントするアルゼンチン代表】

 反捕鯨国はEU、ラテンアメリカ諸国、オーストラリア、ニュージーランド、そして常にどんな議題でも一家言有するモナコ、商業捕鯨再開支持側では日本、アイスランド、ノルウェー、アンティグア・バーブーダ、そして今回はセネガルが熱い論客でした。

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【熱弁するセネガル代表】

 数的に劣る日本側は勢力を増やすため新規加盟を促す作戦を取っており、この結果8月下旬に「日本から支援を受けた西アフリカのリベリアがIWCに加盟」しました(産経ニュース電子版。2018年9月5日)。ということで今回新規加盟のリベリアから2人代表が出席し日本支持側として発言してくれていたのですが、やはり正直クジラなどには関心がそれほど強くないからか、もう1人の自国代表が発言している時ですらスマートフォンに夢中。ある意味で現在のIWCのある側面を象徴するようにも思えました。

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【ブラジル提案に対して発言するリベリア代表】

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【発言終了後のリベリア代表。横のルクセンブルク代表もスマホに熱心です】

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ワシントン条約事務局、イワシクジラの水揚げが条約規定に反するとの報告書を発表 [クジラ]

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【イワシクジラ。出典:Wikipedia Commons

 2018年8月24日(金)、ワシントン条約事務局が日本のイワシクジラ調査捕鯨に伴う鯨肉の水揚げに関する報告書(SC70 Doc. 27.3.4)を発表しました。

 日本は現在北太平洋と南極海で調査捕鯨を実施しています。北太平洋で調査捕獲対象としているのはミンククジラとイワシクジラの2種類です。

 ワシントン条約では上記鯨種をともに附属書Ⅰに掲載されています。日本はこの掲載に関し、ミンククジラについては留保を付けて条約の適用を受けないことになっていますが、北太平洋のイワシクジラについては留保を付けておらず、条約の義務に服する必要があります。

 条約では附属書Ⅰに掲載された種については、「主として商業的目的」に利用される場合の輸出入並びに再輸出及び海からの持込みを行うことは認められていません(条約第3条)。ここでの「海からの持込み」とは、公海上での魚や海産種の漁獲・捕獲・採取などを指します。

 ここでの「主として商業的目的」の利用の解釈については、「非商業的側面が明らかに支配的である(clearly predominate)と言えない全ての利用は主として商業的性質を有すると見なされるべきで、付属書I掲載種の輸入は許可されるべきではなく、使用目的が明らかに非商業的であるとの挙証責任は輸入をする側が負う」との決議が日本も賛成する形で採択されています(Resolution Conf. 5.10 (Rev. CoP15))。

 昨2017年12月にジュネーブで開催されたワシントン条約常設委員会では、日本のイワシクジラ調査捕獲に伴う鯨肉の利用が、「主として商業目的」に該当しており、条約違反ではないかとの問題が審議されました。ここでは日本のイワシクジラ肉の持込みがワシントン条約上合法であるとの発言をした国は一か国もおらず、「条約違反だ」などとの厳しい声が相次ぎました。最終的に事務局が日本に調査団を派遣し、そこで得られた結果などをもとに報告書を作成し、その報告書を2018年10月に開催される次回の常設委員会で検討することになりました。

 今回発表されたのは、その報告書です。端的に言いますと、日本のイワシクジラ調査捕獲に伴うイワシクジラ肉の国内持込みはワシントン条約違反である旨を強く示唆する内容となりました。

 一応事務局の報告書では、①常設委員会が日本のイワシクジラの調査捕獲にともなう鯨肉持込みがワシントン条約違反であると判断する場合、②常設委員会が日本のイワシクジラの調査捕獲にともなう鯨肉持込みがワシントン条約違反ではないと判断する場合、の二通りの選択肢を用意して、常設委員会に下駄を預ける形式にはなっています。しかし、事務局は日本のイワシクジラ肉の日本への持込みは「主として商業的目的」に該当すると判断するとともに、もし常設委がワシントン条約違反ではないと判断する場合には、条約の諸規定やワシントン条約で採択された決議から逸脱することになる、と述べているため、事実上の一択になっています。

 日本の担当部局である水産庁は、「科学調査目的の捕獲は国際捕鯨取締条約で認められている。ゆえにこれはワシントン条約での「主として商業的目的」での利用に該当しない」と主張していました。

 しかしこれについて条約事務局は、「国際捕鯨取締条約の規定を遵守することは、ワシントン条約を遵守することとは別である。そもそも国際捕鯨委員会やその他のどの関係国際機関も、日本の調査捕鯨が国際捕鯨取締条約を遵守したものだと判断していないではないか」とばっさり事務局報告書10頁)。

 結論としては、日本の現在実施しているイワシクジラの「海からの持込み」の調査捕獲許可発給の形式等が適切でないので、これを是正するよう常設委に勧告するとともに、「常設委員会がどう判断するかによりけりだが」との条件を付けていますが、常設委が日本に対して「主として商業的目的」に該当するようなイワシクジラ肉の日本への持ち込みを停止するよう勧告することもあり得るだろう、また必要なら、日本に対してどのような是正措置を取ったかを来年2月までに報告するよう求める勧告することをあり得るだろう、との事務局案勧告を行っています(条約事務局報告書13頁)。

 10月にロシアのソチで開催される常設委員会は私もオブザーバーとして参加する予定ですので、この議論の行方をしっかりウォッチしてみようと思っています。

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国際司法裁判所(ICJ)捕鯨裁判・映像資料 [クジラ]

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【オランダ・ハーグの国際司法裁判所*】

 国際司法裁判所(International Court of Justice: ICJ)での調査捕鯨裁判の判決が下されてから早4年がたちました。

 国際司法裁判所というと、何か非常に遠いところにあって難解極まる法律議論を展開しているようにも思われますが、少なくとも調査捕鯨裁判についてはそういうわけではなく、「リーガルハイ」にも勝るとも劣らない、まさにドラマのような、いやドラマ以上にドラマチックな迫真の法廷劇が繰り広げられました。

 裁判の最大の見せ場となったのは、日本政府側の主張を弁護するために出廷したノルウェー人科学者のラース・ワロー博士に対するオーストラリア側からの反対尋問。ワロー博士の証言はこの裁判の帰趨を左右するものとなりました。

 国際法のエキスパートとして、その凄さを見せつけたのがオーストラリア側弁護人として訴訟に参加した豪州人のジェームズ・クロフォード教授(ケンブリッジ大学)。ユーモアを交えつつ相手側の主張を撃破し、演技力たっぷりな法廷での振る舞いは、まさに「クロフォード無双」とも言うべきものでした。彼はこの後国際司法裁判所の判事に就任しました。

 これに対して日本政府側が大枚はたいて雇った国際法の専門家は「私にも調査捕鯨の計算論拠がわからない」などまさにオウンゴール。

 国際司法裁判所の公用語が英仏語でオーストラリアの母語は当然英語であることから、日本側は法廷ではフランス語を主に用いるボンジュール作戦を展開したのですが、結果は判決の通り。うまくはいかなかったようです。

 この裁判は日本が当事国でありながら、ある意味で日本の不在が際立ちました。専門家として存分に調査捕鯨の科学的正当性を相手をやり込めるほどに主張すべき調査捕鯨をリードしていた日本人科学者の不在。そしてそれともかかわることですが、裁判における日本語の不在。国際司法裁判所規定第三十九条第三項では「裁判所は、いずれかの当事者の要請があったときは、この当事者がフランス語又は英語以外の言語を使用することを許可しなければならない」と定めているのですが。

 日本の捕鯨裁判の全面敗訴は作戦ミスにも依拠するところ、少なくないように考えられます。鶴岡公二・日本政府代理人が敗訴を受け安倍総理大臣に官邸に呼び出され、非常に強い叱責を受けたのはむべなるかなと言えるでしょう。

 ということで、以下捕鯨裁判のハイライトをまとめたビデオクリップ集(日英字幕付き)を以下からダウンロードできるようにしました。授業など教育用などにお役立てください。
 (注:英語版は650MB、日本語版も500MBと非常に重いため、ダウンロードに時間がかかります)

【ICJ捕鯨裁判ビデオクリップ集・英語字幕付き】

【ICJ捕鯨裁判ビデオクリップ集・日本語字幕付き】

 なお裁判の詳細については拙共著『クジラコンプレックス』に文書化しています。

【Amazon.co.jp「クジラコンプレックス」】


* Source: Wikipedia Commons, "Den Haag Peace Palace".



 
 
 
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イワシクジラ調査捕鯨が国際法(ワシントン条約)違反認定か?:第69回ワシントン条約常設委員会(2017.12)報告 [クジラ]

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【ワシントン条約第69回常設委員会(2017.12)が開催されたジュネーブ国際会議場すぐ近くにある国連欧州本部(パレ・デ・ナシオン)】

 2017年12月にジュネーブで開催されたワシントン条約(CITES)常設委員会にオブザーバー出席したのですが、この会議では日本のイワシクジラの北太平洋での調査捕獲がワシントン条約に該当するのではないかとしてほとんどの国がこれを問題視、日本政府側(担当は水産庁)は欧州はもとより中南米諸国やケニア、ニジェールといったアフリカ諸国からも非常に厳しい批判を浴びました。このままいくと、来年の常設委員会で日本はイワシクジラ調査捕獲に対して条約違反認定を受ける可能性が出てきました。先進国では前代未聞の事態です。
 条約違反認定された場合の最も厳しい措置はワシントン条約付属書に掲載された特定の種あるいは全ての種に対する取引停止勧告となります。全ての種の取引停止勧告を受けた場合、例えば付属書に掲載されている動物を動物園に外国から受け入れようとする場合、その外国からワシントン条約での取引停止勧告を理由として拒否されるということもあり得ることになります。
 なお、「商業捕鯨実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」では第三条で、調査捕鯨は「条約その他の国際約束及び確立された国際法規」に基づかなければならないと定めているため、イワシクジラがワシントン条約違反認定された場合、国内法にも抵触することになります。


 こうした経緯についてIKAN発行のニューズレター『IKANet News』第69号(4~14頁 )に小文を書きましたので、以下転載します。掲載された原文はPDFファイルでこの文章の一番最後のリンク先からダウンロードできます。

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マニラでクジラ肉に遭遇 [クジラ]

 12月3日(日)から開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)にオブザーバーとして出席するため、フィリピンのマニラに出張しました。

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【WCPFC本会議が開催された会議場の模様】

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「捕鯨と環境倫理」研究会発表資料 [クジラ]

本日(2017年11月19日)国立民族学博物館で開催された「捕鯨と環境倫理」研究会での私の発表分の報告資料をアップロードしました。以下のリンク先からダウンロードできます。

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日本の調査捕鯨は違法か [クジラ]

 今回は2015年12月に発行されたニューズレター『IKA Net News』第62号、5~12頁に寄稿した文章を掲載しました。脚注の引用のリンクが切れてているかもしれませんが、原文そのまま掲載します。
 なお、元の原稿についてはPDFファイルにしたものをこの文章の一番最後にあるリンク先からダウンロードすることができるようにしました。

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